子猫との出会い
相変わらず、小学生の作文以下のレベルです
午後五時。夕日がビルの窓を茜色に染め始める頃、建設中の現場はそろそろ片付けの時間だった。
「おい、ヒロト、そこの鉄筋も頼むぞ」
現場監督の声に、ヒロトは大きく「はい!」と返事をする。
最後のひと往復を終え、やっと仕事を終えたヒロトは、帰り支度を整えて現場を後にした。
帰り道、スーパーに立ち寄り、弁当とビールを購入する。今日は唐揚げ入りのやつにしてみた。
スーパーを出て住宅街を歩いていると、ふと小さな公園が目に入る。普段なら気にも留めない場所だが、その日は何かが違った。
「にゃ~ん」
どこからともなく、可愛い声が聞こえた。
足を止めて見渡すと、公園の入り口に一匹の子猫が立っていた。ヒロトをじっと見つめている。
その猫はトコトコと歩いてきて、ヒロトの靴をちょんと引っ掻いた。
微笑ましく思ったヒロトは、思わず子猫を抱き上げて顔を近づけた。
すると――
「グッハッハッハ!お前を蝋人形にしてやろうかニャン!」
あまりの衝撃に、ヒロトは反射で子猫を片手で思いっきり投げ飛ばした。
「な、何だ今の……!」
気味が悪くなり、慌てて公園から離れるヒロト。
後ろから声が追いかけてきた。
「待てニャン!こんな可愛い子猫を投げ飛ばすなんて、どういう了見ニャン!」
振り返ると、さっきの子猫が悠然と追いかけてきていた。
「ぎゃー!つ、着いてくるな!」
ヒロトは叫ぶ。
「そんなに怯えることないニャン。私は無害な子猫ニャンだよ?」
「そんなわけあるかよ……!しかも、何で猫が喋ってるんだ!」
ヒロトのツッコミに、子猫は軽く鼻で笑った。
「大の男がそんな細かいこと気にするんじゃないニャン」
「どう考えても気にするだろ、普通!」
子猫はしつこくついてくる。ヒロトは仕方なく全力で逃げ、数分後、古びたアパートにたどり着いた。
後ろを振り返ると、子猫の姿はもうなかった。
「よし……撒いたか」とつぶやき、鍵を開け中へ入る。
冷蔵庫からお茶を取り出し、一気に飲み干す。
テーブルに弁当とビールを置き、テレビをつけ、座椅子にドサッと座った。ニュース番組が淡々と流れる。
煽り運転で捕まった男、政治家の横領……どうでもいい話ばかりだ。
ふと、さっきの子猫を思い出す。
「何だったんだ、あの猫……。はあ、今日は余計に疲れたな」
その瞬間、部屋に高い声が響いた。
「嘘つけ。お前のような化け物が、この程度で疲れるはずないだろ」
驚き振り返ると、子猫が畳の上にちょこんと座っていた。
「ぎゃー!て、テメー、何でここにいる?どうやって入ってきやがった?」
子猫はのんびりした口調で答える。
「台所の上の窓、開いてたぞ。いかんなあー、不用心だぞ」
「だからって勝手に入ってくるなよ……化け物ってのはお前の方だろ!」
「はあ……しらばっくれる気か?お前の正体なんぞ、私は数億年前から知ってるんだよ」
「え……何だと?」
子猫は続ける。
「あんたは寄生植物だ。数億年前に生まれ、千年前には戦で瀕死だった下級武士に寄生した」
ヒロトは動揺を隠せない。
「な、なんでそんなこと分かるんだ?」
「お前は特殊だからね。自我を持つ植物が現れるのは数十億年に一度あるかないか。だから私はずっと監視してきたんだ。女神だった時も、魂になってからも」
「女神?魂?……何の話だ?」
「私はかつて天界に君臨していた女神さ。今はこんな姿だけどね」
沈黙の後、子猫は口を開いた。
「お前は危険な存在だ。その気になれば人間界を支配できる。でも……権力者に従い、僧侶として修行し、建設現場で資材運びか。自由に生きられるお前が、なんでこんな生活?」
ヒロトは肩をすくめる。
「うるせえ。俺には俺なりの美学がある」
「美学……か、よく分からん」
子猫はため息をつき、押し入れの上段に飛び乗る。
「私は今、すごく眠いから、そこの布団で寝るニャン」
ヒロトは慌ててツッコミを入れる。
「おい、勝手に住み着くな!」
子猫はすやすや眠るだけ。ヒロトはため息をつき、弁当に箸を伸ばした。