プロローグ
完全に小学生の作文レベルです。試しに書いてみたまでです
そこは――天界と呼ばれる場所だった。
果てしない白い雲海の上に浮かぶ、純白の巨城。
だがその神聖な光景は、突如押し寄せた闇の群れによって一変する。
数十万の怪物が、黒雲のように天を覆い尽くしていた。
中央には、一際強大な魔力を纏った男が立っている。
「来たか……」
副官ぺぺは唇を噛み、怪物たちを睨みつける。
「天使たち! 敵を迎え撃て! 一体残らず殲滅せよ!」
号令と共に、天使たちは輝く武具を手に舞い上がった。だが――。
怪物の群れは圧倒的だった。数の暴力、そして凄まじい闇の魔力。天使たちは次第に押され、光はじわじわと呑み込まれていく。
ぺぺ自身も首謀者の男と剣を交えていたが、力の差は歴然だった。男はまだ本気を出していない。それでも、ぺぺは完全に圧倒されていた。
「……このままでは……天界が……!」
絶望の色が濃くなったその時、ぺぺの頭に声が響く。
念話――女神からの呼びかけだった。
『ぺぺよ。天使たちを下がらせなさい。あなたもです。ここからは、私がやります』
「なりません! ヴィクトリア様! もし貴方に何かあれば……人間界を守る結界が――」
『黙りなさい、ぺぺ。私が、こんな有象無象に負けるはずがないでしょう。これは命令です。天使たちと共に下がりなさい』
その声は揺るぎなく、威厳に満ちていた。
ぺぺは歯を食いしばりながらも、従うしかなかった。
天使たちは次々と転移魔法を展開し、光の残滓を残して消えていく。
最後にぺぺは渾身の一撃を男へ叩き込み、転移で戦場を離れた。
怪物の軍勢が巨城へ迫ろうとした瞬間――。
「さて……」
白銀の光に包まれた女神ヴィクトリアが、群れの前に立ちはだかっていた。
次の瞬間、光の矛が天を裂く。
数十万の怪物たちは悲鳴を上げる間もなく貫かれ、塵と化して消えていった。
――僅か数秒の出来事だった。
残されたのは、首謀者ただ一人。
胸を貫かれたはずのその男は、血を流しながらも邪悪な魔力で傷を塞ぎ、笑った。
「フッフッフ……さすがは女神だ。しかし――貴様はここで終わる。闇は必ず、この天界も人間界も飲み込む」
「黙れ、外道!」
再び光の矛が放たれる。しかし男は剣でそれを弾き返した。
「な……!」
ヴィクトリアの表情がわずかに揺らぐ。
男は冷たい声で告げる。
「先に名乗っておこう。我が名は――ダークネス。闇に生きる者だ」
「知らないわ、そんな名前」
ヴィクトリアは即座に光の剣を顕現させ、瞬きの間にダークネスの懐へ踏み込んだ。剣と剣が交わり、轟音が天界全体を震わせる。
――女神と闇の化身による死闘が始まった。
戦いは三日三晩続いた。
そして――決着の時が訪れる。
ヴィクトリアの剣が深々とダークネスの腹に突き刺さり、光が彼を包み込む。
「ぐ……ククク……ここまでか。だが楽しかったぞ、女神ヴィクトリア。また会おう」
最後まで笑みを浮かべたまま、ダークネスは光の中に消滅した。
「二度とごめんよ……外道」
ヴィクトリアは剣を手放し、地上へ降り立つ。
「やった! 女神様が勝った!」
戦場を遠くから見守っていた天使たちとぺぺは歓喜の声を上げた。
だが――。
ヴィクトリアは地に降り立った直後、前のめりに崩れ落ちる。
「ヴィクトリア様!」
駆け寄るぺぺに、女神は微笑みを返す。
「どうやら……ここまでのようです。あとは……頼みましたよ……ぺぺ」
そのまま目を閉じ、静かに息を引き取った。
天使たちは女神の亡骸の前に膝をつき、声を上げて泣き崩れた。
やがて――人間界を守っていた結界は消え失せ、女神の魂は光となり地上へ舞い降りていく。
何十年、何百年、何千年……。
女神の魂は彷徨い続け、巡り巡って――やがて、一匹の子猫へと宿る。
だがそのことを知る者は、誰一人いなかった。