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サイバー・バウンダリー  作者: りょーじぃ
第一章 リレイズの世界
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第二話 内向的な魔法使い

2015/12/15 文構成を修正実施

 ここは、とある高等学校。


 吹き付ける風は、木々に付く枯れた葉をもぎ取り、その葉を未知の土地へ運ぶかのように枯れ葉が宙高く舞って行く季節は冬を迎えようとする11月。

 朝露に濡れる葉を風で揺らしながら、一台の自転車が走り去って行く一人の男性の首にはマフラーが頑丈に巻かれ、朝の寒さを感じさせる。


 彼の名は『上杉 新作』、高校2年生だ。


 両親は、次世代の新しいものを創作して欲しいと願い名付けた名前だが、周りからは『ビデオの新作』などと言われ、からかわれる絶好のネーミングだったが、小学生からやっている剣道の腕は中学時代に都大会まで行った実績がり中学時代はアイドル的存在であった。

 だが中学3年になった彼は突然、剣道の有名校からの誘いを断り剣道部の無い高校へ進学した。

 剣道以外に取りえのない上杉の高校での存在は、運動神経も普通であまり目立たない存在のこれといった個性の無い、言わば現代人らしい何処にでもいそうな目立つのを嫌う高校生だった。


 だが、彼には熱中している事が一つだけあった。

 それは、ヘッドマウントディスプレイから異世界を体験できるソフト『リレイズ』の攻略だ。


 剣道一筋だった中学まではゲームとは無縁だった上杉が初めて手にしたリレイズの虜になり、剣道の道を絶った理由の一部に影響を与えた程に、彼はそのゲームその集中力と異常なまでの研究心で僅か一年で日本で有数のプレイヤーにまで成長していた。

 このゲームは己自身の性格やそれまでの人生の経験がそのままプレイヤーに生きるので、自分の得意な分野で職業を決めのが普通だったが、上杉は中学まで腕を磨いた剣道を活かした職業ではなくあえて知識の必要な回復職であるビショップを選んだ。

 当初はこのゲームのシステムを理解した時は武器を使う職業も上杉は考えたが、リレイズでは指折りの実力を持つ程になった今はヴィショップの職業をとても気に入っていた。

 リレイズの世界での魔法はレベルを上げれば覚えられるのではなく各地に点在する呪文の書や古文書などを購入し知識を得て初めて使用出来る為、このゲームの職業は手軽で攻撃力もある戦士職に偏りがちになり、このゲームでの魔法職は重宝された。


 周りを囲む生臭い空気や襲い掛かって来そうな程多く茂る森や戦闘でのリアルな衝撃や感じる熱など、全てが現実世界では体験出来ない世界が広がっているこの世界にゲームの世界に居る時が己の力を試されている緊張感と、クエストを成し遂げたときの達成感は何物にも代え難い快感を覚える感覚は上杉にセックスより気持ちの良いエクスタシーを提供してくれたが、リレイズにのめり込むにつれ上杉は学校と言う現代のシステムが馬鹿らしくなり、クラスでは特に誰とも話さず孤独な学生生活を送っていた。


 リレイズの世界での上杉には仲間が三人居て、その三人でパーティーを組み数々の難関を乗り越えて来たパーティー名『サイレンス』は、このゲームの世界では名の知れたプレイヤー達であった。

 仲間との連絡は携帯のアプリを使い連絡を取っていて、ゲームの世界ではゲーム内のボイスチャット機能を使い常時連絡が取れる状態にしている。


 今日の授業が終わった上杉が帰り支度を行なっていると携帯のアプリにチャットが入り、その相手は三人のうちの一人でよく連絡をくれる川上だった。

 川上はサイレンスのメンバーでは盗賊シーフとして活動していて、主な業務は情報収集と罠の回避などの非戦闘部門を担当する。

 現実世界での職業である営業のスキルを活かした川上の情報収集能力は突出していて、知りたい情報の仕入れ方を探すその能力はゲームの世界では一目置かれている。


「『今日の22時ログイン』か。・・・だけど、今週テストだからどうしようかなぁ。あ、清水も今日ログインするのか・・・、ま、いいか『了解』っと」


 川上からのチャットは今夜のログインの連絡で、既にもう一人のメンバーである清水にもログインするとの連絡を貰っている事も書いてあったのを確認した上杉は即座に了解の返事を送る。

