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「これは一体どういう事だ!」
「市長から汚い金受け取ったから静雄さんはあんなに反対していた市との合併に賛成を始めたということか」
「静雄さんがいい車に急に乗りだしたから、おら聞いたんだよ。なんでお前はさそんないい車乗ってるのかよってさ。そしたら静雄さん娘が買ってくれたって言い張ったけど、娘のヨリコちゃん、うちの娘が島から出た時に見かけたって言ってたけど、専門学校の制服着てたってうちの娘が言ってたもんだから、何かあるぞと思ってたんだよ」
「この町のままで来たんだから、今更合併何てしたくないとか言っていたのが、ある日突然、この島も高齢化が進んでいて市の力がないとこの先困るのはわしらだ。とかいいだしてわしはてっきり静雄さんが色々わしたちの為に調べてくれて考え方が変わったんだと思っていたが違っていたんか」
静雄さんがねぇ……そんな事をするような人には見えはしないけれど、そういう人間こそ裏があるって言うしね。
ホールの中が荒れ行く中でそんな事を思っていた。
しかし、次の瞬間私の背中は一瞬にして凍りついた。
そう、映像の中には私が一人暗闇の中で立っている姿が映りだされたのだ。
マズイ。
大量に全身から冷や汗が出てくる。
映像の中の私は周囲を見渡して誰もいないのを確認してから玉緒さんの家の軽トラックの前に立った。
もう一度周囲を確認した後に、軽トラックのタイヤ辺りを何度も何度も蹴り始めたのだ。
「まぁ」
「佳代子ちゃんお前一体なにやってんだ」
「……」返す言葉がない。何を言っても言い訳になってしまうだろう。下を向いたまま黙り込む。
二郎さんが思い出した様にして「佳代子が殺したんだろう?玉緒さんやヨネコさん達を」と責め立てるようにして言ってくる。
周囲はザワザワとして、一斉にみんなの冷ややかな視線が私に向けられる。
「違う、それは私じゃない……私が殺してなんかいない」
「そうだ、和室にはこれ以上入れないって言ったのは佳代子ちゃんだ」
「鍵がかかって中に入れないって言っていたのは、あれは自分で鍵を締めたのか?」鉄三さんが殺人犯でも見る様な眼差しでそう言った。
「ちがう……そんなんじゃない」私は何もやってなんかいない。
「名前を確認したり島の人口を聞いてきたのはあれは、誰を殺したか確認するためか?」二郎さんは容赦なく鋭い言葉の刃で私の心を追いつめる。
「誤解よ……違う…」
映像はまた流れ始めると、血だらけになって横たわる九人の姿が映りだされていた。




