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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第二章 遠い記憶1
24/107

7

 厄介な事にその毒というのは、少量だけじゃそれが毒であるとは気が付くことができないのだ。

 それが毒であるという事に気が付いた時には、自分の身体は既に毒に侵されており、抜け出すことは出来ない。


 母からもらう毒と言う物は異常なまでに毒性が強く、劇薬だと言ってもいいのかもしれない。その毒を間違った飲み方をすれば死んでしまう可能性だってある。


 思い出せるだけでのその毒を例に挙げればキリがないが、「あんたはどうせ足が遅いんでしょう」などという言葉や「あんたにはできっこない。どうせ失敗するに決まってる」


「性格が悪い」「両親とも美形な顔立ちなのにあんたは面白い顔でかわいそう。タコみたい真っ赤な顔して面白いわね」母はそんな言葉を笑いながらそして、からかうようにして言って聞かせて、初めは「タコ~?」と一緒になって笑っていたのだが、次第にそれが、心の中で影を落とすようになっていった。


自分はタコに似ているのだとそう自信がなくなっていってしまった。


 赤の他人から言われた一言を異常なまでに気にし、そして、自分はタコだからと自分の評価を低い所でしか見積もれない。

 いつでも自信を持っているような人が非常に羨ましく、そういう表情や態度を見るたびに大切にされて育ったのだろう、等と考えてしまう。


 自分は親には何も相談することが出来なかった。


 叩かれて育ったせい、そうやっていうのは間違っていると小さいなりに頑張って口にしてみるも、全てはこちらの「性格の悪い」事が原因だと、それだけで片付けられてしまい、そのうちに何も話したくなくなってしまった。今こうして思い返してみてもメラメラと腹の中から怒りが沸いてきてしまう。


自分の怒りの感情に支配され我が子のいう事は、「性格が悪いあんたのせいだ」と言われればそれ以上に何も言えないし、ただ黙って自分が我慢していくしかないのだ。

 しかし、母は自分がなぜ拒まれているのか分かっていなかったようだった。


 「小さい頃にはあんなに可愛かったのに、性格が悪くなっていくばっかりなんだから」そうやって言ったのだ。

 それでも、やはりすり寄っていけなかった自分が悪かったのだろうか。

 時々思い出しては、暗闇に放り込まれる様な気持ちになってしまう。

 

 けなされることなく、そして自分の考え方さえ認めてもらっていさえすれば、今頃もっと楽しくて明るい未来が自分を待ち受けていたのだろうか?


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