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理想の島/運命の赤い糸  作者: 大和香織子
第二章 遠い記憶1
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2

 それを裏付けるかのようにして、父は他の人の前では絶対に母に対して暴力を振るわないでいたし、母は母でまるで何事も無かったかのようにして、そんな父を恋い焦がれるような眼差しで見ていた。


 子供心に、なんでそんな表情を表に出すことが出来るのか至極不思議でたまらなかった。

 毎晩のように繰り広げられる父の悪態を目にし、大人というものは、演技が得意で臨めば誰だって俳優になれるのではないかと錯覚してしまう程だった。


 演技の上手い大人たち、それは何も両親だけでは無かった。


 周囲にいる大人たちは、ある人の悪口を言ってそして楽しそうに会話を弾ませた。


 しかし、今まで散々と悪口を言ってきた人が、ひとたび目の前に現れると、これまでの話は何だったのかと思ってしまう程に、その人を褒め称えた。


 そんな場面をいくつも目にした。


 そして、そのうち大人と言うものは、真実よりも薄汚れた世界を好むのだという結論に達した。


 自分もいつかは薄汚れた世界を好むようになるのかもしれないと思うと、大人になる希望が……その嘘めいた出来事を目の当たりにする度に一つまた一つと消えて行った。


 そしていつしか大人になる事を拒んだ。


 しかし、時と共に成長した自分はそのうちに人を好きになるという感情を知ってしまった。


 その人の事をいつまでも目で追いかけ、そしてその人と会話が出来ることを幸せだと感じた。


 母がいくら殴られたりしても、恋い焦がれた目で父を見る理由がいささかわかった気がした。


 告白をする事なんて、考えもしなかったし、その人とどうにかなりたい気持ちはまるで無かったそれは、その人を見て一喜一憂出来ればそれで充分すぎる程の満足感があり、もしそれ以上に進んだ関係になってしまったりしたらきっとほんの世界から目覚めてしまうのではないだろうかと、そう危惧した。


 実際、自分はその人が元気でいるところを見るだけで夢の中にいるような心地良い気分になれた。


 わざわざ、関係を深めて関係を複雑にする必要があるのだろうかと、周りで付き合っているカップルを見て首を傾げた。


 仲良さそうに見える間柄でも裏では皿が何十枚と割れて皿としての機能を失ってしまっているのかもしれないのだから。


 それは、テレビ画面に頻繁に露出するオシドリ夫婦と呼ばれる人たちにも当てはまった。


 オシドリ夫婦と言えば聞こえはいいが、そんなオシドリ夫婦も餌を求めて、外では仮面を被っているのかも知れない。




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