英雄の条件
アリロスト歴1815年 10月
まあホントに色々在りました。
北グロリアに駐在していたレオンハルト軍に2個連隊と派遣議員が合流し、派遣議員が国王夫妻と交渉している間に南グロリアに戻り制圧できなかった公国を平らげ、ロマン市長の降伏を受け入れ、南グロリア共和国とレオンハルトが改名した。
その後、フロラルスとレオンハルトは交渉しモスニアの南端にある軍港へ急ぎ、プリメラ大陸を目指し南西下しスカベラ諸島に向かった。
待ち伏せしていたグレタリアン艦隊と戦端を開き、潮流と風向きを利用し快勝した。
その後、プリメラ大陸を沿岸沿いに南下して南西プリメラ大陸、南プリメラ大陸の植民地を完全に回復した。
そして南グロリアへ艦隊で向かう途中、コルカ島北東の海域でマター島から来たグレタリアン艦隊と激突した。
小さく別れたモスニア艦隊がマター島軍港を砲撃。
動きが鈍ったグレタリアン艦隊を各個撃破。
激しい消耗戦の末、モスニア艦隊の一部がマター島に接岸し乗船していた3個陸軍小隊がマター島へ上陸して行き、マター島制圧作戦が完了した。
その後、総裁システィアンの手引きの元、レオンハルト腹心の参謀テオと準備していた部隊でモスニア総裁政府本会議場へ行き、ラスア子爵、ブリエーコ男爵、ボレン男爵を拘束のちに死罪にした。
炎月のクーデター。
そして9月、システィアンを副統領にレオンハルトがモスニア共和国統領となった。
ええとー、マター島に侵攻したはラスア子爵たちへの目眩ましだったようでした。
北グロリアへ訪れた派遣議員はラスア子爵の腹心でレオンハルトの失点作りに来たっつう訳だ。
そこで直属の部下が気を効かせて、南グロリアで反乱が起きたと報告し、レオンハルトは急遽南グロリアへ向かった。
ついでに制圧出来るところは全て制圧しようと、南グロリアで作った置いた南グロリア共和軍と協力して戦った。
17在った公国を落として、最後にロマン市に侵攻、レオンハルトがモスニア共和国統領として講和し調印。
そして帰国しようと思ったけど下手に帰るとラスア子爵たちに何をされるか判らない。
「よし、フロラルスから帰国しよう」と思った時に、ドリードから総裁システィアンの使いが来て、ラスア子爵たちが企てたレオンハルト抹殺計画を暴露。
でもってシスティアンが立てた計画にレオンハルトが立案したフロラルス経由を混ぜて、システィアンが望んだラスア子爵追い落とし計画が発動した。
そして友人テオが行った下準備の完璧さは流石にレオンハルトの参謀をしているだけは在りました。
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なぜ俺が此処まで詳しく知っているか。
まあ、レオンハルトと変態的な会談をしたからだね。
あっ、マター島からラスア子爵を死罪にしレオンハルトがモスニア共和国総裁になったのは後日レオンハルトの手紙と部下の人から伝言で知ったのだけどね。
何ともまあ胆力が在ると言うか何というか、パルスに来て近衛兵に「内密で相談を」てな話を直属部隊30人位の小隊で訪れて上役へと案内を頼むと言う。
確保されるとか思わなかったのかね。
まあ面倒なのでしなかったが。
でもって何故か俺が指名されたので、ルフルティー宮やエトワル宮では内密とか無理なのでトゥリー城に来て貰ったよ。
防音効果の高い公務用談話室で英雄レオンハルトをお出迎え。
俺的には「意味わかんねー」と思い乍ら、八面六臂の活躍をするレオンハルトに会いました。
俺より約20㎝程低い背に金髪で彫刻されたみたいな顔してキラキラと栗色の瞳を輝かしている。
えっ?
何コレ、怖いよ?
