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ポンコツ怪盗団に転生したけど、敵のフリして勇者育ててます  作者: 振り米
二章『祝福なき婚礼、誓いの怪盗』
15/63

15話『深夜零時、塔を目指して』

 夜の王城。


 石造りの巨体が静かに月明かりを浴び、重厚な静寂の中で呼吸しているようだった。

 その周囲では、帝国近衛兵たちが硬い足取りで周囲を巡回している。定期的に聞こえる革靴の音。金属製の鎧が擦れるわずかな音。

 一糸乱れぬ動きには、訓練と緊張の匂いがあった。と同時に──


(……そろそろ交代のタイミングだな)


 俺はその足音の“周期”を読み取りながら、目の前の影の中でじっと身を潜める。

 外から見ればただの衛兵の動きだが、目を凝らせば、わずかな緩みや油断がある。完璧に見える動きの中にも、たった一瞬だけ隙が生まれるのだ。

 その隙を俺達は逃さない。


 城内では、さらに張り詰めた空気が支配していた。

 石造りの回廊は冷たく重く、天井は高く、蝋燭の炎がゆらゆらと揺れるたびに、タペストリーに映る影が微かにうごめく。

 まるで何かが潜んでいるのではないかと錯覚させるような不穏さ。


 見張り台灯が照らす橙色の光と、黒く沈む影が交錯する幻想的な光景。

 その静謐の中に、俺たちモノクローム怪盗団の、華麗なる侵入作戦が開始された。


 俺のスキル──《ファントム・レイヤー》。

 姿を薄め、音を消す。それはあくまで「完全な透明化」ではないが、一定の条件下では人の目にも耳にも映らないという、いわば忍者的チート。


 俺はそれを最大限に活用し、警備のタイミングに合わせて影から影へと走る。

 外壁のくぼみに張り付き、見張りが過ぎた直後に、ひらりと外廊下に飛び降り──着地と同時に疾風のように回廊内へと身を滑り込ませた。


「はい、入ったぞ。……お前ら、今だ」


 俺の無言の合図に続き、続いて動いたのはクロだ。

 ぴょこんと跳ねるように壁から姿を現す。

 その手には、小さなポーチ。その中から取り出されたのは──サイズの割に明らかにヤバそうな魔道具と、数本の怪しい小瓶。


「よーし、いっちょやるかあ……にゃはっ!」


 クロの笑顔には悪意はない。だが、破壊衝動はある。

 それも、ちょっとやそっとの破壊ではない。たとえば城ひとつ吹き飛ばす勢いの。


「今回の爆破だけど“静音ver”だよ。ほら、私だって学習する猫なんです」


 ……いやお前、猫じゃないだろ。てか誰が教えたんだその“静音爆破”って概念。


 とはいえ、実際のところクロの技術は確かだ。

 この静音爆破装置は、内部に込められた魔力で扉や警報装置を音もなく破壊・無力化する優れモノ。

 しかも小瓶の方には、音の反響を打ち消す「吸音蒸気」が詰められていて、これを使えばシロやクロのような隠密スキル非搭載者でも、ほぼ無音で行動できる。


「うーん、でも本当はド派手に行きたいし、私の流儀からはちょっと外れるんだけどねー……」


「それを言い出したら潜入の意味がねぇんだけどなぁ」


 クロは小瓶のひとつをひょいっと掲げ、ポンと軽く振ると──中から薄い蒸気が溢れ出し、周囲の空間を包み始めた。

 甘い花のような香りがほんのりと漂い、すぐに辺り一帯の空気が“ふわっ”とした不思議な静けさに満たされる。


 俺が耳をすますと、巡回兵の足音が、布越しに聞こえるような感覚になっていた。

 クロは得意げに鼻を鳴らす。


「静かでしょ? ね、静かでしょ? ねっ?」


「うるさい。お前が一番うるさい」


 そのまま俺たちは、敵兵の目をかいくぐりながら、最初の関門──城の外回廊から、内部のメインホールへと続く重扉の前に辿り着いた。


「ええと、次はこの扉だね~」


 クロはおもむろにポーチから、今度は小型の魔道具爆弾(もちろん静音ver)を取り出す。

 それを器用に指先で転がし、鍵穴の上にある錠前部分へぴたりと設置。


「よーし……しゅぅっ!」


 どしゅっっっ!!

