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寄生樹  作者: hiro0720
3/10

家政婦がきました

小学生の作文以下のレベルですが、よろしくお願いします

翌朝、午前六時。

スマホのアラームが鳴り響き、ヒロトは目を覚ました。布団から這い出すと、まずはトイレへ直行し用を足す。


その後、電気ケトルで湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れる。座椅子に腰を下ろし、テレビをつけると朝のニュース番組が流れていた。

《名脇役として活躍した俳優、死去》

「……また一人、消えたか」

ニュースを一通り見終えると、ヒロトは重い腰を上げてキッチンへ向かった。


冷蔵庫を開ける。中身はスカスカ。

「昨日スーパーで買い物しときゃよかったな……」

結局、卵を一個取り出し、炊飯器からご飯をよそって卵かけご飯を用意。醤油を垂らし、冷蔵庫から取り出したお茶と一緒にテーブルへ置く。


「そういえば……」

昨日の出来事をようやく思い出す。押し入れを開けると、畳まれた布団の上に子猫が丸まって眠っていた。


ヒロトは指先で軽くつつく。

「おい、起きろ猫」

「んー……あぁ、ヒロト? おはよう」

「おはようじゃねえよ。さっさとそこから降りろ。そして部屋から出てけ」

「そんなつれないこと言わないでよ。外で寝ろというの?私これでも元・女神なんだから」

「知らねえよ。ここに居座られると迷惑なんだよ」

「大丈夫よ。ご飯なら心配しなくていいの。親切な魚屋さんが魚を分けてくれるんだから」


時計を見た猫が「あっ、もう行かなくちゃ」と押し入れから飛び降り、軽快に窓枠へジャンプ。そのまま器用に窓を開けて外へ飛び出していった。

「……なんなんだよ、あの猫は」


ヒロトはため息をつきつつ卵かけご飯をかき込み、お茶を飲み干す。着替えを済ませ、建設現場へ向かった。


朝礼を終え、重い資材を次々と運び込む。二時間が過ぎ、休憩時間。ヒロトは自販機で缶コーヒーを買い、空いたスペースに腰を下ろした。


「……自由に生きるか」

昨日、猫に言われた言葉が頭をよぎる。

――確かに自分の力を使えば、医者まがいの真似だってできる。薬を作って売れば巨万の富も夢じゃない。

だが、決断できずにいた。


缶コーヒーを口に含むと、苦味と共に遠い記憶が蘇る。

――何千年も昔、ただの樹だった頃。

剣を振るい倒れていく兵士。病に伏しても家族を気遣う者。泣きながら明日を夢見る子供。

「……不思議な生き物だと思った」

弱くて脆くて、けれど必死に生きる人間たちに惹かれた。

「自由に生きる……か」

ヒロトは缶を飲み干し、再び作業に戻った。


―――


夕方。仕事を終えたヒロトはスーパーに立ち寄り、明日の分まで食材を買い込む。ペットフード売り場の前で一瞬迷い、最安の猫用餌をカゴに入れ、最後に弁当とビールを放り込む。


買い物袋をぶら下げ帰宅すると、玄関でありえない光景が待っていた。

「おかえりなさいませ、山の神様」


若い女が深々と頭を下げている。よく見れば二十代前半。もちろん、ヒロトにそんな知り合いは一人もいない。

呆然と立ち尽くすヒロトの耳に、奥から聞き慣れた声が響く。

「あっ、ヒロト。おかえり」


子猫がトコトコと現れた瞬間、ヒロトは反射的に首根っこを掴み、外へ連れ出した。

「いってぇ! 乱暴しないでよ」

「説明しろ。あの女は誰だ」

「誰だって 家政婦よ。私たちのお世話係」

「はぁ!? 勝手に決めんな!」


猫と押し問答していると、近所の老人がぽかんと口を開けて見ていた。ヒロトは慌てて猫を連れて部屋に戻り、事情を問いただす。


猫の説明はこうだ。

――宗教の勧誘に来た若い女性を追い返そうとしたら、猫が喋ったことで彼女は土下座『是非、貴方様と山の神様のお世話をさせて下さい』と涙ながらに懇願され、勢いで「お世話係に任命」してしまった、とのこと。


ヒロトは青筋を浮かべながら言う。

「何が任命だ。お前、勝手すぎんだろ。大体、山の神ってなんだよ」

「いいじゃない。雰囲気出るでしょ? 山の神」

「意味わかんねえよ……」


仕方なくヒロトは女性に話を聞くことにした。名前は木内祥子。両親を早くに亡くし、親戚を転々。孤独の末に宗教に取り込まれ、搾取され続けてきたらしい。


祥子は涙ながらに頭を下げる。

「どうか、ここで働かせてください。家事でも何でもいたします」

ヒロトは頭を抱える。

「うちは狭いアパートだし、家政婦なんて……」

「いいじゃない。雇ってあげましょうよ」

子猫が横から口を挟む。

「お前また勝手に……っ。……はあ、もう好きにしろ」


こうして、ヒロトのアパートに新たな同居人――訳あり家政婦が加わることになった。


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