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サイバー・バウンダリー  作者: りょーじぃ
第二章 転移後の世界
20/73

第十八話 イスバール奪還

2015/12/21 文構成を修正実施

 ここは、元イスバール城入り口。


 今はアイリス国の配下にあるこの城は門番である衛兵も、青い鎧に白いストライプ色のアイリス兵が門を守っている。


 冷たい風が吹く夜更けに、いつも通り定刻の交代に白い息を吐きながらいそいそと交代をしている中、そこから僅かに見えた人影に一人の兵士が気付き周りに声を掛ける。


「この先に誰か居るぞ!」

「お前は何者だ、この時間に何の用だ!」


 衛兵達はようやく姿の見える範囲にその姿を捕らえると、眩い程の純白に青いストライプの法衣を纏う一人のプレーヤーを確認する。


「女だ、女一人だ」

「なんだ、娼婦か何かかよ?」

「い、いや、アイツ剣を持っているぞ!」

「貴様!何者だ!」


 銀色のショートボブを風に靡かせざわめく衛兵達の前に立つ一人の女性は、リレイズ三大高級職業の一つ『ロード』である木村で、その顔は侠気に満ちた鋭い表情で、持っていた剣を衛兵の前に突き出す。


「お前達はアイリスの兵士だな?私は、このイスバールを返して貰いに参上した」

「何馬鹿な事言って・・・っ!」


 木村に歯向かおうと衛兵が言葉を発している最中に話を止めると、その兵士の顔は横二つに切られ上半分は既に消えて無くなっている。


「我が忠誠を誓うイスバールを汚す者は一人として生かさない。まとめて相手をしてあげるから来なさい」

「な、何者だコイツ!」

「構わねぇ!やっちまえ!」


 木村の前に居た数人の兵士が一挙に押し寄せて来るが、その数に動じない木村は静かに突き出していた剣を手前に戻し構えると、次の瞬間、兵士達は木村の姿を失い気が付くと一人の兵士の目の前に突如木村は現れ、構えた剣を振り切り兵士の動脈を切りつけると、即座に剣を戻し横に居た兵士に襲い掛かる。

 その高速で動く木村の存在に気付かないその兵士は、気付く前に首と体を切断され辺りに夥しい血が噴水のように溢れ出し、一瞬にしてその場は地獄絵図に変わる。


「ひぃぃ!」

「ば、バケモノだ!城内警備兵に連絡を!弓矢隊出動だ!」


 城門の騒ぎに気付いた城砦の兵士が後へ向かって叫び城内に危険を知らせると、城壁から弓を構える兵士およそ数千が木村目掛け矢を放つ。


 まるでゲリラ豪雨の雨のように降り注ぎ襲い掛かる矢を見ながら、木村は静かに詠唱を始める。


「~リムーブシールド~」


 その魔法はヴィショップが使う光の壁を作り物理攻撃を防ぐ魔法で、自身の魔力によってその強度は決まり、木村の魔力であればリヴァイアサンの津波を防げる力を持つ。

 だが無数の矢を防ぐには光の壁は小さく、このままでは木村の体に矢が刺さるように見えた瞬間、リムーブシールドの光は木村の体をドームのように包み込み

 放たれた数千の矢を全て跳ね返す。

 これは、衛兵として存在する『ゲームマスター』が持つ特殊能力の一つで、通常は立て程度にしか広がらないリムーブシールドで己を包む事で無敵に近い状況を作り出す事が出来る。

 木村は、矢が放たれた先にある城壁を見上げ再び詠唱を始める。


「~ハリケーン~」


 木村の周りに竜巻が現れ、その竜巻は土煙と共に城壁の兵士を襲いその場から弾き飛ばされる。

 ハリケーンは風圧系魔法の中位魔法で、上杉のウィンドカッターよりも強力な風を出しその風に土煙を乗せ砂嵐を起こす魔法で、対モンスターには移動阻害としても使えるが、今回の衛兵程度であればその風で遠くへ弾き飛ばす威力を持つ。


