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お別れ

『ねえ、あのね。さよなら』


真っ赤なペチコートのドレスに真珠のイヤリング。赤いマニキュアが綺麗な、彼女の滑らかな指が私の首筋をなぞり、そしてチョーカーが外される。


『またいつか、どこかで。さよならは言いません、その日まで、どうか笑顔で』


『なによ?じゃあ、会ったら顰めっ面でもする?』


彼女が顔を左右に引っ張り、変顔して私を揶揄ってくる。私は笑う。


『まさか、いや、どうでしょう?きっと』

『チュッ』

『バイバイ』

私とおでこをくっつけて、私の目を見て、そして、目を閉じた彼女は、とても綺麗で。私の頬にはひと筋の涙が、溢れる。


振り返らずに『彼女』は去って行き、舞台は暗転。


光学機器やエーテルギアを使い、さっきまでの舞台をあっという間に、霧雨の街中、スクランブル交差点へと変えていく。


『ララララララ〜ラーラ、ラーラララ♪』


彼女は舞台の中央で踊りながら、傘を捨て、靴を脱ぎ、バッグを投げて、自由に楽しげに歌う。


周りの風景を動かすことで、客席からは彼女が縦横無尽に交差点で歌い踊るように見えるようにしていた。


『カチリ』


ほとんど胸とスカートだけになった彼女は、ポケットから無造作に取り出したチョーカーをその細い首に嵌める。


音楽が大きくなる。


舞台上の野次馬通行人役たちが写真を撮っていたのが、『ウェーイ!なんか面白そう!』と踊り出す。


『おい、行こうぜ!』「え?え!?」


次第に交差点が舞台をはみ出すように膨らんでいく。そう、客席で待機していた通行人役が周りの観客を巻き込んでいく。


『さあ!』


舞台の中央端には彼女、舞台上は通行人の役者たち、舞台下は通行人役の役者と観客が、音楽に合わせて踊り舞台は最高潮の中、『カチリ』とチョーカーを外し、どこか愛おしそうに眺めて、そのまま、光学迷彩で彼女は消える。


1-2分、少しずつ音楽は小さくなり、観客も促されてそれとなく席に座ると、改めて、舞台の上にいたスーツに身を包んだ彼女の首には、もうチョーカーはなかった。

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