 清水は三人のメンバーで唯一の女性プレイヤーだが、彼女の職業は戦士で戦闘時は常に男子二人に前に盾役を務める頼れる存在で、彼女が発する戦闘バトルオーラはこの世のどの攻撃よりもヘイトが高く敵を常に彼女に釘付けに出来る得能力を持つので、攻撃力の少ない職業でかつ三人と言う少数パーティーの集まりのサイレンスが日本有数のパーティーと認められたのも彼女の働きも大きいと上杉は感じている。


 ゲーム内の名前は実名入力が義務付けられている理由はゲーム内で問題が発生した際に現実世界へ逃げ切らせない為の措置で、ログインIDを取得する際は身分証明書等の本人確認が必要になるが苗字だけでも構わないので大抵のプレイヤーは苗字のみになっている。


「まぁ、彼女がいれば探索したかった迷宮に集中出来るし」


 木枯らしが吹く教室の窓際で、男子としては長めのクセの付いた髪を揺らしながら上杉は一人携帯を見つめながら呟いた。


「・・・ねぇ、上杉君?」

「い、いきなり驚かせるなよ!」

「あ、ごめんなさい。彼方、学校が終わるとすぐ帰ってしまうから・・・」


 上杉の後ろに立っていた一人の女性にきなり不意打ちを突かれ慌てふためいた上杉は、腰まで伸びた長い黒髪と端正な容姿にフレームレスのメガネを掛け見た感じで優等生っぽいオーラに驚き持っていた携帯を手から離しそうになり、そのまま窓から落ちそうになる携帯を必死になって手を出し無事携帯をつかむ事で落ち着きを取り戻した上杉は後ろにいる彼女に向かって不機嫌な表情を浮かべ話す。


 彼女の名は、鮫島 智子。

 このクラスの学級委員であり、二年生で生徒会の役員を務めるなど、この学校きっての優秀な生徒だ。


「・・・なんだよ、お前が俺に用なんてあるのかよ」

「ええ、彼方、今日から私と行事準備委員の仕事があるから」

「え!?そんな役割、俺にあったっけ?」

「ええ、来週ある校内バザーの準備委員に選ばれているのよ。・・・そうか、彼方確かその日休んでいたわね」

「あ・・・、なんか思い出した。あの時の休んだ日に決まったのかよ・・・」

「上杉君が欠席だったから、満場一致で決まったのよ」

「まぁ・・・それじゃ、しょうがないな」


 前日のプレイで疲労が溜まっていたので翌日学校を休んだ事を思い出した上杉は、あの日欠席していた自分に周りは役員をなすり付けられたと感じ頭をかきながら渋々納得するが、普通に見れば美しい黒髪と端麗な顔の綺麗な女性の鮫島は、その素っ気無い話し方に周りから謙遜されている要因でも周りに嫌煙される損な人間だと思いながら彼女を見つめる。

 中学時代は剣道で有名だったのでファンクラブもあったくらいでルックスは悪くないが、勝手に手の届かない存在として祭り上げられていた為一人の女性と付き合った経験などは一切ないまま高校デビューを果たした上杉は、見た目はちょっとチャラい感じになってしまっているが正直こう言ったタイプの女性は苦手だった。


 こうして、これまでの人生で相まみえる事のなかった二人が夕焼けに照らされた校舎の廊下を歩き、バザーの準備をしている体育館へ向かった。

 日が傾き薄暗さを感じる管内では、各学年クラスの担当委員が既に指定された場所に商品を広げ準備を進めていて夕暮れの時間にも関わらず活気をみせていた。


「上杉君、こっちのシートにこの商品を置いて」

「お、こっちか?」

「そう、そこはメイン的な品物を置くから綺麗に敷いて」

「はーい・・・」


 到着後即座に鮫島は上杉に作業を指示し始める鮫島の仕切りと手際の良さは、その能力は右に出る者はいないと思えるほどに的確な指示と動きで遅れていた時間をあっという間に取り戻し、その作業する鮫島の横顔を見つめる上杉は、今までこんな近くで見たことの無い彼女のうなじや瞳に思わず見とれていた。


