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サイバー・バウンダリー  作者: りょーじぃ
第六章 リレイズでの選択
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第四十九話 『バウンダリー(境界)の破壊』の真実

 ラムダ島で『ルシフェル』のハッキングを行っている場所を突き止めた鮫島 春樹は、今回の首謀者であるミハエルを探しにネクロマンサーのりゅうに会うが、途中で現れたミハエルと交戦になりバックアップ要因として現れたこうと対峙している。


 鮫島 春樹は目の前に現れた人物がこうだと理解し、即座にコートから右手に持つ棒を突き出しこうの体制を崩すと同時に左手から呪文を放ち、その魔法が閃光呪文だとこうは理解し即座に対抗する閃光魔法を繰り出し、互いの魔法は激しい光と共に相殺される直後にこうの回復魔法で回復したミハエルが『時を駈ける目』を使い鮫島 春樹の間合いへ入る。


「この間合いに入れば、オマエも『目』を使う余裕はあるまい。」

「それはどうかな?確かに『裁きの目』を使うには余裕がないが、僕の能力はまだ出し尽くしていない。」


 そう話した鮫島 春樹にミハエルが完全に捉えたと感じ振るった一刀は空を切り、次に姿を消した鮫島 春樹がミハエルの背後で閃光魔法アンセムを放ちミハエルを弾き飛ばす。


 魔術士と同等の魔法が使える最強の剣士『パラディン』でも魔道士の魔法で使えない魔法があり、その中の一つがシャインムーブである。

 それはリレイズで転職をする事によるデメリットで、魔道士の場合『パラディン』に転職すると最強魔法であるメテオスラッシュとシャインムーブは引き継げない設定になっていて、他の職業でも最強魔法や特技等が転職時に引き継げなくなっている。


 ミハエルの『時を駆ける目』は、『パラディン』になった事で高級魔法であるシャインムーブが使えなくデメリットを補うためのミハエルの策であったが、『ステータス操作』によって攻撃力を上げている鮫島 春樹は『ウィザード』でありながら戦士であるミハエルの攻撃を受け止められる力を持ち、『時を駆ける目』同様の能力を持つシャインムーブを使える事で戦局を五分以上に持ち込み、鮫島 春樹が右手に持つ光る棒を振り上げミハエル目掛けて振り下ろしミハエルがそれを剣で必死に受け止める。


 戦局が不利と見た同じ『ウィザード』であるこうもシャインムーブを使い接近するが、鮫島 春樹はその魔法を連続詠唱しこうとミハエルから一気に離れると、ローブ越しから少し驚いた表情のこうが口を開く。


「・・・貴様、シャインムーブを連続詠唱出来るのカ。さすが『ゲームマスター』て所ネ。そればかりは私でも真似出来ない能力ネ。」

「お前、アイリスで次の戦略に向け準備をしている最中だったんじゃないのか?」

「アイリスには『軍師』菊池がいるネ。ヤツが戻っていれば戦略は問題ないから、私はミハエルと共に『ルシフェル』の回収に来ただけネ。」

「回収?君達は一体何を企んでいるんだ?『バウンダリー(境界)の破壊』の可能性に一早く気づいた君達がその原因を作った首謀者であるなら、なぜ元の世界が破壊される危険なバグを持たせたままの『ルシフェル』を慌てて打ち上げたんだ。」

「私達はこの世界で生きる『リレイザー』であり、この世にシャングリラ(理想郷)を築く為に『ルシフェル』を打ち上げたネ。」

「お前達ネクロマンサーが『ルシフェル』を僕達に売り込んだ技術者だって事は既に知っているし、シャングリラ(理想郷)を築くのであれば、なぜ現実世界の同じアイリス教徒の成員をも巻き添えにした理由が思い浮かばない。・・・だか、この話を他の成員やアイリス三世へ持って行けば、成員を皆殺にしたお前の信頼は崩壊する事は間違いないだろうね。」


 こうの攻撃を完全に防いだ鮫島 春樹は『ルシフェル』を提案した人物がネクロマンサーである事を既に知っている事と、アイリス教徒であるこうが『ルシフェル』を打ち上げた人物であれば、成員だった人間のも巻き添えにした事をアイリスへ告げ口すればこう達の信頼は一気に崩れると脅すが、ローブの奥で不気味な笑みを浮かべながら口を開く。


「鮫島 春樹よ、来るのが一歩遅かったネ。私達は既に『ルシフェル』の解析とハッキングを完了し既に第二段階へ進んでいル。それに、この事は既にアイリス三世には話済みで国王はそれを承知で『バウンダリー(境界)の破壊』を了承した。己の領地拡大を目論む為にネ。この時代の人物は戦争と略奪の世界だから騙すのは簡単だたネ。」