 ……あれ、結構音するんだなやっぱ。


 とツッコミを入れかけた瞬間、魔道具がぼんやりと青白く光り、その光が錠前に沿って“とろっ”と広がり、まるで氷が溶けるように鍵を分解・消去した。


「……なあクロ、お前の言う“静音”って、基準どこに置いてる?」


「うるさいなー、これでも静音バージョンなんだよ! 通常版だったらこの扉ごと天井まで吹っ飛ぶよ?」


「さいですか……」


 そんな漫才じみたやり取りをしているうちに、扉はすんなりと開き、俺たちは静かに城のメインホールへと足を踏み入れた。


 そしてそこには、またしても新たな“罠”が用意されていた。


 床一面に広がる、魔術結界。

 無造作に一歩でも踏み込めば、即座に警報が鳴り、無人の鎧が襲い掛かってくるという、とても厄介なタイプだ。


 そこで出番となるのは、我らが理論派にして冷静無比な軍師──シロ。


「──《結界破壊》、セット。直ちに発動」

 深く、淡々とした声とともに、彼女が取り出したのは複数枚の魔道符。

 それを両手にひらりと広げ、指先から魔力を送り込むと、床に染み込んでいた結界のラインがほのかに光り、その光が花のように咲いて、罠の効果が音もなく消えていった。


「これで通れるよ」


 そう言って先に進む彼女の背中には、一切の迷いも焦りもない。

 その目は既に次の罠を予測し、通路の構造を読み取り、最短ルートを構築し始めている。

 歩きながらメモ帳と細身のペンを取り出し、地図をスッと描き足す。


「賢明な城だね。地下への動線とこのフロア、回廊の構造が整然としてる。……嫌いじゃない」


 そのつぶやきは、まるで謎解きゲームを楽しむ名探偵のようだった。


 俺とクロは顔を見合わせて、ため息を一つ。


「なあ、あいつ本当に楽しそうじゃね?」


「うん、シロって実はこういう時が一番生き生きしてるよね~」


「って言ってる間に俺たちが死ぬパターンな気がしてならんのだが」


 こうして我々モノクローム怪盗団は、地獄の三位一体は趣味全開な知性派・シロ、ネジの外れた破壊担当・クロ、そして常識人枠たぶんの俺・アッシュという布陣で、王城の心臓部へと、着実に歩みを進めていく。


 ──さて、俺はこういう時に限って、なぜかひとりになることが多い。


 シロとクロは財務表や契約書といった証拠を狙い、城の地下へと向かう。俺は姫がいるらしい最上階の塔へ。とはいえ、警備の目も気になるし、俺なりに情報を集めつつ慎重に歩を進めることにした。


「二手に分かれる。俺は塔へ。シロとクロは財務書類、契約書関連を頼む」


「了解。慎重にね」


 シロの声はいつも通り冷静そのもの。クロは興奮気味だが、その勢いが逆に頼もしく感じる。


「財務表と契約書、ガッツリゲットしてきます!」


「お、気合入ってんな。ついでに宝物庫の鍵も盗んでくるんだぞ?」


 そんなやりとりもそこそこに、それぞれの任務を胸に俺は二人の背中を見送る。足音を消しつつ、俺は塔へと急いだ。


 城の構造は迷路のように入り組んでいて、どこに罠が潜んでいるか分からない。だが、俺は転生者だ。過去の知識とシロから得た警備パターンの情報を頼りに、最短ルートを頭の中で組み立てる。


 途中、警備兵の交代時間を見計らい、物陰に身を潜めてやり過ごす。息を殺しながら通路を曲がると、たまたま倉庫のような場所が目に入った。好奇心に抗えず、こっそり潜入してみる。


 中は書類棚と古びた箱が所狭しと積まれている。探れば何か掴めるかもしれない。


 棚の隙間から手を伸ばし、埃をかぶった帳簿をいくつか取り出す。ささやかな収穫だが、一応署名もある。確かに公式書類の類だろう。


「おお、これだけでも結構使えるかもしれないな」


 独り言をつぶやきながら、とは言えシロとクロの掴むものとには及ばないがなと自らにツッコミを入れる。


 歩きながら思考を巡らせる。皇太子レオニスの署名入りの書類が見つかれば、魔王軍との密約の証拠になる。これがあれば、王国の裏側に潜む闇を暴ける。


「とはいえ、こんな派手な書類を堂々と残すとは、レオニスは“俺も悪いことやってるぜ”って自慢したいのか? ……んなわけあるか」


 そんな疑問が頭をよぎるが、秘密裏にやるはずの取引が、署名入りで堂々と存在しているのは矛盾している。


「……ま、どうせお偉いさんのことだから、何かもっと陰湿な手を打ってるんだろうな」


 頭の中でシロの分析が蘇る。あの合理主義者の彼女が証拠を掴むには、それなりの根拠があるはずだ。


 警戒を強めつつ、塔の階段へ向かう。壁にかかる灯火が揺らめき、長い影が床に伸びる。足元が滑りそうになるが、慎重に一歩一歩を刻んだ。


「アメリア姫に会えるのも、もうすぐだな」


 そう自分に言い聞かせる。だが、同時に不安も胸をよぎる。彼女の本心はどこにあるのか。俺たちの訪問が敵意を招くのか、それとも救いになるのか。


 静寂の中で、俺の呼吸だけが響く。城の最上階、誰も知らない秘密が眠るその場所へ。


「──よし、もう一息だ」


 俺は気を引き締めて、塔の扉を押し開けた。


 ●


 一方で、アッシュが上へ上へと進む一方で、シロとクロの2人は書類を漁りながら様々な部屋を転々としていた。


 その中で、シロは城の南翼にある地下道への入口を見つける。そこは壁の石の色が微妙に違い、わずかな隙間から冷気が漂う。彼女は一瞬、細い指で壁をなぞりながら慎重に観察する。まるで長年のパズルマスターのような落ち着きだ。


