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第七章

 夜が開けた。俺の答えは既に出掛かっている。



そんな中、携帯に電話が掛かってきた。



着信相手は、和真だ。俺はその電話を取る



「何だよ?」



『…ふむ、色々と悩んでいる様だね。少年』



あいつの口調は何時もの様に軽々しい物ではなかった



『タイムリミットは今日だ。それから、少年を迷わす様で悪いが一つ言っておこう。』



和真の真剣な声に俺は耳を傾ける



『ミカの事は完全に君に任せるよ。』



俺はその一言に力なく呟く



「いいのかよ?家族みたいなもんなんだろ?」



だからさ、と言い和真は続ける



『俺が作りたいのは機械じゃない、人なんだ。だが、それを理解しようって奴に今まで出会った事が無かった、だが少年はミカを人の様に思って接してくれているだろう?』



「それは」



俺の呟きを遮り和真は言葉を続ける



『ミカが外に出て始めて出会った存在が少年の様な確率は僕の中では天文学的な数値なんだよ。だから少年、君に…任せる。』



そう言うと和真は電話をまた一方的に切った。最後の一日が、始まった。

自分でも認めたくない終わらせたくない…しかし現実は残酷で『非日常』は終わりを迎える日が、始まった…






 今日もギターを背負い歩いていくミカの後を追い俺は歩く。



そんな中で急にミカが立ち止まった。



そこは全ての始まりの場所だった。



「覚えているよな、ミカと日々之が始めて出会った場所だ。」



そう言いミカは自販機を見て笑う



「そうだな、で、何で此処に来たんだ?」



俺の問いに俯きながらミカは呟く



「自分の体の事だミカが一番よく分っている」



その言葉を聞き俺は視線をミカからそらす



「今日が最後の一日だから」



それだけを言いミカは歩き出した。俺は力なくそんなミカの後を追う。



 電化製品売り場、カラオケ、ゲームセンター、スタジオとミカは思い出す様に今日まで立ち寄った場所を歩いていく。そして…。






 「なぁ、日々之」



街中を歩きながら唐突にミカが口を開いた。



「何だ?」



「日々之は夢は呪いみたいだって言ってたよな?」



「あぁ。」



ミカの問いに俺は頷く



「今でも、か?」



立ち止まったミカの問いに俺は空を見上げながら答える。



「違う、かな」



俺は、近くにあったベンチに座り言葉を続ける






「確かに前まではそう思ってた。だけど今は感謝してる。渉達に会えたし、時々すっごく悩んだりするけど悩んだ分だけ成長してきた気がする。それに」



俺はミカに視線を向けて笑う



「面白い非日常にも遭遇したしな」



俺は再び視線を空に向け言葉を続ける



「俺は夢っていうのは嫌な事を棚に上げて目の前の事から逃げる事だと思っていた、

でも今は、一生を掛けても叶えたい大切なものだって思える。」



そう言うと俺にミカは背負っていたギターを手渡す。俺はそれを黙って受け取り、弦に手を伸ばし、そして…






 「相変わらず、ミカは敵いそうにないな。」



そう言い苦笑するミカの背には昨日から背負っていたギターケースは無く、今は俺の背にある。



先を歩くミカを見ながら俺は掛かってきた携帯を取り出し出る



『何だ、少年…答え出したのかい?』



あの軽い口調が返ってきた。



「あぁ」



『そうかい、少年は答えを出さないと思っていたんだけどね。』



失敬なだと思い沈黙すると



『あぁ、怒ったかい?悪いね。…色々と迷惑をかけたね。』



それだけを言うと相変わらず一方的に切られた。



俺は溜息を吐くと携帯をしまう。



未夏の方を見ると、あいつも立ち止まり、空を見上げていた







「ミカは、な…沢山の人に色々と迷惑を掛けた。脱走なんか…しなかった方がよかったのかな。」



弱弱しく話すミカに俺は答える



「否定する事も悲しむ事も無いだろ、脱走したから俺はお前に会えた…そこで得た思い出も感情も大切な物だ。否定なんかするな、俺は感謝してる。」



ゲームの受け売りだけどな、と苦笑する俺にミカはこちらを向かず一言呟いた



「ありがとう」



ミカはそのままポツリと呟く



「ミカも日々之には感謝している日々之のお陰でミカには新しい夢が出来た」



「どんな?」



俺が尋ねるとミカは振り返る



「生きていたい、それが今のミカの夢だ。」



笑うミカの背後から和真が歩いてくるが、公園の出入り口で立ち止まる。あいつは俺に任せると言った。



だから、俺は言わなくちゃいけないんだ。





俺は決めたんだ…こいつの、ミカの為にこの『非日常』を自分自身で幕を引かせる事を…






「…お別れだな、ミカ。」



「あぁ、日々之。ミカは、楽しかった、本当に感謝してる。」



そう言うとミカは和真の方に歩き出した。



俺はそんなミカの背に最後かもしれない言葉を投げる。



「……また!…また、会おうぜ。また…何時か。」



その言葉にミカは振り返り俺の方を見ると笑った



「そうだな…また…何時か、な…『霧人』。」



頷きながらそう言い今度こそ歩いていくミカを俺は見送った。


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