 こうが鮫島 春樹の脅しにも動じない訳は、領地拡大と教徒を増やす目論みを持つアイリス三世との利害は一致している事を話し、こうは不的な笑みを浮かべたまま鮫島 春樹に問いかける。


「この段階に入ってからではいくら『ゲームマスター』であろうとも手出しは出来ないネ。それに、私は川村の『永遠の眠り』を解除する為に上杉達がリレイズ討伐へ向かうのは知っていル。だが、なぜ手出しをしなかったか分かるかネ?」


 上杉達がリレイズ討伐へ向かっている事をこうは知っていたが、なぜそれに対して何も手を打たなかったのかを鮫島 春樹へ質問すると、何かを悟った鮫島 春樹は険しい表情へと変化させる。


「お前ら、『アングレア』が放たれる事で起こる『バウンダリー(境界)の破壊』が目当てだったのか。」

「そうネ、貴様の予想通り『ルシフェル』の放射する周波数と『アングレア』の周波数は反共振する周波数で互いをかき消す事が出来るネ。だがそれを消す事が本当の『バウンダリー(境界)の破壊』であり、私達が求めるリレイズの世界が現実世界へと変わる瞬間でもあるネ。だが、それとは別で『ルシフェル』を占拠するのが本当の目的ネ。」

「本当の目的だと?」


 こうが話す問いに鮫島 春樹が答えた『バウンダリー(境界)の破壊』とは、『ルシフェル』と『アングレア』の周波数が重なり合い反共振を起こし放射している電波が消えた後の事で『境界』が無くなり、それは、この世界が事実上の無法地帯と化す事を意味していて、『上書き』によってかき消された現実世界が無い現状ではリレイズの世界が正の世界へと変わる。

 だが、こうが話す『バウンダリー(境界)の破壊』は鮫島 春樹もある程度仮説を立てていた事で、それ以外に目的がある事を話すこうに鮫島 春樹は不意をつかれたような驚きの表情で自身の考えを話す。


「確かに『ルシフェル』から放射される電波を止めれば『バウンダリー(境界)の破壊』を止める事は出来るが、それまでの世界を変える事も『上書き』された世界を元に戻せない事は知っている。だけど、放射される電波が『上書き』の原因であれば、あの電波がある限り『バウンダリー(境界)の崩壊』を止める事も『上書き』された世界を元に戻す事も出来ない筈だ。」

「『ルシフェル』の電波を止めた所で、それまでの『バウンダリー(境界)の破壊』も元の世界へ戻らないのは確かネ。電波放射によりリアルなゲームの世界を表現出来るのは『ゲームマスター』でありヘッドマウントディスプレイを作るお前達の会社へ売り出す為の謳い文句であって、あの電波を放射している本当の目的は別にあったのネ」


 鮫島 春樹が知る『ルシフェル』の真実は装置を売り付けたネクロマンサー達の本当の目的に対してのカムフラージュでしかないと話したこうは、ローブの奥から光る鋭い目を大きく見開き叫ぶ。


「私達が『ルシフェル』を打ち上げた本当の目的は、人間が死ぬ事によって発生する『負のエネルギー』を回収する為だたネ。」

「『負のエネルギー』だって。」

「そうネ、アイリスの教えで人間は死ぬ事で魂が浄化し生まれ変わると謳われているように、人は死ぬ際に発生する霊魂『負のエネルギー』を発生させ、私達はそれを『ルシフェル』の放射する電波で回収する事でこの世では実現出来なかった人体構造の組み換えに成功したネ。」

「・・・なるほど、それがカシミールを攻めた時に使った魂を入れ替え遠隔操作する魔法『リプレイス』って訳だね。人体構造を変える事なんて、リレイズの世界でももちろん現実世界でも不可能な話だ。それを可能にするのが死者の魂でもある『負のエネルギー』と言う事か。」

「それは現実世界でも実現出来る方法で、『ルシフェル』の放射する500GHz帯域の電波が『死の領域』と言われていた訳は文字通り放射線のような人間に有害な電波だったが、実はそれが放射線のような人へ直接害を与えるのではなく、その周波数の一部が人体の魂と共鳴する事が原因であったのを私達は発見したネ。一部の周波数帯域の影響で吸収されるが、それを溜める事が出来るのが『ルシフェル』であり、蓄積された『負のエネルギー』はリレイズの世界で新たな魔法を作る事の出来る強力なエネルギーとなるネ。」