「ここ。地下道への入り口……簡単には気づかれない巧妙な隠し扉」


 クロは壁にかかる小さな金具を見つけ、無邪気な声を上げた。


「うわー、こんな隠し扉、探偵気分で楽しいな! 私、罠解除のプロじゃないけど、勘だけはいいからね!」


 シロは眉をひそめるも、嫌みを言うでもなく、ただ一言。


「勘だけで動くと大怪我するの」


 クロは肩をすくめて笑った。


「そりゃそうだけど、あたしは“勢い”ってやつでね! 罠にはカンで突っ込むのがクロ流ってやつ!」


 シロは呆れた顔をしながらも、冷静に魔道符を取り出し、小声で唱えた。符が淡い光を放ち、罠を静かに解除していく。クロはその横で、あちこち首をかしげながらも巧みに足を運び、罠の機械的な部分をかいくぐる。


 二人の動きはまるで、静かな舞踏のように調和していた。


「シロ、あっちに小部屋を見つけたよ! ひとまずそこを調べてみよう!」


 クロは目を輝かせて囁く。声はできるだけ抑えたが、その興奮は隠しきれない。


 シロは一瞬目を細めて周囲を警戒し、すぐに口を開いた。


「任せて。気配を消して静かに入るわよ」


 その声はいつもの冷静さに、わずかな期待と興奮が混じっている。普段はクールな彼女も、任務の核心に触れる瞬間だけは目が輝くのだ。


 二人はそっと小部屋の扉を開けた。薄暗い室内には、重厚なタンスが一つだけ置かれている。明らかに大切な物が入っていることを主張しているようだった。


 クロはためらいなく引き出しを開けた。


「よし、中は資料の山だ! これなら絶対使えるぞ!」


 シロはすぐに中身を確認し、顔が一層引き締まる。


「これは……財務表と契約書。魔王軍の黒い印章とバルナス帝国の印鑑がしっかり押されている」


「うわ、ついに本丸だな!」


 クロは小さなガッツポーズをしながらも、油断しない。


「でも油断は禁物よ。こんなものを見つけられたってことは、当然何か罠もあるはず」


 シロは魔道符を取り出し、周囲を細かく調べながら呟いた。


「ここももちろん魔法の罠が仕掛けられている。見たところ毒や爆発ではなく、情報漏洩を防ぐための精神封印系の結界ね。解除するから、そっちも用心して」


 クロは笑いながら肩を叩く。


「おっと、あたしは結界にビビって足が止まるタイプじゃないから安心して!」


 だが、足元は慎重そのもの。無闇に突っ込めば、即アウトだ。


 シロは手際よく魔道符を唱え、ゆっくりと結界の光を鎮めていった。


「これで大丈夫。契約書と財務表は帝国と魔王軍の黒い密約の証拠そのものね」


 シロは資料を胸に抱え、視線を鋭くする。


「そして確実に皇太子レオニスの署名と個人印が押されている……皇室直系の関与がここにあるのは間違いない」


 クロがにやりと笑みを浮かべる。


「やったね、シロ。これを持ち帰れば、あたしたちの目的の半分は達成ってことだ」


「まだ油断は禁物よ」


 シロは城の構造図を取り出し、周囲の地下道や祭壇の位置を再確認する。


「婚姻式の祭壇の位置と地下道入り口の場所はここ。私たちが入った地下道はこの通りに繋がっているから、脱出も確実にできるはず」


 クロは城の地図を見て、思わずつぶやいた。


「それにしても、なんでこんなに隠し通路があるんだろうな。婚礼の準備って言うけど、秘密が多すぎる気がするにゃー」


 シロは冷静に答える。


「それだけ重要な式典だということ。裏で何があっても表には出さない。これが権力者の常套手段よ」


「なるほどなあ」


 クロはマップを手に、ふと冗談交じりに言った。


「ところでシロ、罠を解除する時に魔道符がキラキラしててちょっと眩しかったんだけど、あれって派手にしないと効かない魔法?」


 シロは一瞬目を細めて、「うるさい」と一言。


「無駄口は慎めって言ったでしょ。集中できないから」


「ごめんごめん。でもさ、魔道符をキラキラさせながら罠を解除するシロの姿、ちょっと可愛いよ?」


 クロの軽口にシロは完全に照れて顔を赤らめる。二人の空気は、ここにいる緊迫感の中にも柔らかな暖かさを帯びていた。


「に、任務中だから無駄口たたかないで。……でも、ありがとう」