 その夜、上杉は約束どおり22時にリレイズにログインする。

 ベッドと勉強机のみの簡素な部屋の真ん中に鎮座している巨大な一人掛けのソファーに上杉は腰を降ろすと、側面に掛けられていたヘッドマウントディスプレイを自身の顔に被せると、意識が吸い取られたかのようにソファーに身を委ねた。


 目の前の景色が一瞬にして暗闇に覆われ、全身の意識が遠のいてゆく。

 科学的に説明すれば、ディスプレイから発せられた光が脳を刺激しバーチャル空間を投影させる為のプロセスらしいが、上杉は正直、近代科学の知識なんて化学の授業程度の知識しかないのでアルゴリズム的な法則なんて気にもしてはいなかった。


 やがて上杉が目が覚めると、そこには現実世界ではありえない風景が目に飛び込んで来る。

 土壁やレンガで作られた壁の建物、階段を登ると徐々に中心にある巨大な城へ通じる道、そして周りには数十メートルはあろう巨大な壁が町と城を囲むように聳え立つこの巨大な要塞都市が、5大陸の内の一つにして最大の都市『イスバール』で、大陸の名前はその大陸で最大の力を持つ都市の名前が付けられる決まりだ。


 上杉とサイレンスの仲間達は、ここを拠点として各地へ出向き活動をしている。

 最大の都市なだけあってここには必要な物は大体手に入り、伝説の人物が作った武器や魔物が使っている『魔道具』と言われる特殊な武器以外はここイスバールで作られ販売もされている。

 イスバール都市の配置は、中心にある王宮を囲むように南門から王宮までの左右の通路は商売や飲食等の商業区で、西門から王宮までは民家区が並び逆の東門側は武器や商品を製作する工場区が立ち並ぶ構造になっている。


 サイレンスはこの地の西側の民家区にアジトを構えている。

 上杉は南門より商店を抜け、西側にある民家区を目指し歩き始めた。


「よっ!上杉!」


 商業区を歩いていた上杉の後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

 立ち止まり後ろを振り返った上杉の目に入ったのは、肩まで伸びたブロンドの髪を一本にまとめた女性で、華奢な体系に似合わない幾度もの戦闘を経験した手練れだと分かるような黒く薄汚れた鎧を纏い、長く無骨な剣を背中に斜め挿しする女性で、彼女こそサイレンスの前衛女戦士の清水だ。


「上杉もこれからアジトへ行くの?私はちょっと寄り道してから行くから川上にそう言っといてねぇ」

「分かった。・・・そうだ、清水の今週のログイン予定は?」

「うーん。今週はちょっと夜勤があるから、週末まで無理かも」

「そっか、分かった。じゃぁ、俺は先にアジトに行ってるから」


 その風貌からは想像出来ないような幼な声で上杉に話す清水は現実世界では看護師をしており、このゲームの疲れる特性のせいもあって夜勤勤務の時はログインはしておらず、上杉のような学生なら問題ないが社会人では休む訳には行かないとの事で、その事は清水をサイレンスに勧誘した時に川上も了承済みだ。

 それでも彼女の特殊能力は少数精鋭のこの部隊では貴重で、ヘイト管理をいつでも調整できる強みと防御力と攻撃力両方を備える最強の前衛は、戦闘や捜索の時は清水がログイン出来る日を選ぶようにしていた。


