結果発表を見に行った件
ウルルと話した夜から1週間が経過した。
ようやく今日が試験の結果発表になるため、
ユリウスはディヴァイス学園へと向かった。
(しっかし、受かってるかねぇ?
筆記は大丈夫だけど実技に関しては
唯一時間ギリギリだったから自信ないぞ...)
そう思いつつユリウスは学園内に
足を踏み入れると、構内はすでに受験者で
ごった返していた。
(おおぅ...人混みはそんなに好きじゃないんだが...。
さっさと確認して、受かってたら入学手続き
関係の資料貰って帰ろう)
結果発表の貼り出されている場所に行くと
さらに人口密度が高くなり、笑う声や泣く声も
聞こえてくる。
「さてと、俺の受験番号はあるかな...っと」
ユリウスが自分の番号に似たような受験番号が
並んでいるところを探し、その周辺の番号を
入念に見始めた。
「346...346...お、あった! よしっ!」
自分の番号を見つけたユリウスは早速資料を
貰いに行こうとすると、後ろから歓声が聞こえた。
「うぉぉぉ!! レミナ様が通るぞ!!」
「道開けろー! 道!」
「相変わらずお美しい!!」
(よし逃げようすぐ逃げようここで会ったら
目立って大変なことに...)
ユリウスは思い立ってすぐにその場を離れようと、
回れ右をして歩き始めたが、後ろから肩にポンと
手を置かれた。
ユリウスはゆっくりと後ろを振り向いた。
「逃がしませんよ?」
「ハハ、これはこれはレミナさん。
逃げるとかチョット何言ッテルカ
ワカラナイナー。 僕ガ逃ゲルワケナイ
ジャナイデスカー」
「いえ、確実に私の存在を感知してから
回れ右しましたよね?」
「レミナ殿、顔が笑っているのに
目が笑っていませんぞ」
「うふふ、それは大変なことですわね。
でもまずは私の質問に答えていただけると
嬉しいんですが?」
「いや、そのあまり目立ちたくなかったというか」
「目立つ?」
「ただでさえ平民と貴族が仲良く話すだけでも
ちょっと珍しいのに、さらに俺の顔は
普通なのにレミナさんは可愛いじゃないですか?
そりゃ目立ちますよ」
「...私を嫌いになったわけじゃないんですか?」
「嫌い? 何故?」
ユリウスがわからないといった表情でそう言うと、
レミナは胸に手を当て、安堵の息を吐いた。
「よかった...、ごめんなさい。 てっきり
避けられてしまったので嫌われてしまったのかと...。
強く当たってしまってすみません...」
レミナはしょんぼりとした様子でユリウスに
謝罪した。
「あ、いや、別に謝らなくても...。
それに俺も悪いですしお互い様ってやつですよ」
「それでもごめんなさい...。 その、私は
友人と呼べる者が少なかったので、貴方と
仲良くなれたのがとても嬉しかったんです。
だから...その...」
レミナは頬を少し赤く染め、両手の人指し指同士を
胸の前でチョンチョンとくっ付けたり離したり
しながら
「...貴方を手放したくなかったんです」
「え...あ...」
お互いに顔を赤く染め、かける言葉が見つからなく
なった瞬間、人波の中から誰かがレミナに向かって
走って近付き
「どーん! 僕も混ぜてー!」
レミナに後ろから抱きついた
「ちょ!? ユーリ!?」
そのユーリと呼ばれたボーイッシュな
少女は、水色の髪のショートカットであり、
口からは八重歯が覗いていた。
「えへへ~、騒ぎが起きてたから何かと
思ったらレミナと知らない男の人が二人で
顔を真っ赤にしてるんだもーん!
こんな面白そうな場面は僕としても見逃すわけに
いかないね!」
「だからってこんなところで抱きつくのは...!」
「ちぇ~、仕方ないなー」
ユーリはレミナから離れ、ユリウスの前に
立った。
「さて、初めましてだね。 僕の名前は
ユーリ・エリネス。 胸も平均より小さいし
髪も短めだけど、この制服を見ての通り、
これでも女の子だよ。
ユリウス君、君のことはレミナから聞いてるよ。
これから僕とも仲良くしてくれると嬉しいな。
よろしくね!」
ユーリはそう言って、笑みを浮かべながら
ユリウスに手を伸ばした。
「あ、ああ...こちらこそよろしく」
そう言ってユリウスがユーリの手を握ろうと
すると、手を握る前にユーリがユリウスの
手首を掴み、ぐいっとユリウスの耳元に顔を
近づけた。
そして、もう片方の手をユリウスの腰に
回し、耳元で話し始めた。
「レミナ、あんなに可愛いのにスキンシップ
激しいから...頑張って理性、保ってね?」
「っ! ...そのスキンシップがどうとかって、
今のユーリさんにも言えるんじゃ?」
「ふふっ...聞いてた通りだよ。 君、面白いね。
仲良くなれそうだよ。
こりゃレミナが気に入るわけだ」
そう言うとユーリは手首を掴んだ手を離し、
ユリウスの胸元にその手を置いた。
「ちょちょちょっと! ユーリ!?
何をして...!?」
「え? ああ、そっか。 人前だってこと
忘れてたよ...続きはまた今度ね?」
「続きなんていりません理性が飛びます
やめてくださいお願いします」
「ふふふっ! うんうん! 君だったら
大丈夫そうだね。レミナのことも含めて、
改めてこれからよろしく!」
信用するに値すると判断されたのか、
ユーリはユリウスから離れると、
嘘のない笑顔でそう言った。
「...さては試しましたね?」
「あ、わかっちゃった? いやー、でもレミナの
身が心配だったからねー、ごめんね?」
「はぁ...まあいいですけど」
そうやって二人で話していると、レミナが
ぶす~とした顔で二人を見ていた。
「ありゃ、嫉妬しちゃったかな?」
「っ! べっ! 別に嫉妬なんかじゃ...!!」
「はいはいとりあえずそろそろ行こうか。
このあと家の用事もあるんでしょ?」
「うぅ~、上手くはぐらかされた気が...。
あっ! ユリウス! それでは今度は入学式で!
...一応言っておきますが」
「わかってますよ、次は逃げませんよ」
「ふふっ、じゃあ、さようなら」
レミナはいつの間にか近くにいた従者から
資料を受取り、回れ右をして歩き始めた。
「ユリウス君! またねー!」
ユーリはユリウスを見てぶんぶんと手を振りながら
レミナを追いかけていった。
ユリウスは二人の別れの挨拶に少し手を
振ることで答えたが、頭の中ではこの後のことを
考えていた。
(さて...この状態をどうするか...)
ユリウスには好奇の視線がグサグサと
刺さっている。
どうやって資料を貰って何事もなく帰るか。
ユリウスはそれを考えて頭を抱えた。