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第28話: 赤い地上の輝きと星空観察

「あ、橘さん、あなたの猫ちゃんにこれ!」「どうも。ただこのねこ、私の猫じゃなく」「あ、登録?また迷子になったの?明日なら区役所まで連れてってあげるわよ!なによ、水くさい!言ってよ!」「・・・あなた、うちの子になります?」『にゃー』「明日、区役所まで一緒にいきましょ?」「あ、はい。ありがとうございます」


どこからか、吹奏楽の演奏が遠くから聞こえてくる。すでに日は沈みかけ、すでに空には微かに天空の城が青く輝いていた。星のように瞬くその光に、私は一瞬見とれてしまう。


6月15日。今日は授業の後に、学院の屋上で星空を観察するイベントがあり、日没を待っていた。


私は入学してからの遅れを取り戻すために何度かエヴァンス先生にお願いして補講を受けている。


「勉強熱心で素晴らしいです、瑞樹さん」。補講の途中の雑談で、エヴァンス先生は私に手元のバッジを見せながら、こういった。


「この藤のバッジは、学院の創設者アントンが『実りあれば頭を垂れる』という思いを込めたものだとはあの日、学長から説明がありましたね。」


1人きりの入学式で学長からのその言葉に、胸につけたバッジが少し、重くなったのは記憶に新しい。


「さて、と」「瑞樹さん?」「ああ、友人に声をかけてきます」「わかりました。先に行ってますね」


そろそろ時間だと、2人で屋上に向かう途中、先生に人を呼んでくると告げ、体育館へと足を運んだ。


そこにはやはり舞台の上で演技に打ち込む工藤祐二がいた。彼は松田優作を思わせる鋭い眼差しで、舞台上の世界に完全に入り込んでいる。


「魂ってのは絶対になくならない。その中で魂を強く持ってる、それが必ず未来に出て来る」


舞台の上で静かに座った彼の視線は、まるで私に話しかけてくるように、逃がさないように、まっすぐに捉えてくる。


「ああ、瑞樹か」祐二は私に気付き、視線を和らげた。

「練習中すまない。屋上に行く時間だから、呼びにきた」「あいよ」


少し汗ばむ祐二からは花の香りがしている。祐二は「コルムチカ」の花の魔族のハーフで、肉体はあるがその性質はエーテル質に近く、長生きはできないからと、今を全力で生きる男だった。


私は、演劇部への入部を決めた。前世で役者だったこともあるが、この男の熱い「何か」が私の中にある「何か」を刺激して止まない。


祐二と一緒に屋上へ向かうと、そこにはすでにプラムやエドガーがいた。

「おっそい!!」「すまない」「あー、祐二、くん?」「祐二でいい」


瞬く星空は、前の世界と変わらない、けど。

夜空に浮かぶ天空の城、地上に輝く世界樹の光。


「瑞樹、補講は順調か?ほら」

差し出された飲み物は、ホットチョコレートだった。

「ああ、ありがとうレオン」


見渡す限りどこまでも広がるエヴァルニア。私はこの新しい世界に、そしてここで出会った仲間たちに感謝しながら、光が呼応し、昇る様を目に焼き付けた。

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