 城門に兵士が居なくなり無人となった入り口を、木村は無言で歩き出す。

 その足元には、無数の死に絶えたアイリス兵が無造作に倒れている。


 王宮内を守衛している衛兵達がこの事態に気付き、その先の中央通りを数百となる兵士が引き下がる事無く無双の強さを見せつける木村を見つけ襲い掛かるが、彼らの高速で突く槍の攻撃も木村には物足りない速度でその槍の連続攻撃を余裕でかわし、攻撃が止まった瞬間に持っていた剣で衛兵の喉元を一撃で突く。

 その直後、即座に後ろから襲い掛かる兵士に背を向けたまま自身の剣を背中に回しその攻撃を受け止めると、腕を戻す力で槍を跳ね返し無防備になった衛兵の胸を構え直した剣で一突きにする。


 死に絶えた衛兵の横で剣に付着した血を振り抜く事で払うと、自身の知る玉座の間のある奥の部屋へ黙々と歩き始める。


 玉座の間に着くと、数隊の兵士と共に怯える表情の現国王ピボットが居たが、それよりも木村はここへ来る迄にプレイヤーと遭遇しない事を気にしていた。

 リレイズの世界でのプレイヤーの力は強大で、いくら数千の兵隊が居ようが木村のような伝説級のプレイヤーであれば歯も立たない事をアイリスが知らない筈が無く、この玉座の間を見た瞬間、アイリスはイスバールを侵略してここで何かをする事を最初から考えていなかったと思わざるを得なかった。


「貴様が王だな。なぜ、他の冒険者は居ないのか?」

「ここを我がアイリスが占拠すれば、ここを落とそうとする物なぞいないと。それなのに、なぜ貴様はここまで来たのだ」

「それをだれに言われた」

「貴様になぜそのような事を言わねばなら・・・っ!」


 ピボットは木村との会話の最中に側近の兵士に攻撃を仕掛けさせるが、その速度では木村の間合いに入る事も出来ず、襲い掛かる兵は全員木村の剣の餌食となり、その後木村は即座にピボットの目前まで移動し喉元に剣先を向ける。


「質問しているのは私だ」

「わ、分かった!それは我が家臣である『菊地』に言われたのだ。冒険者は『黒い雨』の影響で死ねば二度と戻らない体になったから、強大になったアイリスには逆らわない筈だと!」

「・・・菊地、だと」


 木村も噂ではあるがその名前に覚えがある。

 アイリス教の成員でありながら、活動拠点がカシミールにある筈のエスタークに所属する人物。

 それよりも木村は、ピボットが話した『黒い雨』が気になりその件について追求をする。


「黒い雨とは何だ」

「そ、それは知らない!ヤツラが勝手に言っているだけの事だ!」

「ヤツラって言ったね?と、言う事はこれを知る人物は複数居るんだね」

「あ、あ、あ!」

「さぁ、言って貰おうか」


 その時、木村の後方から凄まじいスピードで光の閃光が襲い掛かる。

 それに木村は気づくのが遅れたが閃光は木村の頬をかすり、その光は目の前にいるピボットへ襲い掛かりその額を貫いた。


「誰だ!」


 無造作に玉座に倒れるピボットから木村は離れ、閃光が来た後方を向き叫ぶ。


「・・・困るんですよネ。せっかく落とした城をめちゃくちゃにするなんテ。いくら興味のない城とは言え、これからカシミール戦に備えなきゃならいんだかラ」


 木村の後ろに居る人物はカラスの様な黒いボロボロのローブを纏う魔法使いで、そして、先程の閃光は閃光魔法の高等呪文『フラッシュアロー』だと木村は理解する。


「あなたが菊地?」

「ほー、まさかこんな所で『ゲームマスター』に会えるとは思わなかったヨ」

「あなた、なぜそれを!?」

「リレイズで『ロード』の職を持っている人物は三人。一人は転移の影響で死に、もう一人は私のパーティーにいるネ。そしてもう一人は若干十一歳でリレイズのゲーム製作に携わった天才プログラマー、木村だけヨ」