 そう言って、シロは再び資料を慎重にまとめ、二人は静かに地下道の出口を目指す。


「私たちの証拠も揃った。アッシュはどうしてるかな?」


 クロは腕組みをしながら小声でつぶやく。


「きっと塔で姫に会っているはず。アッシュはアッシュで何か掴んでる」


 シロは城の深部に向かうアッシュの無事を祈りながら、確信を持って地下道を進んだ。


 ●


 俺──アッシュは別の回廊に身を置いていた。


 石段をひたすら登る。

 エレベーター? そんな便利な文明の恩恵はこの世界にはないらしい。

 せいぜいあったのは、無駄に豪華な絨毯と、壁に飾られたやたらと睨んでくる肖像画。どう見ても性格悪そうな歴代皇族たちがこちらを見下ろしてくる。やれやれ、嫌な伝統だ。


 途中、気になる書棚の奥から、封印付きの文書らしきものを回収する。見覚えのある封蝋の意匠──こいつも後で調べよう。


 息を殺して、ひたひたと石段を進む。

 天井のアーチをくぐった先に、分厚い扉があった。


 ──この向こうが、塔の内部か。


 重厚な扉には、帝国近衛兵による警戒と魔法の結界。二段構えの厳重な防御が張られている。


 だが、こっちにはチート能力がある。ファントム・レイヤー。それに、シロから託された結界解除の魔道符。


 俺は近衛兵の目を盗み音を立てぬよう塔の屋根へと飛び移ると、天井についた採光用の格子つき硝子を綺麗に取り外し、月明かりを背に塔の内部へと忍び込む。


 そして、静寂。


 耳鳴りがするほどの沈黙が、塔の中には支配していた。

 空気はひんやりとしていて、どこか湿り気がある。それでもかすかに鼻腔をくすぐったのは、香水のような、微かなフローラルの残り香だった。


 広い窓から、王都の夜景が広がっていた。

 そこだけ切り取られたような、夜の舞台。


 その中央に、ひとりの少女がいた。


 ──アメリア姫。


 銀の杯を手に、彼女は小さなテーブルに座っていた。

 その姿は、絵画のようだった。けれど、ただの絵ではない。

 彼女の瞳の奥に浮かんでいたのは、言葉にならない“何か”だった。

 諦めとも、悲しみとも違う。もっと複雑で、もっと静かな──迷い。


 その揺らぎに、心が釘付けになった。


 俺は一歩、静かに足を踏み出す。

 長い石段を上り、ようやくたどり着いたこの最上階。

 今夜、この姫と正面から言葉を交わす。それが、俺の役目だ。


「……帝国の夜にしては、ずいぶん静かですね」


 その声に、姫はびくりと肩を揺らした。

 そして、こちらを振り向く。


「だ、誰っ……!」


 その声は、予想よりも落ち着いていた。


「しーっ。声のトーンを、もう三段階ほど下げていただけると嬉しいですね」


 月明かりを受けたその顔は、絹のように繊細で──でも、目は意外と強い。

 驚きはあるはずなのに、怯えの色が薄い。

 この姫、やはり只者じゃない。


「……あなたは……近衛兵の方?」


 そう尋ねた声に、俺は帽子のつばを軽く押さえた。

 そして、くすりと笑って、低く答える。


「いえいえ、分かっているとは思うのですが、バルナス帝国のモノじゃあございません」


 そして一礼、片膝をつく。


「白い月光が我らを照らし、黒い夜空に混ざり込む、そんな今夜は、孤独なお姫様の話し相手として馳せ参じました」


 言いながら、内心ではちょっと後悔していた。

 言い回しがクサすぎる。いつもの調子で口上を述べただけとはいえ、これはさすがにポエム寄りすぎる。シロがいたら、100%ツッコミを入れていた。


「モノクローム怪盗団、名前は──“アッシュ”」


 そう名乗ると、姫は一瞬、目を見開いた。


「アッシュ……モノクローム怪盗団……」


 微かに眉をひそめたその顔が、美しい。

 けれど、その中にあるのは疑念でも警戒でもなかった。


「あなた、私に……何をしに来たの?」


 その問いに、俺は少しだけ間を置く。


「ええ、いくつか目的はありますが──いちばんは、お話をしに来ました」


 そう答えたとき、彼女の瞳がほんの少し揺れた。

 風もないのに、長い金髪が月光に揺れたような気がした。

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