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○○王

アリロスト歴1816年    4月




  ジョセフ陛下(エル6世)に王位を譲り、ジョルジュもすっかりお達者クラブ(老人会)の一員と為った。

 私的談話室にはじじい(106歳)、ジョルジュ(61歳)、エミール・ロヴァンス、ベルイル伯、ボルド、トーマ、シャトレ候、ルネ、レコ、俺に、ジャック(画家)が思い思いのリクライニング・ソファーに寛ぎ好みの葉巻を燻らせ煎茶やカフェオレを飲み談笑する。

 そして偶に思い出した様にフェリクスも訪ねて来る。

 名目上、俺たちはジョセフ陛下の自称相談役だ。


 ジョルジョは引退してもパルス上水道建設を統括していることは変わらない。

 俺の場合は強制的に第2都市ヴリーが在る地域から、ノンディ港がある地域を任せられていた。

 俺は当然ジョルジュに断った。


  「俺に任せると余り各地域が発展しないぞ。」

  「良いのですよ、僕は兄上が考えている各地方都市を見て見たいのです。」


 そう絶対王エル5世が命じたので仕方なく「了」と承った。

 ジェルジュの愛称なのだ。=「絶対王」

 勿論ジョルジュが強権的なのでは無く口癖が「絶対に」だったのだ。

 つう訳で何時の間にかそれが政務宮(ルフルティー宮)で囁かれて始めた。

 それがエトワル宮でも噂で流れて定説へと為った。


  まあ俺が思うに皆は「○○王」とジョルジュにもキャッチコピーを付けたくてウズウズしてた。

 でも色々と社交界で「○○王」の候補が上がってたらしいがピンと来ない。(レコ談)

 元が器用でオールマイティーだから卒なく何でもジョルジュは熟してしまう。

 其処で政務宮で囁かれていた噂が在ったのだ「絶対王」と言う。

 ドンピシャだ!

 「ヤッタぜ、ベイビー」ってな具合に貴婦人たちが噂を固定化されてしまった。

 噂を聞いたジョルジュが複雑そうな顔をして、話し言葉に気を付けていたがポロリと出てしまう。

 まあ、それが口癖って言うモンだけどな。


 結論、じじいが悪い。


  まあね、在位期間は長いし、欠点は多いけどカリスマも実績もあるので愛称に事欠かない。

 いいんだよ、じじいは絶倫王でさ。



  そういや一応モスニア総統政府とフロラルス王国の同盟が締結された。

 他のヨーアン諸国は様子見だ。

 まあ何時倒れるか判らな臨時政府つう見方が大半だ。

 特にグレタリアン帝国はモスニアに居る王権復興派へ資金諸々を流して、打倒レオンなんつう事を企んでいて鬱陶しくて仕方ない。


  「グレタリアンは、ぜってー潰す。」


 そうせっせと送って来るレオンの手紙に書いてた。

 穏健的な王党派は前総裁政府が、殆どモスニアから追い出したので、現在モスニアに残っているのは急進的王党派なので厄介で危険なのだ。

 何せ爆弾テロまで総統政府へ仕掛けて来ている。

 つう事で、レオンにはフロラルス王国への入国を俺は私信で禁じた。

 「ひっでぇー」とか言われても、俺は危険な人、モノには接触しないのが基本姿勢なのだよ。


 でもレオンのお陰で此の侭行けば、モスニア行政は安定しそうだ。

 「報道の自由」が保証され、逃亡貴族や知識層にも恩赦が出て帰郷が許された。

 但し、王族と王党派は入国禁止だ。

 モスニア貴族方々でフロラルス語を解する人に定住希望者もいる。

 フロラルス王国では彼等に税を徴収する事を告げたが、其れなりに希望者が居て驚いた。

 北カメリアにでも行けば良いのに。

 そうジョルジュとお達者クラブの面々に俺は愚痴る。

 ルナンド9世が居る所為か、何れモスニアが元に戻るのではと、期待されている面々。

 甘い、丸で俺の様に甘い。

 時間は元に戻らないし、被支配層が知ってしまった知識は無くならないのだ。

 其処ら辺を覚悟した方が人生を有意義に過ごせるのになーと俺は思うけどね。

 今の所は政治活動をしていないので、監視に留めているけど少しでも動きを察知したら、レオンに報告後、北カメリアへと追放する事が決定されている。

 済まないね。



 

 

