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軌跡  作者: 小唄柘尾
8/9

はぁはぁはぁ

過去の事を水に流し、立ち直っていたレンがいた


ナナシから貰った一際大きい袋には包帯が大量に入ってあった



それを、レンは傷ついた拳・裸足の足・最後に腰に器用に巻いている最中だった



ぐいぐいぐいっと力強く巻きながら手・足・腰に巻きつける



巻き終わり、お腹も満足になり改めて自分の身なりを見渡す



薄茶色の布で出来た半袖と長ズボンを着て、両手首・足首には枷が着いている



枷は鎖で繋がれてるが自由に手と足は動かせ、自分が自由の身では無いことを象徴していた。多少の重さを感じるが普段の生活に支障をきたすもののレベルではないと感じられるくらいだ



死力を尽くす戦いとなれば、それが命とりに繋がるのはいうまでもない



包帯に巻かれた手と足だけが他の者たちとの唯一違う点といえるだろう



分かりやすく見ればこんな感じだろう




左手 :呪われた盾

胸 :奴隷の服

足 :奴隷のズボン

保護倶:包帯



(いまさらだが、なんとも見窄らしい格好だな。立派なものは盾だけだが、しかも、曰く付きの物だしな)



はぁっと溜め息を付き、いまのとこ腹だけが満たされてる中で、ミツキの言葉を考える



(二時間後。もう、そろそろだと思うんだけどな。ミツキの言い方だとここから出れるような言い方だったな)



冷静に現状の状態を考えながら時が経っていく



(俺が気を立て直すまでに一時間半だろ。包帯巻くのに二十分、考えんのに二十分だろ。ちょうど二時間だと思うんだがな。嫌、てかもう二時間越えてないか?)



自分を信じて、牢屋の格子状で出来た扉の出入り口の場所を押してみる



びくともせずに、どっしりと佇む扉がレンを負かす



それでも、負けじとうぅ〜っと声を微かに唸りながら柵を押し続けてみる


五分後には、はぁはぁはぁっと呼吸をしながら大の字で倒れるレンがいた


「ダメだ、びくともしねえ」


弱音を吐いて、呼吸を落ち着かせる



(もしかして、他に出口があるんじゃないか)



そう思い牢屋の中を探索する



汚いトイレ、それに寝具が一式、大きい棚、天井の角にはクモの巣が張ってあり、特別変わりがあって怪しい所は一つも見あたらなかった



自分の身を少し小汚くしただけの行動に溜め息を一つ



そして、やはり目線が行く先には鉄で出来た格子状の扉に目を向ける



その時に、ガランガランガランっと鐘が鳴る



それと、同時にガンガンガンっと扉が開く音がする



ゆっくりと扉を押すがやはり開かない



力を緩めゆっくり引くと一つ目の扉がガンっと鳴って開く



引いた扉の前には、もう一つの扉があり、それをゆっくり押して開く


牢屋の外に出ると同じ瞬間に引いた扉が閉まる



「出れた」



ポツリっと言葉が漏れてしまう



(先ほどまであんなに必死で出ようとしてたのに、鐘が鳴っただけで呆気なく出れた)



嬉しさが込み上げてくる



一生あそこから出れずに、人と触れ合えず永遠と魔物と戦う自分を先ほど少しの間に想像してしまったレンは嬉しくてたまらなかった



「こんにちは」



ここに来てから聞き慣れた声が耳に入ってくる



「こんにちは、ミツキ」


レンはミツキに挨拶を返す



そこで、ひたすら扉を叩く音が聞こえる



注視してみるとナナシたちが出て行った扉を開けようとしてるものが数人いた



「説明は後でしますので、私に付いて来て下さい」



「分かった」



短く返事を返しミツキの後ろに付いていく



ナナシたちが帰っていった場所とは逆の方向に歩き出し始めた



(あいつは部屋から出ないのか?)



