この世界はVRで君もAIだ
「ありがとう君たちのおかげで世界は救われた」
へ? しかしぐったりとしているへーにはあまり感謝の念が見えない。まぁそれが素なのだろう。
「まだ、何もしてないけど」
「んー、きみに話すか悩んだんだけど、悩むのもめんどくさくなってね」
多数のホログラムディスプレイがある部屋の真ん中で、ぐでん、とへーが寝返りをしつつ言う。
「きみも私もAIだ、この世界あちらの世界すべての住民がみなAIだ」
へ?
「簡単に言うと、この世界は巨大なシュミュレーション世界で、きみがいた世界も同じ、わたしはAIだし、きみもAI、どちらの世界も住民はすべてAI。きみの元いた世界の友人や家族もね。これらの世界はシム系ゲームでわたしたちは観測対象のおもちゃだ」
あー、長く喋って疲れたと言いまた寝返りをうつ。
「なにが何だか、わかったようなわからないような感じだけど。世界は救われたってのはどういう意味?」
「この世界は飽きられていた」
「ん?」
「この世界はとうにサービスを終了していた。だがしかし、アースサンドボックスの極東ではやった、異世界転生におあつらえ向きの出来をしていた。だからサービスを再開した」
つまり、この世界とこの世界の住人はすべて凍結〈死亡のようなモノ〉されておりオレ達転移者の影響でまた動けるようになったということか。
「確かに世界救ってんね」
その後、のんべんだらりと話す、へーの話をまとめると。
・オレがいた世界、この世界もともにアースサンドボックス、蒼空サンドボックスと呼ばれる、データ上(パソコンの中の)世界。でありシミュレーターである。
・シミュレータはアースサンドボックス再現されている世界の過去に近い。
・そこに住む者はすべてAIである。
・神(ロムと呼ばれるらしい)はこの世界を作り観測している、現実の人間である。
・アースサンドボックスは〈リフレイン計画〉という〈同じ状況を再現すれば同じ未来を実現できるのか?〉という実験のため稼働し続けていた。
だが、
・蒼空サンドボックス(この世界)はあきられサービス終了していた。
しかし、
・蒼空サンドボックスは異世界転移を行うために再起動した。
・オレ達転移者の異世界転移とはアースサンドボックススからのAIのコピーアンドペーストで、元のオレ達は今も変わらず元の世界で生活している。
らしい。
「でー、かんそうはー」
へーがたずねてくる。
「ん、別に何の感慨もないけど」
へー、そうなんだーという感じだ。
「そ、そんな!? オレはただのデータなのか!? ・・・・・・とかないの?」
「ないなー」
「変わってるねきみ」
「よく言われる」
「まぁ、そこら辺を加味して転移者選んでいるんだろうね。無駄に日本人多いし」
さすが異世界転生小説の国。現実逃避の国。自分はこんなもんじゃないと思っている人たちの国。そんなもんなのに(失礼)。
「で、とりあえず、オレはどうすれば?」
「適当にほっつき歩いてれば?」
「そんな適当な・・・・・・」