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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第二章 遠い記憶1
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4

自分は可哀想な子として扱われたが、、母の妹が自分を引き取りそして自分が19歳の時に叔母は病気でこの世を去ってしまった。


 そんな自分に対して近所の人は哀れ悲しんでいるフリをして、そして嘘めいた励ましを残しながら、そしてあれだけ同情していたのに数週間もしないうちにそんな事は忘れられ、次の人物へと話題は移り変わっていった。


 忘れ去られる前には沢山の差し入れがあったが、次第にその話題が消え行くとともに

噂のターゲットは他の人へと移り変わっていった。

 憐みの話題と言うのは生命力が弱い。


  一人きりの生活が始まったわけだが、思っていたほど寂しいという事はなかった。自分のペースで生活すればいいし、結構快適だった。

 暇を持て余した時には本を読み漁っていたが、人生を大きく変える一冊の漫画に出会ってしまったのだ。


 その漫画は「農活!」という本で、田舎で農作業を楽しくやる若者が主人公で、最初から農業をしようとは思ってはいなかったが、青ネギや青紫蘇を自家製栽培していくうちに、野菜を育てる楽しさに目覚めてそして自分の畑を持つのが夢になり、そして会社を辞めて田舎に住み写り、近所の人に教わりながらサツマイモや白菜、大根を植えてそして、毎日土をいじる事でますます幸せな気分になり次第に、その若者は会社を興し、同じ年代の仲間が少しずつ増え大成功を収めるという話で自分はその本に完全に感化されてしまった。漫画は別にそれ程読む機会がなかったが。


 そして自分もプランターで青ネギを植えることから始めた。青ネギは少しずつ伸びてきたけれど種を沢山植え過ぎた上に全く間引くことをしなかった為に出来上がった青ネギはひょろひょろと細いばかりの青ネギだった。


 しかし、その後に植えた青紫蘇はかなり調子よく育ちそして、何百と言う青紫蘇が出来上がった。

 やはり嬉しかったし、なによりも自分の自信になった。


 自分が農活!の主人公に段々と近づいているような気がして、興奮したりもした。

 大きく育った青紫蘇は、色々調べて色々な料理に活用した。


 まずは冷奴に乗せ、そして醤油の中にニンニクと一緒にいれたり、ポン酢の中にトマトと一緒に刻んで漬けたり、それだけでは消費できないので天麩羅を作ってみたり。


 苦手だった料理が段々と好きになり、そのうち色々な野菜を作っていく事に比例するように料理の腕前はグンと上がった。

 そしていつしか自分も畑で野菜を作りそれを商売にまでできるようになった。


 スーパーの新鮮野菜コーナー専用の場所には写真付きで生産者の紹介がされてあり、初めてそこに自分の写真が載った時には、夢を見ているような気分になってしまった。


 そのコーナーに立ち寄った時には、野菜の売れ行きを確認し、自ら愛する野菜たちを購入したりもした。

 色々な料理を挑戦していくうちに、一人分の量が分からないというか、どうしても多めに作りすぎて近所にお裾分けしに行くと、美味しいとそのうち評判になったりもした。


 野菜作りをするという事は生きがいであり、自分が作った野菜たちの美味しいことといったら他の何物にも変えられない幸せがそこにはあった。




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