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そして私は、血だらけになった手を洗いに行き、そして濡れたタオルで全身を拭き、水で髪の毛を荒い長し、そしてミツコの家の箪笥を勝手に開け娘の真奈美のものだと思われる洋服を身に纏いそして何もなかったようにしてミツコの家を後にした。
銀さんの車に乗り込み家に帰った。車を駐車場に止めて家の中に入ろうとすると、隣の家の早紀江さんが「佳代子ちゃん、うち停電になったみてえなんだが佳代子ちゃんちはどげんな?」と聞いてきた。
「島全体が停電になったみたいで……。今は危ないので出ない方がいいです」
「そうか。この台風じゃ停電になるよな。あ、佳代子ちゃんちょっと待っててくれ」そう言って早紀江さんは勝手口から部屋に入るなり、タッパーを手に持って「これな、煮しめを沢山炊いたから持って帰って食べてくれ」そう言って手渡してくれた。
そして早紀江さんは家の中へと入って行った。
私の目からは自然と涙が零れ落ちる。
何ていう事をしてしまったんだろうか。
一時の感情に支配されてしまい取り返しのつかない事をしでかしてしまった。
初めて我に返った私は己のうちにある悪魔の存在を初めて知り、してもしても消えることの無い後悔で自分が崩れてしまいそうになる。
怒りには怒りでしかなく、怒りに向かって優しさで返されたら、自分の愚かさに気づかされる。
早紀江さんは足が悪い為に閻魔祭であった出来事も公民館での出来事も知らないのだ。
だからあんなに笑顔で殺人鬼の私なんかに近づいてきてくれたのだろう。
もしも、早紀江さんが私を偏見な眼差しで接して来たりしていたら私はきっと早紀江さんまでも殺害していただろう。
鍵を開け家に入る。
そしてソファーに倒れるようにして寝そべると、私は思いっきり包丁で背中を突き刺された。
全身に鋭い痛みが走る。
これまでに経験したこともない痛み。
私は最期の力を振り絞り犯人の顔を見る為に振り返った。
「……な……ん……で……」そして今度は首の後ろを思いっきり突き刺され。そして意識はそこで消え去った。
<人口156人 生存者残り人口 59名>




