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一度、軽トラックに入り、そして銃弾を補充し、次の家へと向かった。
一体皆どこに隠れこんでいるのだろうか。
軽トラさえも吹き飛ばされそうな程の強い風が吹く。落下物に気をつけながら運転していく。
煙草の自販機が近くにある場所で、誰かがこちらに手を振っているように見える。目を細めながら近づいて行く。
頭に工場用のヘルメットをかぶっている早山千代だった。
すぐ傍まで車を寄せ、そして目の前につくと窓を少し開けた。
「良かった助けてくれ」
早山千代を助手席に乗せ窓をしっかりと締めて再び車を走らせる。
「どうしたんです?外まで出て危ないですよ」と言った。
「ミツコさんの家に行ったら、スエさんもイネさんもみんなして死んでいたんだ。佳代子が殺したんだ。わしは恐ろしくなってな、一人でいるのが怖くてな誰かと一緒におることに決めた時に軽トラが見えてな」
「そうですか。良かったです。佳代子だったら危なかったですね」自宅へと車を走らせた。
「これで安心した」そう言って何度も何度もお礼を言って来る。
自宅につくと二人で家の中へと入っていく。
「どうぞ先に入ってください、一階は散らかってるから二階へ上がって」丁寧に中へと招待する。
「ありがとう、すまないねえ」
「階段には気をつけて」今ここで転げて一階で死んだりしてもらっては困る。
そして二階の鍵のついた部屋の中に招き入れ、そして「どういたしまして。それからお礼です」そう言って、上着を開き銃の差し金を引き次の瞬間に思いっきり頭を撃ち抜いた。
早山千代の顔からは血が吹き出してそのまま後ろに倒れ込んだ。開いたままの瞳、自分が何故こんなことになっているのだろうかと分からぬままに死んで行くような瞳。
額からはダラダラと流れるようにして出てくる鮮血な血液。
床に飛散した血の模様はまるで芸術作品を見ているかのようだった。
自分から鬼の住処へとノコノコやってくる哀れな人。捜す手間が省けたのだが。
銃を上着に入れ右手をグーパーグーパーと広げてから、その部屋の鍵を締めて階段を駆け下りる。
名簿を開き早山千代の名前を消す。
そして、次の獲物を捜しに向かう。<残人口54名>
トラックに乗り込み名簿を開き、藤石隆の家へと向かう事に決めた。
藤石隆の家の前に着くと、ドアをドンドンと回した。
この家のインターホンは随分と前からインターホンとしての機能を有しておらず、ただの飾りとなっている。
「なんだお前かよ。のぞき穴から見て殺人鬼だったらどうしようかと一瞬焦ったよ」
藤石隆の家に入り、「誰か来た?」と尋ねる。
「いや、来てない。だけど電気もつかないし、一人じゃちょっと気味が悪いし悩んでいたが」
「ふうん。分かるよ、その気持ち。今にこの人生が消えてなくなるかもしれないんだから」
「殺される前に殺人鬼を殺さないと。それまで俺のこの不安は消えないから」
「それなら楽しい話でもする?」そう提案をした。
「いや、こういう時こそ怖い話なんかして余計怯えるんだろう?」
「怖い話?」




