模擬戦をやった件
呼ばれた5人全員が試合場に入った。
試合場といっても、ひとつの空間を
5つの試合場に区切っているので、
ユリウスは自分が戦っている最中に
周りの戦いを見ることが出来ることに
気がついた。
(これなら周りに合わせて戦えば大丈夫
そうだな。 一応模擬戦だから試験官が
手加減をするとはいえ負けるやつもいるはず。
もしも負けるやつが2人以上居たら俺も
頃合いを見てわざと負けるか...)
ユリウスが一人思考に耽っていると、相手をする
試験官が口を開いた。
「そろそろ模擬戦が始まる。 準備をしろ」
その言葉を聞き、ユリウスは剣を構えた。
「それではこれより第1模擬戦及び実力測定を
開始する!
はじめっ!!」
その言葉と同時にユリウス以外の全員が動いた。
(皆結構攻めるっぽいなぁ...じゃあ俺もいくか)
ユリウスは試験官に迫り、周りと同じような戦いを
するように心がけながら戦った。
(お、レミナさん結構強いんだなぁ、相手の
試験官さんが辛そうだ)
レミナは持ち前の剣技で試験官を翻弄し、
反撃の手を与えさせないようにしていた。
ユリウスが感心しながら他の3人を見てみると、
全員が中々の善戦をしていた。
(あれ!? ここの学校ってやっぱレベル高い!?
流石名門学校...俺もちょっとだけ強めにやっとくか)
急にユリウスの攻撃の手が厳しくなり、
試験官は内心驚きながらも冷静に対処し始めた。
(さて...もしかしてこのまま三分全員脱落無しかな?)
ユリウスがそう思っていると、レミナが
試験官の剣を弾き、試験官の手から剣が離れた。
「...参った。 流石はノーツ家の嬢さんだ」
(おお...やっぱレミナさんは家が有名なだけあって
鍛えられてるのか...)
そう思っている間に、周りで戦っていた試験者が、
次々と試験官を倒していた。
(あれ!? 皆勝っちゃうの!? じゃあ俺も
勝たないと...!)
「残り30秒!!」
時間を告げる試験官の声がかかり、その時点で
5人の中で勝負を続けているのはユリウスだけと
なっていた。
(このままじゃ俺だけ引き分けになる...。
平均以下ってのは避けたいとこだし、
すぐ勝負をつけるか)
そう思ったユリウスは試験官の攻撃を剣で
受け止めたときに、わざと力で押し負けたかのように
後ろにのけぞった。
それを好機と見た試験官は木刀による力の
こもった一撃を振り下ろしたが、ユリウスは
体勢を立て直すと、それをひょいと最低限の動作で
回避し、木刀を試験官の首に当たる寸前で止めた。
「...参った」
残り16秒で、ユリウスは試験官に勝利した。
「これより第2模擬戦のメンバーを指名する!
なお、先程模擬戦を終えた者はもう帰宅しても
構わない!
それでは指名をー」
(よし、じゃあ帰るか)
ユリウスは置いてある荷物を取りに待機室に
向かおうとしたが
「待ってください!」
レミナがユリウスの元へ駆けてきた。
「これから帰宅するのですよね? よければ一緒に
帰りませんか?」
「...え?」
その言葉を聞いた瞬間、嫉妬と敵意にまみれた
視線がユリウスにグサグサ刺さったのは
言うまでもなかった。