「あなた、何者なの!?」


 質問と同時に木村は男の間合いに入り剣を振り抜くと、男はその攻撃を状態を後ろに反らして造作も無く交わすと、鋭い眼光だけを木村に向け自己紹介と言わんばかりに己の手を胸に当てる。


「私は、『こう』言いまス。職業は『ウィザード』ネ」

「何!?」


 次の瞬間、こうは詠唱無しで手から発せられた光が一気に増幅される。

 その光は中央に黄色い芯を持つ淡い光を放つ光だったが、その光の属性に気付いた木村は危険と感じ即座に防御へ回る。


「~アンセム~」


 その発動と共に巨大な矢と化した閃光は一気に弾け木村に襲い掛かり、木村は即座にリムーブシールドを張るが、呪文に込める魔力が足りず、アンセムの光がシールド内へ徐々に進入し、木村の顔を照らし出す。


「あなた詠唱が長い。それではせっかくの特殊機能が勿体無ネ」

「クッ!」


 先程のフラッシュアローのさらに上級魔法となるアンセムの閃光は、溜めの足らないリムーブシールドに突き刺さり、ほぼ半分以上が木村の居る内部へ潜入して来ている。

 このままでは閃光の矢は木村の頭部を貫通し命を奪うが、こうの放ったアンセムは強力で、片手ではその威力を抑え切れなった為、両手で押さえる今の状態では、攻撃をかわすどころか防御する事も出来ない。


「ロードの力は惜しいけど、あなたは絶対にアイリスへは来ないと分かてル。だから、このまま死になネ」


 片言の日本語で語るこうは不気味な笑みを浮かべたまま、アンセムを放った片手の光をさらに巨大にし、放った閃光の威力を増大させ木村のリムーブシールドを突き破ろうとしている。


 その時、リムーブシールドに刺さる閃光の矢を剣で切りつけるプレイヤーが現れ、剣を振るうと、閃光の矢はたちまち鎮火したかのように消え去り、その男は木村とこうの間に立ちはだかる。


「魔法剣士か、その技は『属性吸収』ネ。そのアイリスの衣装は、貴様は『闇奉行』カ」


 自身の魔法をかき消し木村の前に立ち剣を構える男は、紺色のローブを纏いその剣に似合わない姿を見て、剣に魔法を宿す事の出来る職業『魔法剣士』だと木村は即座に理解する。


「まさかこんな所で『策士』こうに会えるなんてな。私もアイリス教徒の端くれ、その姿と名前は現世でよく聞いている」

「魔法剣士に『属性相殺』を持つ『闇奉行』カ。一人で相手にするには分が悪いネ」


 三大高級職業である『ウィザード』でも相性の悪い相手は存在する。

 それは魔法を溜める事の出来る魔法剣士で、ある程度の攻撃であれば剣に込めた魔法で相殺出来る特技を持ち、小沢の場合は先のケルベロスの戦いで覚醒した『属性吸収』が使え、なおかつロードも居るこの状況にこうは戦えば分が悪いと判断する。


