第2章 ついに始まる学校生活
出会いは、最悪だった。
刃を向けられ、すれ違い、
それでも同じ場所に辿り着く。
偶然か、それとも――必然か。
これは、桜木火龍と薬師剣、
二人の関係が動き出す物語である。
登場人物
・薬師 剣
・楽璃 音葉
・呪角 岳
・桜木 火龍
「……何だと?」と剣は目を見開いた。振り抜いたはずの刀は空を切り、気づけば地面に突き刺さっている。そこに火龍の姿はなかった。
次の瞬間、少し離れた場所で火龍が小さな子供を抱えているのが見えた。危険から遠ざけるようにそっと地面へ降ろす。その頬には、うっすらと赤い線が走っていた。さっきの一撃でできた傷だ。
それを見た瞬間、剣の頭から熱が引いていく。
「わ、悪い……」
震えた声だった。
「ごめん。俺も急いでてさ。高校、遅れそうなんだ」
火龍はそう言って走り出そうとする。
「ま、待ってくれ!高校ってどこだ?」
「妖忍高等専門学校」
一瞬の間。
「……俺もだ!」
剣の表情が一気に明るくなる。
「なら早く行こうよ!遅れる!」
「お、おう!」
学校に到着しなければならない時刻は八時三十分。そして今は八時十五分。残り十五分、全力で走らなければ間に合わない距離だ。二人は無言で駆け出した。
十三分後、息を切らしながらも校門をくぐる。
「はぁ……ギリギリ……」
急いでクラス発表の紙を見る。桜木火龍は一年A組。そして剣も同じく一年A組だった。
「すげぇ偶然だな……」
残り一分。二人は顔を見合わせると同時に教室へ駆け込んだ。
着席と同時にチャイムが鳴る。静まり返る教室に担任が入ってきた。
「おはようございます。1年A組の担任、そして体育と技術を担当する呪角 岳だ。よろしく!」
見た目は穏やかだが、どこか熱を感じさせる。
「まずは自己紹介から始める。最初は……楽璃」
教室に緊張が走る。
「楽璃 音葉です。誕生日は二月八日。妖体術は“音”。よろしくお願いします」
「はい、よろしく。じゃあ次、薬師」
「はい……薬師 剣。誕生日は二月四日。妖体術は刀と炎。よろしく」
「いいね。じゃあ次、桜木」
火龍は一瞬だけ先生に目で訴えたが、当然通じない。
「さ、桜木 火龍です!誕生日は九月二十四日。妖体術は炎、迅雷、風です。よろしくお願いします!」
「お、三性質使いか。今どき珍しいな。よろしく!」
教室がざわつく。「マジかよ」「すげぇ……」その声に、火龍の緊張はふっとほどけた。
三十分後、全員の自己紹介が終わる。
「次の二時間目は妖体術のお披露目だ。体育着に着替えてこい」
休み時間、剣は火龍のもとへ向かった。
「あ、朝は……悪かった」
曇った声だった。
「ああ、全然気にしてないって!それよりさ、次の妖体術、楽しみじゃね?」
火龍は笑う。その一言で剣の胸のつかえが少し軽くなった。
二時間目。
「一人ずつ攻撃系の妖体術でこの岩を破壊してもらう」
呪角の指す先には大きな岩があった。
「最初は薬師。やってみろ」
「はい!」
剣の目が変わる。鋭く研ぎ澄まされた視線で岩を見据える。
そして踏み込んだ。
「炎剣――爆炎想操!」
燃え上がる炎が刀を包み、その一撃が空間ごと斬り裂くように振り抜かれた。
第2章を読んでいただき、ありがとうございました。
最悪の出会いから始まった火龍と剣ですが、少しだけ距離が縮まった気がします。
そして始まった妖体術のお披露目。
それぞれの実力が、ここから明らかになっていきます。
次章もぜひ、見届けてください。




