第3章 友情
その一歩が、運命を分ける。
進むか、止まるか。
救うか、見捨てるか。
選ばなければならない時は、突然やってくる。
これは、覚悟を試される物語。
燃え盛る炎の剣が、目の前の大きな岩を――
一刀両断した。
次の瞬間、教室に歓声が広がる。
「おおっ!」
「すげぇ……!」
剣は少し戸惑ったように周囲を見渡し、頬を赤く染めた。
「あまり褒められたことがないが……悪くねぇな」
呪角が腕を組みながらうなずく。
「おー、よくやったな。この調子で、全員自分の妖体術を使って岩を破壊してくれ」
⸻
四十分後。
授業は終了し、生徒たちはそれぞれ教室へと戻っていく。
「今日はこれで終了だ。最近、不審者被害が多発しているらしい。気をつけて帰るように」
その一言が、妙に引っかかった。
⸻
帰り道。
家が近い火龍と剣は、並んで歩いていた。
「それにしても、さっきの技すごかったな。どこで学んだの?」
火龍が無邪気に尋ねる。
剣は少しだけ視線を落とした。
「……親父だ」
短い言葉。
だが、その目には影が差していた。
「へぇ、どんな人?今何してるの?」
何も知らない火龍は、軽い調子で聞く。
次の瞬間。
「……死んだ」
空気が凍った。
⸻
――ドンッ!!
突如、目の前のビルが爆発する。
衝撃音とともに、黒煙が空へと立ち上った。
「な……っ」
二人は言葉を失う。
妖忍師を目指しているとはいえ、まだ高校に入ったばかりだ。
現実の“事件”を前に、体が動かない。
周囲に大人の気配はない。
――その時。
「ここで、目の前の人が死ぬなんて……そんなの、あっていいわけないだろ!」
火龍が叫ぶ。
「お、おい――!」
制止の声も届かず、火龍はすでにビルの中へ駆け込んでいた。
⸻
「くそ……なんでだよ……!」
剣はその場に立ち尽くす。
「なんで足が動かねぇ……!」
拳を握る。だが、震えが止まらない。
「……俺、ビビってんのか……?」
自分の弱さに気づいた瞬間、胸の奥が冷たくなる。
⸻
一方、火龍。
崩れかけた階段を駆け上がる。
「爆発は……八階」
息が荒くなる。
「被害者は何人だ……?敵は……?」
考えるたびに、足が重くなる。
「……違う!」
火龍は首を振った。
「考えるな……進め!」
⸻
そして、八階。
そこには――
敵が二人。
そして、倒れている人間が三人。
「……一対二、か」
火龍は拳を握る。
妖力を込める。
「体術――“炎”」
熱が、拳に宿る。
「火炎爆誕!」
渾身の一撃が敵の急所に叩き込まれ、相手は大きく吹き飛んだ。
「あと一人――」
そう思った瞬間。
足首を、強く掴まれる。
「っ!?」
さっき倒したはずの敵が、執念でしがみついていた。
「このガキ……!」
黒い気配が広がる。
「体術――“闇” ダークバインド」
「か、体が……!」
動かない。
もう一人の敵が、ゆっくりと近づく。
「抑えてろよ。体術――“空気” 送撃」
見えない圧力が迫る。
――その時。
ガラスを突き破り、炎をまとった剣が飛び込んできた。
「なっ!?」
敵が振り向く。
「遅れて悪ぃな」
そこに立っていたのは――剣だった。
その目に、迷いはない。
「体術――“刀” 悪凶殿雷!」
雷のような一閃。
二人の敵を、一瞬で切り伏せる。
――だが、致命傷は避けている。
敵はその場に崩れ落ち、意識を失った。
⸻
静寂。
剣は火龍の方へ歩み寄る。
「……遅れてすまねぇ」
そして、少しだけ笑った。
「それと……勇気、もらった」
火龍も、息を整えながら笑い返す。
⸻
この日。
二人の間に、確かな何かが生まれた。
第3章を読んでいただき、ありがとうございました。
初めての実戦の中で、火龍と剣、それぞれの弱さと強さが見えてきたと思います。
恐怖に立ち止まるか、それでも前に進むのか――その選択が、二人の関係を大きく変えました。
ここから物語はさらに加速していきます。
ぜひ、次章も見届けてください。




