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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第一章 はじまり
3/107

3

ちょうど天気予報をやっていて、大雨が続いたあとに台風が近づいて来ているらしい。

 外に鉢植えとか、台風で飛ぶようなものは置いていなかったか、ざっと確認して回る。

 傘立てを家の中に入れただけで、あとは飛びそうなものは置いていなかった。

 

 翌日、怒り狂う様に荒れた天気で昨日よりも雨量が多く、その分家の中はどんよりとジメジメしている。

 そんな時に、隣のおばさんから「蘭子ちゃん、静雄おじさんが亡くなったらしいわよ」と聞かされた。


 静雄おじさんと言えば、この島の町内会長さんをやっている人で、70代位のおじさんだ。いや、おじいさんだ。


「まさか!なんでおばちゃんそんなん分かったん?」

「電話が入って来たんよ」


「病気とかで亡くなったん?じゃないよね?この前見た時には物凄くお元気そうにみえたし。なんで?ほんまに亡くなったん?海で亡くなったん?」

この島はお年寄りも多い分、亡くなる人の数も多い。

海に出たまま還らぬ人となる事も少なくはない。

「それが畑見に行くって行ったきり帰ってこんからおかしいと思って探しにいったら川に流されて溺れてるの見つけたんだって」

「静雄おじさんこの大雨で心配になって見に行ったんかね?それにしたって」


「責任感の強い人だったからねえ。それで明日18時からお通夜だって、静雄おじさんの家じゃなくて集会所でやるらしいけど明後日のお清め祭がどうなる事かみんな心配しよったよ」

「おじさん毎回市民代表として言葉言うもんね、まだまだ信じられんけど、わざわざごめんねありがとう、雨の中に」


翌日、仕事を16時で上がらせてもらい家へと急いだ。

 

 土砂降りの雨が靴の中まで容赦なく入り込んでいて靴下は、ぐちょぐちょになっている。

 玄関に入り靴下を脱いでそのまま風呂場へと向かった。


 そしてシャワーを浴びて濡れた髪をドライヤーで乾かす。


 そして喪服に着替え、数珠など持っていくものを用意し、集会所へと向かった。

 天気の悪い中、かなりの多くの人が参列している。


 静雄さんの奥さんが声を張り上げて泣き叫んでいる。長い事連れ添ったご主人をこんな形で亡くす辛さを想像しただけでも辛い物がある。

 そして翌日には葬儀も終え、静雄さんは全員に惜しまれつつ見送られた。


 数日後、10時から始まる閻魔さまのお清め祭の為に、島のみんなが無料で乗れるフェリーに乗り込み、この島から少し離れたとこに位置する離島にある祠に向かった。


 海を渡り泳いでいけなくもないが、雨の中そんな無謀な事をする人なんていないし、無料なのを目の前にして、フェリーより水泳を選ぶような人はこの島の住民にはいない。若い者が少ないのも大きな理由の一つなのかもしれないが。

 

閻魔さまのお清め祭にはもう何十回と赤ちゃんの頃から行っているが、特別な感じがしてどことなく神秘的で結構楽しみしている島の人も多いが、この祭りに参加しないというのは排他的なこの島では孤立を意味していた。


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