初めましての挨拶の後、スタスタと真っ直ぐに俺に近付いて右手を取って手の甲にキスをした。
「あのー、何で私に忠誠の印を?」
「はい、エル公爵に実際にお逢いして俺の忠誠は貴方に捧げたいと心からそう願ってしまいました。唐突で申し訳ありません。ランダ王国で神々しいエル公爵の絵姿を日々見て過ごしていました。そして実際にお逢いし、より鮮明にエル公爵の気高き姿と神々しい空気に触れ、思わず忠誠を誓わずにはいられませんでした。」
「あっ、ああ、そう。有難うで良いのかな?良く判らないんだ。一先ず腰を落ち着けてくれ」
「はい、有難うございます。」
自分の息子フェリクスより、かなり若いレオンハルトは鍛えられた筋肉質な躰にピッタリと沿う軍服を着ていた。
そこに絹で織られた真新しい白のスパッツがレオンハルトの下半身に張り付き、両脚の形や筋肉がムッチしと見えていた。
うん、フロラルスで見るのは久しぶりの懐かしいスタイルだ。
しかし此れは誰得な光景なのだろう。
ああ、義兄ランツ3世が喜びそうだ。
眩気に俺を見詰めて此処に来た事情を語るレオンハルト、良いのかその情報を俺に話して。
ラスア子爵たちの裏を掻きたいからフロラルスを通らせて欲しいと言うけど、いや君はパルス迄も入って来れてるのだから通行出来るよね?
そう思ったのは秘密の方が良いよな。
それから熱が篭った瞳を一層輝かして、俺が開発したとされている物に付いて情感を込めて話す。
もう一時間以上瞳を逸らさずに熱く話してくれるレオンハルト。
済みません、俺はこれ以上もう限界です、勘弁してください。
ルネを呼んで珈琲のお替りを頼む。
お互いに珈琲の香りを嗅いでシンプルな磁器のカップに口を付けた。
シンプル・イズ・ベスト、俺って直に触る物って飾りが無いのが好きなんだよね。
でもまあ、まったりしている時間も無いので俺は聞きたい事を尋ねることにした。
「君はこれから如何する心算なんだい、レオンハルト。」
「そうですね、先ず総統になります。いい加減に革命政府にはウンザリなので。そうなったら改めて同盟を組んで欲しいのです、俺とね。」
「まあ決めるのは私では無いので即答は出来ない。それと同盟は良いとして我が国ではルナンド9世を保護している。レオンハルトはそれは理解しているかい?」
「ええ、勿論。モスニア共和国が落ち着くまでは帰国されると困りますが、そうですね。ヨーアン諸国が手を出さないでくれると5年で安定させてみせるのですが、まあ目下フロラルス以外は敵ばかりなのでもう少し掛りそうです。」
「ははっ、仕方ないさヨーアン諸国だしね。」
「?そうだ、私の事はレオンと呼んでください。お願いします。」
「では私の事はアレフでもフレッドでも、アリーでも。好きに呼んでくれ、レオン。」
「はいっ、アリーと呼んでも?」
「ああ、良いよ。で、総統に成ったら新たな国でも攻めるのかい?」
「今は無理ですね。それにポガール国、ランダ国、南グロリア、北グロリアはヨーアン諸国に認めて貰わなければなりません。」
「そうだね、オーリア帝国なら義兄ランツ3世と仲が良いから話してみるよ。ただランツ3世は損得勘定が必要なんだよ。私みたいに戦いたくないって訳でも無いから侵攻しないは、取引に成らない。」
「そうですね。北グロリアを保護国にするでは駄目ですか?国王夫妻に任せますよ。俺が侵攻をした国は体制が変わることを強く望み、そして軍備が弱かった国々なんです。プロセンやオーリアが侵攻しなかった理由が理解出来無いですね。」
「うん、それこそがヨーアン諸国なのさ。本土には極力侵攻せずに植民地を奪い合って利益を得る。面倒な話だけど弱ったところを皆で袋叩きにして併呑するってのが私たちが遣っている戦争なんだ。まあ、皆と血が繋がってるしね。従兄だったり又従兄妹だったりするからね。」
「では俺がヨーアン大陸で認められるにはヨーアン諸国にある王家と婚姻する必要があるのですね。アリーに娘さんは?」
「ははっ、昨年に未亡人に成ったけど44歳だよ。後いる娘は2歳だしな。まあその娘たちは正統な子では無いから王族では無いしね。」
「お若い頃に妻を亡くされ独身だと聞いて居たのですが。」
「まっ、色々と王族は面倒なんだよ。後継者争いにならないように気を配ったりね。そうだなー、レオンがモスニアを豊かで強い国にしたら王家の方から縁談が来るよ。恐らくね。」
