また懲りずにお助けした件
森を出て歩き続けて3時間が経った頃だろうか。
ようやくユリウスは王都メイギスに到着した。
「ふぅ...ようやく着いたな」
入国の際に身分を証明できるものがない場合は
通貨が必要だということを予めリシェルから
聞いていたユリウスは、旅の資金として
渡されたお金を取り出した。
「えっと...確か1000ウルルだっけ?」
ウルルというのは日本で言う『円』みたいな
もので、お金の単位らしい。
この世界の神様なだけあって名が知られている
らしい。
ユリウスはお金を片手に握りしめ、門番の元に
到着した。
「すまないがそこで止まってくれ。
何か身分を証明できるものを出してくれないか?」
「実は辺境の村から来たので身分を
証明できるものがないんです」
「そうか、なら1000ウルルを払ってもらうことに
なるが大丈夫か?」
「わかりました」
ユリウスは握りしめていた1000ウルルを
門番に渡した。
「よし、確かに受け取った。
ようこそ、王都メイギスへ」
そう言いながら門番は門を開き、ユリウスは
メイギスに足を踏み入れた。
目前には商店街が広がっており、たくさんの人で
賑わっていた。
人間の他にも獣人が居るのをユリウスは見て
(あぁ...やっぱりファンタジーだなぁ...)
ユリウスは感動しながらキョロキョロと店を
見ながらも冒険者ギルドへ向かった。
「思えばメイギスの地図持ってないのに
どうやって冒険者ギルド行こうとしたの?
バカなの俺?」
数十分歩いたユリウスは道に迷っていた。
「仕方ない...誰かに聞くか」
肩を落としながらユリウスはそう決意し、
丁度目の前を通りかかったピンクの髪の女性に
話しかけようとしたが、彼女が困っているように
見えたユリウスは
「突然すみません、何か困りごとでも?」
そうユリウスが問うと、いきなり話しかけられた
からなのか彼女は一瞬驚いたが、すぐに
平然とした表情に戻った。
「いえ、別になんでもありません。
私は大丈夫ですのでお気になさらず」
遠回しに拒絶されたことをユリウスは
理解したが、ユリウスは彼女が荷物を
何も持っていないことに気がついた。
(なるほど...さては荷物を落としたか盗られたか...。
何でここまで拒絶されるのかはわからないけど
ここはお節介を焼かせてもらうか)
周囲を注意深く見渡すと、100mほど前の方に
男が女性用のバックを持っているのを発見した。
その男は周りをキョロキョロと警戒しながら
進み、路地裏へと入っていった。
(あれか)
ユリウスはすぐさま男の方へと駆け出した。
「あ! ちょっとそこでしばらく待っててください!」
ユリウスは走りながらも彼女に聞こえるように
大声で声をかけ、男を追った。
男が曲がったと思われる路地裏に入り、
少し進むと、男はバックの中から取り出した
財布の中身を見てニヤニヤしていた。
「これで当分は生活出来るな...へへっ...。
今日の夜はちょっと贅沢するかぁ...」
グヘヘと気持ち悪い笑みを浮かべる男の様子に、
ユリウスは彼女のバックがこの男に盗られたの
だろうと確信した。
「さて、誰にもバレないうちにここを
離れテルブォっ!?」
最後まで言う前にユリウスは強烈な蹴りを
男に食らわせた。
男は蹴られた衝撃でゴロゴロと転がり気絶した。
ユリウスは男が気絶したのを確認すると、
財布とバックを奪い返して先程の彼女の元へと
急いだ。
路地裏を丁度出たところで彼女が待機していた。
「あれ? 何故ここに?」
「貴方がこちらの角を曲がるのが見えましたので... 」
「そうですか、丁度良かった。
はい、探してたのはこれですよね?」
ユリウスは先程奪い返したバックを彼女に
渡した。
「これです! ありがとう...ございます...」
歯切れの悪い彼女に疑問を抱きながらも
ユリウスは当初の目的を思い出した。
「その...お礼といってはなんですが
お願いがあるんですが...」
「...はい、どうぞ」
彼女は顔色を悪くして胸を両腕で押さえて
震えていた。
「冒険者ギルドへの道程を教えてもらえませんか?」
「え?」
さっきまでの顔色の悪さが嘘のように無くなり、
かわりに驚愕したような表情になった。
「それなら、あちらの角を左に曲がったあとに
二つ目の角を右に曲がって、あとは真っ直ぐ
進めばありますが」
「そうですか、わざわざありがとうございます」
お礼を言うと、ユリウスは教えてもらった方向へと
歩きだした。
「えっ!? ...それだけでいいのですか...?」
呆然とする彼女を後ろに、ユリウスは
冒険者ギルドへと向かった。