   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 

 エーデン王国から、引退記念で来たサディ陛下。

 こいつはフェルナンを使ってチャッカリと北カメリアに或る離島を借りていた。

 あのグレタリアン本土攻撃後で北カメリアも金無いし、国軍人数居ないしとワタワタして、フロラルス王国へナユカ国にある2州を割譲する位にカメリア政府が逼迫していた。

 住民も港も無いつう事で値段を聞いたら格安だったよ。

 でもって港整備してエーデン国の保養地を作った。

 寒い寒いエーデンの地は普段でも日照時間も短くなるし冷え込みは想像を絶する程だった。

 その所為か病に成る人や気を病む人間も多く、フェルナンの提案に乗ったそうだ。

 あの寒冷期は何処の国も大変だった。

 あー、ビタミンD欠乏症かーとサディの話を聞きつつ俺は前世の記憶を想い出した。

 しかしエーデンて寒冷期前から海が凍る寒さだったんだよな。

 それ以上の寒さって俺なら死ねる自信があるわ。

 うん、俺はエーデン王国に旅行することは無い。


  「孫が可愛い。」

  「へー(棒)」


 銃弾など最弱つうバーサーカーな軍団を率いてたサディは女より戦!てな変態だった。

 その所為か婚姻も子供が出来るのも遅かった。

 でもって王太子(息子)も中々に子宝に恵まれなかったのだが3年前に嫡子が無事誕生。

 それから続くサディからの俺への孫自慢。

 今から嫁探し行脚をしてるらしいのだが俺は早過ぎだと思った。

 だってまだ精子と卵子が出会って居ない状態の可能性だってあるだろ。

 すっかり孫馬鹿爺と化したサディにお達者クラブの面々も頷き、孫自慢で沸いた。


 しかし、あのサディである。

 孫自慢だけに態々フロラルスまで来るわきゃない。

 案の定、血生臭い話だった。

  ルドア帝国皇帝ニコラスが専横激しいポナション(実父)を断罪し死罪にした。

 いやーあの大国の富と権力を好き放題に使う為に他の愛人や子供達を謀殺して来たのだしな。

 如何やら宰相とポナショんから冷遇されていた軍属と組んでの事らしい。

 何でもレオン率いる軍隊の強さを知って現状ではルドア帝国も危険に為ると危惧しての処断。

 表向きは。

 俺的には裏の話は真偽を確認出来ないし、割と如何でも良い話。

 じじい達が盛り上がる中、俺は表向きの話だけ聞いて頷いて於いた。


 俺はルネに麦茶を入れて貰い血生臭い話の余韻を消した。

 でもまあ、話の続きはあった。

 ポナションが消えた今は西ポーラン王国の正当性を担保する力が弱まった。

 そこでオーリアのランツ4世(義兄上の息子)と組み、西ポーランを分けるか吸収しようと言う話。

 東ポーラン王国のヤン・バートリー陛下は賢い王らしく安定させているそうだ。

 エーデン王国やオーリア帝国、プロセン王国、リコリア公国、スロン王国らと婚姻を含めた外交を重ね、軍事強化と地場産業の発展に力を注ぎ、経済規模は小さいが国民からも支持されてる王政だそうだ。

 それに反し西ポーランは民が流出しルドア帝国の属領に成ってから人口が半減している。

 つうかそれってエーデン国が西ポーラン国民を北カメリアへ輸出してるからでしょうが!

 まっ、それだけじゃないけどね。

 ロマン市から輸入された思想書「ロマン法典」で愛国心の意識を芽生えさせた西ポーラン国民はルドア帝国からの鎮圧部隊をゲリラ戦法で対抗していた。

 ヤン・バートリー陛下は西ポーラン国民に「武器を捨てて東ポーランで生きよう」と呼び掛けているけど此処まで抵抗を続け愛国心に燃えた西ポーラン国民には届いていないようだ。

 ヤン陛下は西ポーラン国民に食糧援助はしているそうだ。

 それに西ポーラン国民は、レオンが軍を率いて来るのを待っているそうだ。

 だけど西ポーラン国王は如何した?