 商業区で清水と別れ、上杉は再び北を向き王宮前経由でアジトのある住民区を目指す。

 賑やかだった商業区を抜けると一気に静けさが勝り始める。

 住民区と商業区の中間の王宮がある区間は、物々しい数の警備兵と王宮へ入る唯一の場所である門前で入城チェックを受ける人々が列をなして静かに待っている。

 城内へ入るにはこの門からしか入れないので、城へ用があり申請手続きが必要な者はここで書類を書き身体チェックを受けたりと入城までに約半日は掛かってしまう。


 システム上致し方ないが、これほどまでにこの世界は戦争が頻繁に起き常に大陸の名前が変わる状況が続いていたが、上杉が登録し始めてからは5大陸の勢力図は変わっておらず、国が変わる程の戦争は幾つか経験したが挑戦者は返り討ちにあっていた。


 守衛の目線を感じながら王宮の城壁に沿って歩みを進め、暫くすると西側に商業区とは違い閑静な住宅街は現れ始める。

 イスバールの住民区は高級住宅街とも言える人気物件で、上杉達もたまたま売りに出された物件にありつけた為、ここイスバールにアジトを設ける事が出来た。

 通常の冒険者は宿暮らしが基本で、一泊の料金は安ければ外でウルフ一匹程度の皮を売れば十分に事足りるが、最近ユーザが増えつつある状況で宿が満室になる恐れがないとは言い切れないので投資目的も含めて購入に踏み切った。


 アジトに着くと、家の窓には明かりが灯り人の気配を感じる。

 三人は合鍵を持っているので扉は常に閉まっているので上杉は持っていた合鍵を鍵穴に挿し開錠すると、目の前にあるドアノブを持ちゆっくり手前へ引いた。

 部屋の構造は平屋の3LDKと意外と広い構造で、個室は各自で一部屋ずつ割り当てられていて、玄関を開けると目の前に台所があり、そこで陶器で出来た鍋で水を沸かしている一人の男が立っていた。


「・・・お前、何やってるの?」

「おお、上杉か。今やっと、こっちの世界のラーメンが出来る所まで来たから、麺を打ってこれから茹でる所なんだ。お前も食べるか?」

「いや・・・、川上の反応を見てからにするよ」


 台所に立ち、沸かした鍋に手打ち麺をばらけさせながら入れる人物。

 スラットした長身で頭にバンダナを巻き、服は以前討伐した黒竜の皮で作った革ジャンもどきに身を包む青年。

 彼が、サイレンスの三人目のメンバーの川上だ。


「さっき商業区で清水に会って、用事を済ませてから来るって」

「おう・・・分かった・・・」

「・・・川上、聞いてるか?」

「ん?、聞いてるよ」


 上杉の話を、半ば半分程度の気持ちで聞いていそうな川上は、目の前の鍋で、お湯と戯れる麺の方が余程気になっているように上杉は見えた。

 暫くして、何かに取りつかれたかのように工場区で特注で作ってもらった銀の玉あげで、湯の中の麺を貪り付くようにすくい上げ、玉あげを振り上げると即座に振り切り、すくい上げた面の水分を弾き飛ばし、目の前にある、陶器で出来た深めの器に載せる。


「ここまでは予定通り。この、『ジズの卵』と『東洋水』を使って練りこんだこの麺。後はジズの出汁から取ったベースと、イスバールで栽培されている『大豆おおまめ』を発酵させて作った醤油。ついに、この時が来た・・・。思考を重ねる事3年。ついに、これまでの苦労が身を結ぶ時が来たのだ!」


