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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

その予言書曰く——。

掲載日:2026/01/30

仕事帰り、私は自販機の前に落ちていた予言書を拾った。

どうせ子供のいたずらだと思いはしたんだけど、無性に気になって紙袋にナイナイした後、そのまま自宅に持ち帰ってしまった。


早速その灰色の本を開く。

内心、異世界からの招待とかだったらいいなという願いも込めて。


『予言1・この本を拾う』


「舐めてんのか」


だってそうでしょ。

拾ったから見てるのに。


多少イラつきつつ、次のページを見る。


『予言2・あなたは今、これを読んでいる。※読んでいない場合、この予言は保留とする』


「なるほどな」


別に納得したわけではない。

人は理解できないものに対しても、反射的に相槌を打つ生き物なのだ。


特に空腹時。


ページをめくる。


『予言3・部屋にカップラーメンがある』


「……こういうので良いんだよ。予言ってのはこうでないとな」


確かに、8畳の薄汚い部屋の端にはカップラーメンが置いてある。

一昨日買った、期間限定のやつだ。


そういえば、まだ何も食べていない。

会社から帰ってきて、着替えもせずにこの予言書(笑)で時間を浪費している。


腹の虫はひとまず無視して、再びページをめくった。


『予言4・あなたは今、続きを読むかどうかで一瞬だけ迷う』


「……」


事実だったので何も言えなかった。

こう言うのが何気に一番くる。


だって当たってるから!


『予言5・あなたはこれにツッコミを入れるが、相手は改善しない』


「改善しろよ」


もちろん、改善される気配は無く、インクはインクのままだ。

これまでと違い、一文の下にまだ文字があるのに気付く。


『補足・腹減ってんじゃね?』


「あれ? こいつ急に口調変えてきやがったな…?」


唐突なタメ口に、つい怯む。

そんなにカップラーメンを食わせたいのなら良いだろう、乗ってやる。


プラスチックの膜のような包みを剥ぎ、お湯を沸かせて中に注ぐ。

俺のこだわりは、出来上がりの3分より早めに食べ始める、というものだ。


割り箸を用意して、また本の前に腰を下ろす。

そして戻ってくるなりページを捲る。


正直もう面倒臭くなってきた。


『予言6・あなたは"あれ?"と思う』


先ほどの自分の呟きが、今になって効いてくる。


「これは予言…なのか? 」


そしてパラリ。


『予言7・来月社内の気になる女性と交際を始める』


「えっ」


まさか……吹雪さん!?

憧れの、マドンナとか言われちゃってるあの?


喜びで少し舞い上がったが、このページにも補足が書かれていた。


『補足・あなたの友人の大伴君が、ね(笑)』


おーけー。

お前を燃やして大伴も燃やす。


怒り半分、無言でページをめくる。


『予言8・そろそろ飽きてきた』


「おっしゃる通りで」


『予言9・この本は信用に値しないと思っている』

『補足・大伴君がパッとしない人物だからでしょ? あ、悔しいんだぁ』


「こいつ…」


もうなんだか嫌になってきて、逆に「最後のページには何と書いているんだろう」と気になった。

一度本を閉じ、一番後ろのページを開く。


『あなたが知りたいことは31ページ目にあるのに』


「……大人しく読むか」


気が付けば、俺は無心でページをめくっていた。


あれ?俺は何が知りたいんだ?


そんなことが頭をよぎる。

どうせ、碌なことは書かれてない。

大伴と吹雪さんのことも、どうせデタラメ。


でも——なんか、気になる。


『予言32・あなたのカップラーメンは伸びた』


「あっ」


いや、驚きはしたが、これは32ページ目だ。


俺が本当に知りたいこと……これを誰が書いたのか、とかだろうか。

もしかしたら別のことかもしれない。

だって、どこの誰が書いたとしても、今の俺より暇なやつ、というだけだから。


そっと、左の白紙ページをめくる。


『予言31・あなたはこれを信じていないだろうから、答えを言う』


「んっ…」


『補足・予言はもれなく当たるよ。残念だけど、大伴君の件もね』


「はぁーっ」


深いため息と共に、胸の内から何かが湧き上がる。


「これ、一つくらいは大災害の予言とかあるんじゃないか?」


正直、信用はしていない。

けど万が一、自分が巻き込まれるような大事が起これば、きっと後悔する。


『予言35・靴が濡れる前に位置をずらすが吉』


ずらすが吉、じゃねえよ。

予言というより占いじゃねーか。


まぁずらすけどな?

仕事用の革靴1組しかないからずらすけどな?


『予言36・あなたはこれを誰かに話す勇気がない』


何で突然のディス?

遠回しに話すなって言ってる…?


『予言37・鳥肌立つと思うよ』


こいつ、ついに我が出てきたぞ。

てか何?

鳥肌?


こちらとしては、期間限定のカップラーメンをダメにされた分、もう読むのをやめられないというか。


『予言38・大伴君は君を消そうとしている』


はい?

こいつ、さっきから大伴への批判・偏見が酷いな。


『予言38・大伴君は君を消そうとしている』

『予言38・大伴君は君を消そうとしている』


何枚もページをめくるが、予言は38から一向に進まない。

気分の悪い脂汗が出てくる。


『予言38・・・』


もうやめよう。

後悔したっていい、もう見たくない。


俺は部屋の電気を付けてパン、と音を立てて本を閉じ、床に叩きつけた。


だが本は17ページを開いた。


『予言17・あなたは部屋の電気を付ける』

『補足・揶揄っただけだってば(笑) ごめんって。仲直りしよ?』


「信用できねー」


見る気は無かったのだが、どうしても偶然開いたページが気になって覗き込んでしまった。


『補足・私女だよ』


「そうやってまた……」


『予言18・明日の天気は雨』


……余計怖いだろうが。

さっきの大伴のくだりはどうなったんだよ。


『予言19・それが原因で雨漏れする』


だから靴をずらさせたのか。


『補足・カップ麺食べないの?』


それはもう補足じゃないって。

さっきまでの軽い雰囲気を返してほしい。


『予言20・あなたは異世界ハーレムに期待している』


そうだが?

欲望を曝け出したいが?

というか予言じゃないなそれ。


『補足・叶うよ』


あっそう。

ありがとうね。


『補足・何かが突っかかっている?』


そうだね。

怖いよ。

一人暮らしだし。


『補足・うんち』


女の子がそんなはしたない事を言わないでください。

つい、ぶりっ子ってワード思い出しちゃったよ。


『補足・さっき鳥肌立ったでしょ』


あれはお前の言う通り。

だから、当たってるのが一番効くんだって。

そして怖いって。

大伴の件が不安でさ。


『補足・吹雪ちゃんは君のことが気になってる』


待って。

それ全部が繋がっちゃうから。








「浜辺」


背後から声が聞こえた。

でも、来るのは知ってたし怖くは無かった。


「大伴……」


奴の右手にはナイフが強く、強く握られている。


「吹雪先輩は、僕のだぁ……ッ!」


顔がよく見えない。

けど——。


俺は、未来への希望を信じて、ページを何枚かめくった。



『予言39・あなたはハーレムを築く』

『補足・これは、残念じゃないでしょ?』


少し気が楽になった。

痛かったか、痛くなかったかも分からないけど。

身体に縦長の穴がぽっかりと開いた。

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