冒険者登録しようと思ったら出来なかった件
ユリウスはようやく冒険者ギルドの前に辿り着いた。
「寄り道しすぎたからなのか結構時間かかった
気がするな...とりあえず、俺の冒険者人生は
ここから始まるんだ。 気を引き締めていくか」
ユリウスはゴクリと唾を飲み込むと、ギルドの
扉を開いた。
当然、中に居たギルド員のうちの数名の視線を
視線を集めることになったがユリウスは
極力気にしないようにして受付に向かおうとしたの
だが、モヒカンで口に煙草のようなものをくわえた
男が近づいてきた。
「おい坊主、ここじゃ見ない顔だか、何しにきた?」
(うわー...あからさまに面倒臭そうな奴来たな...)
ユリウスは内心そう思いながらもそれを
表情に出さずに答えた。
「このギルドに登録したくて来ました」
ユリウスがそう言うと男はユリウスの肩に
手を置いた。
「そうか、このギルド、俺みたいに見た目が
怖い奴が多いから他のギルドより人数が少ないんだ、
ここを選んでくれてありがとな、一緒に頑張ろうぜ。
受付はこっちだ、案内してやる」
(めっちゃ良い人だった!! 面倒臭そうとか
思ってごめんなさい!!)
ユリウスは良心の呵責をしながらも
男の後ろをついていき、受付へと到着した。
「あら、ドンさん。 どうしたんですか?」
そう言ったのは受付に居た、おさげの女性だった。
「コイツがギルドに登録したいそうだ」
そう言いながらドンは後ろに居たユリウスを
親指で指した。
「なるほど、ドンさん。
案内ありがとうございます。」
「気にすんな、それよりも坊主。
早く登録しちまいな」
そう言ってドンはユリウスの背中を押した。
「じゃあ、登録お願いします」
「わかりました」
受付嬢はそう言うと、一枚の紙を取り出した。
「では、この用紙に必要事項を書いてほしいの
ですが、文字は書けますか?」
「はい、大丈夫です」
「わかりました。 では、わからないところは
無記入でいいのでよろしくお願いします」
ユリウスはリシェルに文字についても習っており、
文字を書くことが出来たので、用紙に必要事項を
書いていった。
「終わりました」
そう言ってユリウスは受付嬢に用紙を手渡した。
「ふむふむ...なるほど...大体の必要事項は
大丈夫......あら?」
「え? えっと...何か問題が?」
やはり治癒魔法の使い手なのが悪いのだろうかと
ユリウスは思っていたが
「学校名が記されていませんが...」
「えっ!? 学校名ですか?」
「はい...18歳以下の場合は学校に通っていないと
登録出来ないのですが...」
受付嬢は申し訳なさそうにユリウスに告げた。
「マジか...じゃあ通ってない俺はどうしたら...」
ユリウスが悩んでいると、受付嬢は笑みを浮かべた
「ご安心ください。 ひとつ方法があります」
「マジですか!?」
「はい、学校に入学すれば良いのです」
受付嬢は人指し指をピンと立てながら
フフンと得意気に言った。
「いや...俺、金ありませんよ?」
「そこもご安心を、ギルドの方で貸し出します」
「おお...!」
「実はこの決まりはここ2~3年の間に
決まったことでして、辺境の町村から知らずに
来る方も多いのです。 そのため、ギルドが
お金を貸し出すことで学校に行けるようにとの
決まりになりました」
「なるほど...でも、入学試験に受からなければ
冒険者ギルドには入れないことになるのでは?」
「その点についてもご安心を、その場合は
受けられる依頼や昇格できるランクの制限
がかかりますが仮登録という形ならギルドに
在籍できます。 それで、どうしますか?
入学試験の費用についてもこちらが貸し出します
ので、入学が無理だと思って最初から仮登録する方も
いらっしゃいますが」
「もちろん、入学試験を受ける方向でお願いします」
「ふふっ...貴方ならそう言うと思ってました。
それではー」
その後、ユリウスは入学したい学校の選択や
入学試験の日程の確認などをした。
全てが終わった後、ユリウスはドンに
礼を告げようと後ろを振り向いたが、すでに
そこにドンの姿は無く、ギルド内にも彼の姿は
無かった。
ユリウスが受付嬢に聞くと、受付嬢は
クスッと笑ったあとに言った。
「照れ屋なんですよ、ドンさんは」




