わたしだけの縁
掲載日:2026/09/05
出張から戻ったあなたは人が変わったように穏やかになった。
嘘をつかない。暴言を吐かない、暴れない。
夜は早く帰ってくるようになった。営業成績は下がったと人づてに聞いた。でも、そんなことはどうだっていい。
わたしのあなた。わたしだけのあなた。
穏やかな日常、これだけがわたしの欲していたもの。だから願った。あなたの悪縁のすべてを振りほどいてと。
あなたはずっとここにいる。出張と偽って愛人と旅行に行くようなことは、ない。
長いリハビリを経て戻ってきたあなたが本当は別人であったとしても構わない。
偽物だったのはかつてのあなた。今ここにいるのは過去すべての記憶を失い、彼女のことも忘れたあなた。
第45回 毎月300字小説企画、お題は「偽」でした。