 何でもルドア帝国の傀儡だったヨゼフ3世を国民は信用していないと言う。

 

 「ルドア兵と一緒になって弾圧して行ってたからな。」


 そうサディは話すが傀儡として国王にされたならルドア帝国からの命令実行をする選択一択だな。

 どちらも救われない話だ。


  「フロラルスも西ポーラン分割に参加しようぜ!」


 つうけど俺はじじいとジョルジュと話し合って断った。

 前回、分割して手に入れたルール地方から産出された鉱物の量も種類も満足出来る物だった。

 それならばポーラン国が落ち着てから鉄鉱石などを購入する方が楽だ。

 鉱山採掘の管理は難しいし、俺の精神的にも楽だ。

 将来フロラルス国民から、何故に領土分割の戦いに参加しなかったのかと恨まれるかも知れないけど、まあ文句は俺の墓にでも言いに来てくれ。





  そんな話をしていると秘書官からレオンから何時もの定期便が届いたと告げに来た。

 きっと又、面倒な頼みなのだろうと思いつつも不承不承、俺は執務室へ戻った。


  ~~~~朝露に光る薔薇園に身を置けば、俺を呼ぶアリーの声が聴こえた(後略)


 相変わらず幻聴幻覚が酷いレオンの駄文3枚を読み飛ばし要件に目を通す。

 アホか!

 フロラルスの頼みなど教会が聞くわけ無いだろう。

 教皇一行は現在は大昔に建築されたスロン大聖堂にいる。

 初めは高い山脈や山に囲まれたスロン王国へ行くことに難色を示したが、過去から4世紀に渡り教皇を守護し続けたスロン兵に守られれば高い安全があると義兄ランツ3世は説いた。

 そして旧信徒を国教としている諸国から依然と同程度の寄付をさせて頂くと聞き了承された。

 でもってモスニア総統政府はカリント教と仲直りの講和をしたいから教皇に紹介ヨロしく。

 そう気楽にレオンは俺に綴っていた。


 何故にスロン国に大聖堂が立っているか。

 えーとな、エル家が王家に成る前に領地に或る教会に税金を払えと言ったが拒絶された。

 その時の教皇がパルス伯だったエル領主に「破戒者だ、破門だ。」と戒告し、ヨーアン大陸全土の教会へ回文を出した。

 それに激怒したパルス伯は騎士たちに回文を撤回させろと命じて教皇を攫いに行かせた。

 ヤッホーと騎士たちは教皇領に向かい教皇を探すが逃げた後だった。

 だが、其処で諦めるヤッホー騎士共では無かった。

 ヨーアン全土を追いかけて追い掛けてやっとスロン山脈に教皇が居る事を掴んだ騎士共は、教皇を追い求め一路スロン山脈へと向かい襲い掛かった。

 でもって80歳過ぎた教皇の衣服や教皇であると言う祭具や宝具を全て剥ぎ取り三日間監禁して、回文の撤回と納税を迫っていたらスロン兵が救助に参上。

 スロン兵が親身に介抱したけど悔しさの余り教皇は憤死した。

つう様な事が後2回続いた。

 まー、大体は教皇を攫って来て監禁してエル家の希望を受諾させようとするけど、教皇から拒絶、でもってヒャッホー騎士が弾みで殺してしまう。

 てな事をエル家が王族に成ってからも遣ってますからね。

 俺はこの話を習った時に、エル王家がカリント教信徒って嘘だろって思った。


 でもって今は何度、公妾を止めろって注意してもじじいはスルー。

 旧教徒である歴代教皇は神が定めた一夫一妻制を堅持。

 そして以前の王太子は(俺の事だね)、話を聞くふりして教会の権威を傷付けてばかり。


 なっ、フロラルスから教会への頼み事は無理だと分るだろう。

しかし憤死してしまう程に納税したく無いと言うのも凄いなー。

 俺はレオンに「無理」と書いた返信を送った。





   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



アリロスト歴1816年    10月



  その後、義兄ランツ3世とレオンハルトはオーリア帝国で会談を重ねた。

 5ケ月後にオーリア帝国のシュッタルトで教皇ピカト6世とレオンハルト総統が政教条約を結び、カリント教とモウスニア共和国が政治的な和解を果たした。

 また教皇ピカト6世はロマン地域からの完全撤退を述べ、スロン大聖堂へと聖域が移ったと宣言。

 スロン教皇ピカト6世の名でヨーアン全土に或る教区へと通達した。


   1816年9月 シュッタルトの講和。

 教会の役割が大きくこの時に変化し、和平を主軸とした調停や外交交渉へと、聖職者の役割も変わった。


  そしてオーリア宮殿に在る聖堂でレオンハルトとレティシアが婚姻式を上げた。

 儀式を執り行い祝福を授けたのはピカト6世教皇であった。

 レオンハルト24歳、レティシア45歳と言う年の差婚カップルが誕生した。

 即断即決攻撃を信条としているレオンハルトは、既にレティシアを懐妊させ3ヶ月を過ぎていた。



  アルフレッドが執務室で此の悲報を聞くのは、婚姻式が終了した24時間後であった。

 

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