俺はレオンに行った国のイメージを教えて貰ったりパルスに付いて聞いたりした。
そして気に成っていた絹の白タイツに付いても尋ねて見た。
確か市民兵はパロン式スラックスだった気がしたからだ。
レオンによるとドリード・コミュニティが作った制服だったから消滅した時に、シエラ・クラブが昔の軍服に戻したそうだ。
俺が来ている服や扉の外で守っている近衛兵の軍服を羨ましがった。
余りに切実にレオンが羨ましがるのでルネに頼み、外にる近衛兵に彼に会う体形の軍服を俺は用意させる事にした。
「でもレオンにはフロラルスの軍服など着る場所が無いだろう。」
「ふっ、俺が国の頂点に立つのにアリーはモスニアで自分に許されない事が在るとでも?」
「はあー、なる前から独裁かい?」
「そうかもね。そうでも考えないと遣ってられない。だけど俺の魂はアリーへと捧げています。それだけは忘れないで下さい。アリー、もう一度手を。」
縋るような瞳でレオンは俺に懇願した。
俺はゆっくりとレオンに右手を差し出した。
ソファーからスクリと立ち上がり腰を下ろしてる俺の足元へレオンは両膝を床に付き壊れ物に触れる様に俺の右手を剣だこが出来ている固い両手で包み込み、ゆっくりと唇を付けていく。
まだ23歳。
この若い天才軍人も何かに縋りたいのかも知れない。
そう考えて俺はレオンの気が済むまで右手を貸すことにした。
唇が強く押し当てられ俺の手の甲に濡れたレオンの舌が吸い付いて来た。
「おいっ!」
俺の声を無視して器用に室内履きを外した。
「レオン何を。」
「これはもっと深い忠誠の証なのです。」
綿の靴下を丸める様にレオンは脱がして俺の右の素足を持ち上げて脚の甲へ唇を落とした。
全く、このガキはっ!
文句を言おうとすると、ルネとレコが近衛兵の軍服を持って現れ、俺の足を持ち唇を強く押し付けてくるレオンを見ても平然としていた。
そして何事もなかった様にレオンは俺の靴下を履かせて室内履きに俺の足を入れさせた。
精神的に疲れた俺はソファーへ背中を預けてレオン達を見ていた。
レオンは嬉しそうにルネとレコから近衛兵の軍服を受け取った。
暫くすると補佐官が俺を呼びに来たのでレオンをルネに任せ、俺はレコと共にジョルジュの元へと足早に向かった。
何アレ。
怖い、あの餓鬼、怖いよ。
「凄いじゃん、アル。」
「あー?何がよ。」
「天才と名高いレオンハルトから、アルに対して隷属しますって誓わせる何て。」
「げーー、何じゃそりゃー。」
「元は宗教的なモノだった筈だよ。」
「怖い、モスニア人、マジコワイ。」
「はははっ、片言になってるよ。悪い事じゃ無いから有難く受けとけよ。」
「レコ、もう疲れたよ。」
凡人は英雄にはなれない。
そして英雄は凡人には絶対になれないのだ。
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アリロスト歴1815年 12月
レオンがウンザリしていたのと同じように、モスニア国民も革命政府(総裁政府)にウンザリしてたみたいで、クーデターで政権を奪取したのにレオンは大人気。
ここら辺が英雄が英雄たるゆえん。
レオン自ら政権を樹立し名を統領政府と改め第一執政権を握った。(独裁権)
グレタリアンはマター島を奪取しよう試みようとしたが、対モスニア強硬派が失脚し国内で宗教、労働者運動の活発化に於ける問題が頻発していた。
レオンもズタズタに寸断されている社会システムの構築や経済問題を解決せなければなかった為にミワン和約を結ぶことに為った。
オーリア帝国とも北グロリアは保護国として、国王夫妻の軟禁が解かれネヴィル和約を締結した。
レオンは国内でも諸改革を行った。
全国的な税制度、行政制度の整備を進めると同時に、革命期に壊滅的な打撃を受けた工業生産力の回復をはじめ産業全般の振興に力を注いだ。
翌年にはモスニア銀行(政府銀行)を設立し、通貨の安泰を図った。
1リラン=10リル=100リラ。
1リランの純銀含有量は4.5gとした。
忙しく動いているレオンだが俺へのラブレターが止まらない。
いや、多分本人には恋文なぞ書いてる心算はないのだろうが、絶対に死後発見されたらレオンは腐ってたつう定説が出来そうなので、コマメに焼却処分をしてやってる。
てかレオン寝ろ!