「まぁ、所詮イスバールはラムダを落とす為の踏み台程度の国。奪還された所で、これからの作戦に影響はないネ」


 目の前に居る二人を背にし、こうは羽織っていた黒いローブを全身に巻くと、まるで煙のように姿を消した。


 やがて再び夜の静けさを折り戻した城内で、木村は目の前に立つ男に話をする。


「ありがとう、おかげで助かったわ」

「いや、礼は後ろに居る男に言ってくれ。アイツに言われなければ、私はこの戦いに気付く事は出来なかった」


 小沢の話を聞き、木村は辺りを見渡すと、壁に持たれた黒一色の黒竜の衣装を着た一人の男が、木村に向けて右手を差し出すキザなポーズで微笑んでいる。


「・・・アイツが恩人なの?」

「深い事は気にするな」


 現代の人間がする行動ではないと興醒めの表情で見る木村に、女性を見ると見境のない川上のいつもの行動に慣れている小沢は表情を崩さず、その事を木村へ簡素に説明する。


「私は木村って言うの、よろしくね」

「私の名は小沢、あっちの変人は川上と言う」

「変体は余計だろ!あ、初めまして。俺は川上と言います!」

「ちょっ!私を相手にすると現実世界じゃまだ犯罪だよ」

「・・・って事は、まだ未成年!?あー!なんかこっちへ来てから俺、女に見境が無くなって来ている・・・」

「なんかそれも失礼ね・・・」


 木村から自己紹介を始めると小沢は川上の紹介をするが、女性となれば我先にと言った感じで川上は再び自己紹介をし木村の両手を握るが、木村が未成年と分かると、驚きと自身の情けなさにその場で落ち込むが、小沢はその様子を気にも止めず話しを続ける。


「ところで、ここまでの潜入はお前一人でやったのか?」

「ええ、でもここにはこう以外のプレイヤーは居なかったし、アイリス兵自体も、王の護衛程度しか居なかったわ」

「さっきのこうの態度を見ても、イスバールは次の侵略の為の倉庫程度にしか思っていなかったようだな」

「ところで、あなたこうを知っているの?」

「ああ、私も現実世界ではアイリス教徒だからな。リレイズに居るアイリス教徒は大体知っているが、その中でもこうは中国支部の幹部でリレイズに永住するリレイザーだからな」

「道理で、『ウィザード』なんて職業を持っている訳ね」

「そんな事言っても、お前も『ロード』なんてレアな職業じゃないか。お前もリレイザーなのか」

「まっ、それは置いといて・・・。・・・ふーん、あなた達サイレンスなのね」

「なぜそれを知っている、私達の追っ手か?」

「そんな怖い顔しないでよ。私はさっきまで、上杉と鮫島さんと一緒だったし、それに現実世界じゃ同級生なの」

「何!上杉達と一緒だったのか!?」


 木村は上手く誤魔化したが、小沢との会話中に『見透かしの目』を使い二人の素性を確認した時、二人がサイレンスのメンバーだと知った。


「上杉達はアイリスの侵略を止める為、カシミールへ向かったわ」

「なるほど、戦争を企てているのはキャラクターではなくプレイヤーって事か。なら、これ程までの戦争になぜクエストが配布されないのかが理解出来る」

「でも正直、運営が正常に機能しているのかも分からないけど、イスバールを落としたアイリスの次の目標は、間違いなくカシミールでしょうね」

「そこに相違はないな」


 二人の会話に冷静になった川上が参加し、サイレンスの頭脳的な存在の川上も木村同様の意見だと返答する。


「さっき木村さんが話したこの城の警備の話、落とした城にプレイヤーを雇わない訳は、恐らく次の戦争が総力戦だと知っているからだろうね。カシミールとアイリス、今まで合間見えたことの無い相手だし、それと気になるのはアイリス教幹部の菊池がどっちに付くかだな」

「エスタークの菊池か。村雨は多分カシミールに付くだろうから、菊池の判断次第で今回の騒ぎの首謀者が分かるかも知れないな」

「どう言う事なの?」

「もし菊池が村雨と対立するような事になれば菊池はエスタークには戻れないだろう。この世界になった状態で敵を増やすのは得策ではない筈で、そうなればエスターク以上のバックが居るって事になる」

「それはアイリスって事?」

「いや違う。例えアイリスだろうと所詮はキャラクターの集まりで、いくら国がバックに付こうが、最強のプレイヤーである村雨を裏切ってまでの価値は無い。だとすると、別のパーティーって事になる」

「エスタークは、私でも知っているリレイズ内では最強のパーティーよ。それ以上のパーティーって・・・、まさか!」

「それが、こうが率いる『ネクロマンサー』って事だ。こうはアイリスを中心に布教活動と戦争を行なっているネクロマンサーのリーダーで、活動は派手ではないがその実力はエスタークやサイレンスと並ぶ」


