表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第三章窮追
30/107

3


一度、軽トラックに入り、そして銃弾を補充し、次の家へと向かった。


 一体皆どこに隠れこんでいるのだろうか。

 軽トラさえも吹き飛ばされそうな程の強い風が吹く。落下物に気をつけながら運転していく。


 煙草の自販機が近くにある場所で、誰かがこちらに手を振っているように見える。目を細めながら近づいて行く。

 頭に工場用のヘルメットをかぶっている早山千代だった。


 すぐ傍まで車を寄せ、そして目の前につくと窓を少し開けた。


「良かった助けてくれ」


 早山千代を助手席に乗せ窓をしっかりと締めて再び車を走らせる。


「どうしたんです?外まで出て危ないですよ」と言った。


「ミツコさんの家に行ったら、スエさんもイネさんもみんなして死んでいたんだ。佳代子が殺したんだ。わしは恐ろしくなってな、一人でいるのが怖くてな誰かと一緒におることに決めた時に軽トラが見えてな」


「そうですか。良かったです。佳代子だったら危なかったですね」自宅へと車を走らせた。


「これで安心した」そう言って何度も何度もお礼を言って来る。

 自宅につくと二人で家の中へと入っていく。


「どうぞ先に入ってください、一階は散らかってるから二階へ上がって」丁寧に中へと招待する。

「ありがとう、すまないねえ」


「階段には気をつけて」今ここで転げて一階で死んだりしてもらっては困る。


 そして二階の鍵のついた部屋の中に招き入れ、そして「どういたしまして。それからお礼です」そう言って、上着を開き銃の差し金を引き次の瞬間に思いっきり頭を撃ち抜いた。


 早山千代の顔からは血が吹き出してそのまま後ろに倒れ込んだ。開いたままの瞳、自分が何故こんなことになっているのだろうかと分からぬままに死んで行くような瞳。

 額からはダラダラと流れるようにして出てくる鮮血な血液。

 床に飛散した血の模様はまるで芸術作品を見ているかのようだった。


 自分から鬼の住処へとノコノコやってくる哀れな人。捜す手間が省けたのだが。


 銃を上着に入れ右手をグーパーグーパーと広げてから、その部屋の鍵を締めて階段を駆け下りる。


 名簿を開き早山千代の名前を消す。


 そして、次の獲物を捜しに向かう。<残人口54名>


 


 トラックに乗り込み名簿を開き、藤石隆の家へと向かう事に決めた。


 藤石隆の家の前に着くと、ドアをドンドンと回した。


 この家のインターホンは随分と前からインターホンとしての機能を有しておらず、ただの飾りとなっている。


「なんだお前かよ。のぞき穴から見て殺人鬼だったらどうしようかと一瞬焦ったよ」

 藤石隆の家に入り、「誰か来た?」と尋ねる。


「いや、来てない。だけど電気もつかないし、一人じゃちょっと気味が悪いし悩んでいたが」


「ふうん。分かるよ、その気持ち。今にこの人生が消えてなくなるかもしれないんだから」


「殺される前に殺人鬼を殺さないと。それまで俺のこの不安は消えないから」


「それなら楽しい話でもする?」そう提案をした。


「いや、こういう時こそ怖い話なんかして余計怯えるんだろう?」


「怖い話?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