 川上はそう叫ぶと、面の入った器にベースと醤油を混ぜ合わせる。

 そして、ジズの肉を燻製にし作った肉をトッピングすると、目の前に現実世界でしか味わえないラーメンが完成した。


「どうだ上杉!やっとこの作品が完成したよ」

「・・・まぁ、確かに見た目はラーメンだけど、具材がちょっと、ね・・・」


意気揚々と、川上は嬉しそうな顔つきでリビングにラーメンを運ぶ。


「やっとこの時が来た・・・。いざ、実食!!」


 真剣な表情に変わった川上は、持っていた箸をラーメンに向け一本の麺をすくい上げ、麺を食した後暫く沈黙が続き、箸を置いてあった蓮華に持ち替え器のスープを飲む。


「・・・やっぱり、何か足りない」


 落胆の表情の川上を横に、上杉もラーメンを食べる。


「う、うん、不味くは無いけど・・・美味くもないな・・・」


 ゲームの世界の食事は、全て見た目同様の味がして、見た事の無い未知の食材は別だが、現実世界と似ている食材は味に大きな差はなかった。

 だが、この世界には鶏がいない為、卵を使う料理は現実世界の物と同じ味の再現は難しかった。

 今回も、鳥の代わりに使用したジズは鶏と比べ物にならない程の大きさで、鳥類としては同枠だったが、その巨体故の大味さがこのラーメンの味となって出てしまっていた。


「うーん。出汁にした時は問題なかったんだが、どうも醤油と混ぜるのは相性が良くないらしい」

「作っている味噌は?」

「今年もダメだった。大豆おおまめの品種改良が必要かもしれないな」


 次に控えるのは噌味ラーメンで、川上は味噌の製作もしているが、現在まで思った成果は上がっていない。


 上杉達は、この世界でラーメン屋を開く事を目論んでいて、現実世界でも、当初のラーメン屋は儲かっているという簡単な妄想で決定したのだが、それは思ったより険しい道のりで、川上が以前から先行して進めていた調味料の開発などの成果が出ない限り、開店までの道のりはまだ遠いと感じていた。


「あー、分っかんねーな!」

「まだ、安定した職は得られそうには無いね」

「上杉、こっちの事は俺がするから黙ってろよ!」

「・・・じゃぁ、仕事の話を」


 座っていたソファーに寝転がり、上杉の掛けた言葉にふて腐れる川上に、上杉は怒る事も無く、この展開を待っていたかのように即座に話を切り替えた。


「攻略中の『ネロの洞窟』だけど、今週は清水が週末までログイン出来ないらしいから、これから潜入して範囲を広げたいと思っているんだけど」

「地下2階の攻略をそんなに急ぐ理由はあるん?」

「地下2階は、3階入り口付近でキャンプを張れるポイントがあるから、出来ればそこまで進んで、週末に地下3階と4階の攻略を進めたいんだ。今、アステル社から出てるクエスト『ハヌマーンの毛皮を手に入れろ』で、既に、地下3階で冒険している者が居るって話だったから、俺達も、せめて地下2階はクリア出来る状態にしておかないと、他のパーティーにクエスト攻略を先越されてしまうから」

「なるほど・・・。確かに、地下3階には既に数組の冒険者がいる話は聞いた。週末まで動けないのであれば、今夜動くしかないって事か」

「川上、準備の方は?」

「おお、小一時間もあれば出来る」


 二人が作戦を練っていた所に、清水も遅れてやって来た。

 二人の目の前にあったラーメンに気付き、清水はそれを食したが、その前の二人と同様に曇った表情を浮かべた。


「・・・うーん、やっぱり素材が違うのかね」

「そっちの話はもう済んだからいいんだよー!上杉から聞いたんだが、週末までログイン出来ないんだって?」

「ええ、今週は夜勤でね。流石に、ゲームの後の勤務は無理だわ」

「それで今、川上と話をしたんだけど、ネロの洞窟へこれから行こうと思うんだ」

「これから?あ、そうか。クエストの配布から考えると今週末が山場って事ね」

「おお、流石は清水の姉さん」

「まぁ、それ程でもあるね!」


 上杉の考えに、勘の良い清水は即座に気付き、洞窟潜入に賛成し、その後、川上が出発の準備を整え潜入出来る準備は整った。


「上杉、学校は?」

「午前中は眠いだろうけど、体育だから多分大丈夫だよ」

「いやー、若いっていいねぇ。俺も後、数年若かったらな」

「川上は仕事?」

「いや、流石に明日は休み入れたよ。この時期は丁度営業も手隙だしな」

「おーい二人とも、出発するよぉ」


 上杉と川上の会話を切るように、清水が出発の声を掛けると、日付が変わる夜更けの町に中を、日本有数のパーティーが、ネロの洞窟目指してイスバールの都市を後にした。

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