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第四章 遠い記憶2 1
―――生まれたままの聖なる姿で、田や畑を耕し、大地に聖なる水を降らせる
一度薄汚れてしまった身体と心は、聖なる海水に浸かり水と心を清めそして神に祈りを捧げる。
ゼロから始める居心地良さ、快感、欲求、期待、希望、胸の高鳴り、幸福感など、全てが山の様にして満たされ始める―――
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日頃の本を読むと言う習慣からか、特に勉強せずとも成績はかなり上位の方で、大学に進学する際にも難なく合格する事が出来た。
成績ばかりでなく先生や周囲からの評判は決して悪い方ではなかった。闇の中に住む心を持つこんな自分を慕ってくる者までいた。
しかし、そんな自分の本性を見抜いた奴がいて、そいつは嫌がらせを始めた。
そいつは他人のカバンの中から勝手に聖書である農活を盗み取り、そしてボロボロに裂きちぎりゴミ箱の中に捨てた。
それを発見してしまった時の衝動は今でも心の中ではっきりと思い出すことが出来る。
命の次に大切な物をそんな風にして……。
自分が農活を大切にしていることを知っているのはただ一人、ななめ後ろの席の人だった。そいつはテストが終わる度に自分の席までわざわざやってきて、出来たかどうか必ず確認しにくるようなやつだった。
ゴミ箱に散らばる農活をみて、そいつの顔が頭に浮かんだ瞬間にすぐに見つけに行った。そいつは悪びれた態度一つせず、ヘラヘラ笑いながら、「どうした?」と言った。
カッと頭に血が上り、怒りは全身に毒となりながら駆け巡り、気がついたときには、そいつを階段から突き落としていた。
翌朝、普段通りに学校に行くと、担任からすぐに呼び出しを受けた。
調度、昨夜セロハンテープでバラバラになった農活をパズルの様にして元通りになおしていた本を持っていたので、カバンの中からすぐにそれを取り出し、こういうことをされたと伝えると、担任はひどく納得したような様子で、自分はもう戻っていいと言われた。
後から知ったことではあるが、そいつは自分だけではなく他のやつにも同様の嫌がらせをしていたらしく、結局退学になった。
階段から自分が突き落とした事については、「階段前で口論になって、そのまま足をつまづかせたようです」と言ったら担任は、自分の事を一言だって責めたりはしなかった。
担任にとって、成績優秀であるこの自分の言葉以上の真実はないも同じ。成績優秀で、自分が偏差値がいい大学にでさえすれば、担任は校長先生からのお礼が頂ける。
それが故に自分は、担任からお気に入りだったし、自分もその事を良く知っていた。




