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「ぎゃああああああああ」と叫び声がホール内に木霊する。
「ひ、ひひひひひひ人殺し……」
そして次に流れる映像はトイレに行く和夫さんの映像で、そしてカメラは和夫さんの後ろ姿を追いかけ、そしてカメラはグシャグシャと揺れ始めそして次の瞬間に首の後ろに刺さった包丁、そして飛び散る血……そこで画面は途切れてしまった。
「こんな事をするなんて人間のすることじゃない」
「違う……信じて欲しい私じゃない……」
ガタンという音が舞台の方から聞こえてきて天井からブランブランと何かが落ちてきてそれは振り子の様に左右にぶらぶら揺れたかと思えば、それは血だらけの和夫さんの姿だった。
そして、そのすぐ後ろのスクリーンには「ご来場ありがとうございました」というテロップが貼りだされ、映像は砂嵐となり、すぐに画面も暗くなりホール内の灯りも完全に消えてしまった。
ホール内は完全にパニックに陥った。
「こんな殺人鬼と同じ部屋にいれるか」
「冗談じゃない、ひひひひ人殺し」
そして、みんなバタバタと一斉に多目的ホールから出て行ってしまった。
私は何もいう事も出来ずに、ただ悔しさと憎悪そして怒りが全身を駆け巡っていった。一体誰がこんな事を……。
放送室まで見えぬ敵を捜しに向かった。
放送室に鍵はかかっておらず、ドアノブを回して中に入ると、既に誰の姿もなく、代わりにホワイトボードには「佳代子は極悪人間」という文字が書かれていた。
……。
私は完全に言葉を失ってしまった。
一体誰がこんな事を……。そのすぐ下の方には、財布が落ちている。
その財布を拾い上げ中を開くと、そこには大豆ミツコと書いてある保険証が入っていた。
大豆ミツコというのは、噂話と悪口が大好き人間なせいか口はへの字に曲がっている島の人間で、私も随分とコイツに変な噂をある事ない事広められた。
私はその財布を床に叩き付けた。
私の悪口を散々吹聴した挙句、それだけでは物足りなくなって犯人に仕立てあげようとしたとそう言う事かい?
今まで必死に抑えてきた大豆ミツコに対する怒りが腹の底から真っ黒に浮かび上がり私は次第に魔物と化していった。




