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浩と結婚できたら、私が浩の布団を毎日干したりするんだろうな。
正直両親が持って帰るお見合い相手の事を考えると気が重い。
浩には正直にその事を話すべきなのだろうか。でも、そんな事を言ってしまったら、浩を傷つけてしまう事になりかねない。
浩は、自分がよそ者だとか言われていることを知っているのか知らないのか、知っていても気にならないだけのか。
自分の両親が浩の事を認めてくれないだろうからお見合いを断れなかったなんて事は言えない。
浩は本当の所、私の事をどう思っているのだろうか?
都合のいい女……なのだろうか?
だけど、浩には私以外の女の気配はしない。もしかしたらいずれは結婚したいと思っていてくれたりするのだろうか?
私は浩となら、子供を産んで早く家庭に収まりたいと思う。この島を早い所出て、どこかで自由な暮らしをしたい。
だけど、そんな事雲の上の出来事に過ぎない。島でずっと育ってきた私が、両親の元を離れて暮らすどころか、見知らぬ土地で両親の助けも借りず子育てをするほどの自信は全くと言っていい程ない。
自分の世話すら、ろくに出来ていないというのに、手がかかる子供の世話なんて見れるわけがない。
「それは本当か?……」
外から、浩が誰かと話している声が聞こえてくる。一体誰と話しているのだろうか?窓の鍵を開けて外を覗いてみるが、浩の姿はここから見えない。
「俺は後で……先に……行って……」
そう聞こえて数秒後、銃声音が鳴り響いた。
今の音はなに?運動会のリレーの時に鳴らすピストルの様な音。何かの合図だろうか?それにしても浩は一体いつまで猫に餌をあげているのだろうか。
狭い台所の流し近くに猫の缶詰が無造作に置かれている。猫の腹の心配よりも自分の腹を満たす心配でもすればいいのにと、ほぼ空っぽの冷蔵庫を見ながら思う。
冷蔵庫の電源は停電の為、言えているが、ガスコンロをひねったら、しっかりと火が点いたので、鍋を取り出し水を沸かし始める。
ぶくぶくと小さな泡が上に上がってき始めたので、ラーメン皿を用意する。しかし、浩はなかなか戻っては来ない。
遅い、遅すぎる。