脳細胞が死滅するぞ。
俺の香りを思い出して手紙に書く暇があるならモスニア美女とヨロシクして安眠して貰いたい。
互いの心の平安の為に。
まあ、そう言う愚痴もあるのだが、道路整備や線路整備へのアドバイスも求めて来てるので、仕方なく返事を書いている。
でもって亡命した知識階級の人間たちをモスニアへ帰して欲しいと嘆願書もレオンから一緒に届く。
~~~白桃の薄皮を手で触れる度にアリーの白い肌を想い出し俺の胸が騒めく。(中略)
うん、桃を食べる度に、レオンは大変なんだなー。(棒)
フンっと俺は鼻で笑って手紙の続きを読む。
憲法を確りと作り法整備もしたいので亡命者に声を掛けて欲しいとあった。
俺ってレオンに手を舐められるほど忠誠を誓われた記憶が在るのだが、これってパシリじゃん!
てか、何が魂を捧げるだ。
レオンから捧げられてるのはラブレターー擬きとパシリ案件だけだ!
仕方ないのでレコにラブレターを読ませてパルス新聞へとダッシュして貰った。
そして本日のレオン作駄文2通目が届いた。
外交が出来るモスニア貴族を頼む。
ほー、俺に貴族の紹介を頼むとはガキめ。
それが出来る位ならジョルジュに王位を押し付けたりしてないっつうの。
ブチブチ文句を良いながらルネに「平民とは何か」の著者ジョエル・シースとレオンをドリードコミュニティへと引き入れたエドガーをトゥリー城に呼んで貰った。
ジョエルは由緒正しき家柄で司祭になれる程で政治力も在るし法律にも詳しい。
そんな訳でレオンの要望を伝えた。
王党派で無いみたいなのでソコも特典が高い。
でもって急進派シエラから狙われ出して即時撤退をした株屋を遣っているブルジョワたん。
話を聞くとガロアの人で俺より5歳年下で一見「いい人」声も心地良くてやっぱり「いい人」。
そして卑猥なんだよー。
エドガーは絵とか木像彫ったりもしてるんだけど、絵が騙し絵に成ってて俺が椅子に座って転寝しているように見えるけど、光を当てる角度を変えればレースのカーテンが巨大な蜘蛛に成って俺が蜘蛛の糸に縛られて下半身を喰われてるつう、俺と蜘蛛の絡み絵。
そう言うさ角度や色、光の計算出来る人間て絶対貴重なのに式の発表も論文書いたりもしないで、俺を素材に騙し絵描いたり、才能の無駄遣いな俺素材のダッチワイフをコルクやラワン材、儲けたら象牙や香木でゴミを創り出している。
もう流石に俺も61歳になっているので騙し絵やゴミを他所様に売られても気に成らないけどさ。
エドガーあんたってば革命の発端を作って、レオンや一応命は助かってるけどシエラ元党首マリッツ・ミケロネつう真面目で有能な弁護士を、革命に引っ張り込んだ責任も感じて欲しいわ。
プンスカ俺が文句言うと良い声で耳元で語って来た。
「まさか温和で生真面目な男があそこまで残酷になるなんて思いませんでした。私ですら殺そうとするだなんて。」
「全く、モスニアはズタズタだよ。エドガーは責任取ってレオンの補助をしろ。これは私からの命令だ。儲けさせてやっただろ?私の身体で。」
「はい。畏まりました。」
「次は逃げ出すなよ。」
「はい。殿下に忠誠を捧げます。」
「商人に言われてもなー。」
「必要在りませんか?」
「いや、必要だ。」
俺はレオンにしたようにエドガーに静かに右手を差し出した。
エドガーは床に正座して平伏し俺の右手を恭しく取り、右手の甲へ唇を付けて其の侭に離さない。
今、絶対にエドガーって恍惚とした表情を浮かべてるんだぜ。
俺が年を取って、やっぱり変態集合密度が上がった気がする。
俺はエドガーとジョエルをレオン迄送り届ける様にルネに頼んだ。
そしてレオンを狙った暗殺も増えているのでオーシェ一族の護衛もお願いした。
今レオンに死なれると面倒なんだよ。