 木村は、『ゲームマスター』としてカシミールの秩序を守る衛兵として活動し、イスバールの側近も基本非公開の行動で、常にリレイズでは目立たないようにして来た影響でゲーム内の細かい事情には明るくない為、川上にその理由を尋ねると、川上は菊池がエスタークと対立した場合はそれ以上のバックが居る為の行動で、菊池は既にネクロマンサーに取り込まれていると考え、今回のアイリスの行動の主犯は『ネクロマンサー』に居ると説明する。


「こうなると、後はアイリス次第って事か。で、私達はどうする?、俺達も上杉を追ってカシミールへ向かうか?」


 今後のアイリスや菊池の行動を推測した川上に、小沢は今後の計画を確認する。

 川上は小沢が争いによる解決を望んでいないのは知っていたが、アイリスを止める必要もあると考え川上は暫く黙り込むと、既に次の行動を決めている木村は、黙り込んだ二人を見て口を開く。


「私はこのままイスバールに残り復興に全力を尽くすわ。この世界の何処かに必ず居る、同じ志を持つ者の為にね」

「そうか、しかしアイリス教ではない人間がこれ程までにキャラクターへ忠誠を誓うなんて聞いた事ないな。木村はどうしてイスバールにここまで肩入れするんだ?」

「まぁ、簡単に言えば借りを返しているだけ。私はイスバールの側近でもあったし」

「木村は、イスバール所属だったのか」

「表向きではなかったけどね。さっきも話したように、国王に借りがあってその義理で所属していただけよ。でも、ここはとても暖かい家族のような雰囲気で、ゲームとは言え、私にはイスバールは家族と同じだった」


 木村は『ゲームマスター』やイスバール国王との関係は省略しながら、二人に正式ではないがイスバールの側近として所属していた事を話す。

 イスバールは木村にとってゲーム内での家と一緒で、その暖かい環境に居心地の良さを覚えていた。


 それを話す木村を見て、小沢は彼女のイスバールに対する異常なまでの忠誠心に初めは疑問を抱いていたが、木村の話す表情を見て、それは忠誠心ではなく親戚に似た絆を小沢は感じ、これもゲーム内での一つの思想として納得できた。


「私も、出来ればアイリス教の教えに則り手助けをしたいのだが。川上、どう思う」

「お、おお・・・。確かに、今はイスバールの復権が先決だしな。ここを押さえて置けば、アイリスの援軍も遅れる筈だしな。木村さん、イスバール復興に俺達も強力するよ」

「ありがとう、人手は多い方がいいからね」


 木村の思想に感銘を覚えた小沢はイスバールの復興を手助けしたいと川上に話し、考えがまとまっていなかったのか話を振られ少し動揺を見せる川上は即座に内容を理解し、復興の強力を了承した。


 川上の中でまとまっていなかった一つの悩みは、アイリスとの戦争で上杉達にもしもがあった場合の心配で、この世界になりリレイズの死が現実世界の死と同等になった世界で戦争に参加するプレイヤーは、現実の死と言う自身が消滅してしまう危険が伴う。


 ならばサイレンスとして、上杉のバックアップとして戦争に参加するべきだが

 戦争参加経験が無い川上は人を殺した事が少ない。

 この世界に転移された直後に追われたアイリス兵を殺したのが久々であって、他のプレイヤーの殆どもモンスターとの戦闘経験はあるが、キャラクターやプレイヤーなどの人間を殺す事はリレイズでは稀であり、理由があるにせよ人間を殺める行為は、己の思想を壊し兼ねない恐怖が付きまとう。


 川上は、己の考えが完璧にまとまっていなかったが、小沢の考えも理解できる部分があり木村と共にイスバールの復興を始める。

 そのお陰でアイリスはロッテルダム経由での兵の輸送が困難になり、結果的にはカシミールとの開戦までの時間が延びた為、川上の考えは間違ってなくカサードで転職をする上杉達には結果的に都合の良い結果にはなったが、川上は今後起こりうるであろう戦争に一物の恐怖を感じていた。


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