 以前、アイリスがカシミールを攻め込む際に使った魂を遠隔操作する魔法である『リプレイス』は、『ルシフェル』の放つ『死の領域』の電波帯域で回収された死者の『負のエネルギー』を蓄積した事によって開発した魔法だとこうは話すが、負に落ちない鮫島 春樹は険しい表情のままこうに質問する。


「なら、なぜわざわざ世界を『上書き』する必要があった。『上書き』によって総人口は七十億人から数十万まで減ったのでは『負のエネルギー』の回収効率は落ちるは・・・!」

「気付いたようだネ。貴様も既に知っているとは思うが、『上書き』された事によってIDを持たない人間はどうなったと思ウ?」

「お前ら、その為だけに七十億人もの犠牲を・・・。」

「そうさ!『上書き』によって消されたリレイズのIDを持たない約七十億人の『負のエネルギー』のお陰で『リプレイス』は完成したのだヨ!万が一『上書き』された世界が元に戻ろうとも、既にエネルギーと化された魂は既に肉体を失っていて元に戻る事は無いネ。どちらにせよ、この世界は私達の世界になったと言う事ネ。」


 鮫島 春樹がこうに投げ掛けた質問は自身がその結論に気付いた所で止まり、薄笑いを浮かべながらその様子を見ていたこうは、『上書き』によりIDを持たず消滅した約七十億の人間の命である『負のエネルギー』によって『リプレイス』が生まれた事を話すと、鮫島 春樹はなぜ未完成で危険だった『ルシフェル』を稼働させた理由がようやく分かった事でその険しい表情に加え怒りがこみ上げて来る。

 続けてこうは、『上書き』された世界が戻った所で既に『負のエネルギー』と化した魂は肉体を失い元には戻らないと話し、既にこの世界はどちらにせよリレイズのプレイヤーとキャラクターのみしか生き残っていない事を話すと、多忙な身であったがその野望に気付く事が出来なかった自身に責任を感じる鮫島 春樹は、己の無力さに込み上げる怒りを抑えきれる事が出来ない表情で光る棒をこう向ける。


「お前達はこの世界で生かして置く訳には行かない人間だ。『ゲームマスター』である僕が責任もって処分する。」

「さっきも言ったけど、私達の目的は既に達成しているからこの国は興味ないネ。だからここはミハエルにお願いする事にするネ。ちなみに、『リプレイス』に作る為に使った人間の命は多分三十億程だたネ。残りの『負のエネルギー』はそのまま保管し、引き続きこの世を変える素晴らしい魔法の開発の為に使わせてもらうネ。」


 『ルシフェル』の研究を終了した事を告げるかのように、こうはラムダ島に興味が無いと話しミハエルに処分を頼むかのように話すと、同時に鮫島 春樹の目の前に閃光魔法で弾き飛ばされた筈のミハエルが姿を現し、目の前で両手を鮫島 春樹に向け放った魔法は『パラディン』のみが使える地上に存在する微笑な核を誘発して巨大な爆発を起こさせる究極の魔法と言われる『クリアス』を放つ瞬間であった。


「お前!『クリアス』を使うなんて。バカな、自滅するつもりか!?」

「オマエは『クリアス』の正しい使い方を分かっていない。なぜオレが『パラディン』を選んだと思う?」

「・・・!しまった!」


 『クリアス』の威力はリレイズの魔法の中では最強の火力を誇る魔法で、ラムダ島程度の小国であれば一瞬で消し去る事が可能な程の威力があるが、『クリアス』には重大欠点があり、その強大な威力故に術者自身も巻き込まれてしまう危険な魔法でシャインムーブを使っても回避不能であった為パラディンの魔法としては最後の手段『自滅魔法』的な部類とリレイズでは認識されていた。


 だが、魔法ではないミハエルの『時を駈ける目』を使えば呪文が炸裂する寸前に脱出する事が可能で、ミハエルはリレイズの世界で唯一『クリアス』を無傷で詠唱出来る最強のプレイヤーであり、『クリアス』の威力は瀧見の開発したメテオスラッシュやロード最強の魔法プットアウトより強力で、核融合爆発によりラムダ島の面積を一瞬して灰にする威力を見せる。


 大量の海の水が爆発の影響で巨大な津波を作りだし、その影響で発生した水流にラムダ島は飲み込まれ地図上から姿を消し、ミハエルは『時を駆ける目』で『クリアス』を避けこうりゅうと共にラムダ島を離れ、『クリアス』の直撃で受けた鮫島 春樹は全てが海の藻屑と消えたラムダ島と共に姿を消した。


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