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ボクとカノジョと紙飛行機

作者: イヨイオリ


小学生最後の夏休み。

先生から出された課題は、


『ドーナッツを穴だけ残して食べる方法』


ぼくは ただ

わたしは まだ


バカでよわむしで

力もなくおくびょうで


何もシラず

何もミレず


世界のかたすみで

よるのまんなかで


ぼくたちは 立ったまま

わたしたちは 黙ったまま


じっと 息をひそめていた


彼は彼のことを

いつもぼくといい


彼女は彼女のことを

いつもわたしといった


おしゃれなかくりぼう。


ぼくたち、わたしたちは、

ファーストガーデンのことをそう呼んでいた。


けれど、ソレラはすべて、

懐かしいあのときのあかし。


まさにそう。これは記憶。全部がぜんぶ。

ちいさくて。まぶしくて。とても大切な。

あの夏の思い出。こどものころのいちぶ。


はないけたかびんがわれるみずのおと。

うるさいなぼくのしんぞうせみのこえ。


男と女、ぼくと彼女、君とわたし。

音楽室とガラスのびんとなぞなぞ。

穴だけのこして食べる方法とは。

変わらぬままわからないまま。

終わらない。夏休みの宿題。

ドは——ドーナッツのド。

ミは——みんなのミ。

ソは——あおい空。

Aはアルペジオ。

Iはわたし。


ちっぽけな

心を砕いて

瓶につめた


埋めたはずの思い出が

帰ってくる。いまさら

青と痛みとかなしみが

何倍にもおおきくなって

ぼくらのわたしたちの心に

こどくによみがえってくる。


それで こたえはでた?

うん もんだいはとけたよ


見せて

なんで


わたしのも見せてあげるから

あんまり気がすすまないなぁ


これも れくりえーしょんのいっかん

ふーん そっかそれならしかたないね


「あなたはきっとだれよりもステキな人になるわ」

と、カノジョはボクの答えを見て冗談っぽく言った。


「そういう君はイジワルな大人になるんだろうね」

と、ボクはカノジョの答えを見て大まじめに返した。


へんなの

そっちこそ


ふふふ

笑うなよ


笑ってない

いいや笑った


不思議と不思議と不可思議に

かのじょとかれは気が合った

かれとかのじょは出くわした

なぜだか。どういうわけか

からっぽ。とからっぽが

こどくと。こどくとが

人気のない音楽室で

彼女と僕。君と私

ドーナッツの穴

たべれるすな

ほしのすな

ガラス瓶

われる

言葉


[AI]


とさいごに書きつづって、えんぴつを置き、

彼方(アナタ)は答案用紙を、紙飛行機にして、

窓から飛ばした。


——物語はここから始まる


このセカイでたったひとつ

はかなく光る記憶のカケラ

閉じられた夢の瞼のうえで



あなたはそこに、どんな記憶を閉じ込めますか?

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