ミツキの後を付けながら、牢屋から出ない者を見つける



そんなことを考えながら淡々と歩くミツキに付いていく



すると、ミツキは大きい両扉を勢い良く開き広い通路と等間隔に豆電球が天井に置かれ長々と続いている



「ここからは真っ直ぐ一本道ですので走りますがついて着て下さいね」



「いいんだが、どこに行くんだ?」



「着いたら教えますよ。百聞は一見にしかずですよ」



「分かった、じゃあどれくらいで着くんだ?」



「20分ぐらいですよ」



そう言い残すとミツキは颯爽と駆け出すのだった


ミツキの走る後ろについて行き走る



走り続けるとたまに十段ほどの階段があり一気に駆け上る



「はぁはぁはぁ」



走り続けて約十分レンは一人で走っていた



最初のうちはミツキについていけたが、五分も経つとそこにはミツキの姿はなかった



自分に合わせて併走してくれる事はなく、スタスタっと前に消えるように進んでいった



額から流れる汗を拭い、徐々に重苦しく体が感じ始める



肩で息をして、ジャラジャラっと音をたてる枷がやけに重たく感じながら走る



腕と足は鉛のように重くなるが、決して足は止めずに前を見つめる



そうして、走り続けると数名の人を追い越しながら少しずつ前に足を進める



(もう、ミツキは目的地に着いたんだろうか)



『二十分』ミツキが言った時間は既に過ぎながらもひた走るレンがいる



喉が乾き、体力も絶え絶えになり不安になっても足だけは止めずに前を進んできた



そして、やっと長い通路を走り抜けると光が上から差し込んでくる場所が目の前に見えて来る



そこに行けば、今度は長い階段があったが一番上にはしっかりと終わりを告げるかのように眩い光が入ってきてる場所に続いていた



通路を走っている間にも何度も短い階段があったが最後のは何段にも続き長い階段が出来上がっていた


重たい足に鞭をうちながらゆっくりとしかし着実に登る



疲労困憊の中、光を求めて無我夢中で階段をひたすら登る



体が重い、疲れた、苦しいなど弱音を吐かず目の前にある光を眼に映しながら一歩一歩足が上がってゆく



ようやく階段を昇りきり、多分ミツキが言っていた目的地にたどり着き倒れ込みながら光が差す場所に入っていく



ドサッと倒れ眼を瞑りながら仰向けに体勢を変えた



(今日は、ずっとこんな調子だな)



はぁはぁはぁっと荒い息を整えて、ゆっくり眼を開く



光る太陽と空いっぱいに広がる雲、青く晴れ渡る景色に眼を奪われた



(空ってこんなに綺麗だったんだな)



先ほどまでずっと地面の下をさ迷っていた者には、この空は一種の安らぎを与えてくれる



心地よい風がレンの頬を撫でる



(気持ちいいな)



「気持ちいいか」


「ああ」



聞き慣れた声が耳に聞こえる



「思っていたより早く着いたな」



「それは、どうも」



ゆっくり立ち上がりミツキの声の方を見る



レンが出てきた入り口の両隣に階段があり、そこの右側の階段にミツキが座っていた



「根性はあるみたいだな」



「男だからな」



「では、こちらに来て下さい」



そう言うとミツキは階段を昇っていく



レンもそれに黙って着いてゆく



階段の一番上に着くとミツキが柵に手を起きながら木で出来た板にある横に広がる穴に目を覗かせていた



レンも同じように、穴に目を向ける



そこには、今日自分が戦っていた闘技場が見えた


いまも誰かが、魔物と戦っているのが見えた



そこで、レンの肩を叩くミツキがいた



そして、すぐさまレンは問いかける



「ここは、いったい何なんだ」



そして、ミツキが答えた


「ようこそプレーヌス・コロシアム・裏・闘技場へ」



私たちは修練場と言っていますよ。そう、ミツキは付け加えるのだった

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