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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第三章窮追
33/107

6

 軽トラックを公民館の前に停めて、中へと入っていく。

 ロビーには誰もいない。


 和室を覗くが、死体が転がっているばかりで生きた人間の姿はない。

 調理室へと向かう。

 その時、バンガタンと洗剤のようなものが流し台に落ちたような音がした。音のする方を見る。

 何かが動く姿を見逃すような事はしなかった。


「すみません誰かいますか?助けてください」わざと不安そうな声で叫んだ。

 すると、先ほど動いた何者かが立ち上がり、その正体を見せた。

石赤勇だった。


「なんだよ。佳代子ちゃんかと思って心臓がどうにかなるかと思った」

「……こんな所で何してるんです?」

「何って?殺人鬼を捕まえるためさ、殺人鬼が佳代子ちゃんって知ってる?」

「はい、自分も公民館にいましたから」


「そうか俺はみんなから聞いて知ったんだが、佳世子ちゃんをきちんと捕まえたのかって聞いてもそのまま逃げただけと情けない事を言いやがる」

「自分は不安で誰かを捜していたらここに入る三人が見えたんです」

「シッ。声がちいとデカイ」

「すみません」申し訳なさそうにしながら少し頭を下げた。


「殺人鬼の居場所が分からないからな」

「それであと二人はどこに行ったんです?」

「放送室とホールと調理室に向かった」

「で、殺人鬼は見つかりましたか?」真顔で聞く。


「いや、調理室には居ないし、来ていない」

「そうですか、この公民館の中にいるんでしょうかね?」


「いや、だからそれが分からねえからここまで来たんだ。どこに潜んでいるかわからねえ。だけど相手は女一人だ。どこまでも逃げきれるようなもんじゃない」


「まあ、それより他の皆さんはここに戻ってくるんですか?」


「いや、15分後にロビーに集まる事になっているが、その時間になってもここへ来なかった時には捜してくれと言ってある」


「そうなんですか。ところで佳代子さんは本当にここにいるんでしょうか?というのも実はここに軽トラックに乗って来たんですけど、ヨネコさんの家に佳代子さんそっくりな人を見かけたんです」


「なに?何故それを早く言わない」そう言って濃くてキリリとした眉毛をピクピクとさせてみせた。


「見間違いだったら困るし、石赤さんの話を聞いてからと思ったからです」

「確かなのか?」


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