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自由の対価

アリロスト歴1812年   11月



  

うん、実はムカついていたんだね、レオンハルト。

もう少しでランダ国の東南に或る領主や公主を全て平らげれたのにー!(怒)みたいな?

一部の軍隊と派遣議員チームを残してランダ国西部の港から一路モスニアへ。

と、向かう序に少し南西に下って元モスニア植民地スカベラ諸島に集うグレタリアン船隊を各個撃破。

 モスニア船隊が掃討戦に移ろうとしたらグレタリアン船隊が撤退して行った。

 海軍を指揮しているのはレオンハルトでは無い筈なのだが、レオンハルトが居ると全体の士気でも変わるのかね?おっかねーな。

 つうとこで俺が欲しかったスカベラ諸島はモスニア植民地に戻ってしまった。


 補佐官君が宣う。


 「グレタリアン船隊は少し開き過ぎていて(後略)ー 。」

 「あー、悪いな、アルって全く戦術、戦略に興味が無いんだ。」

 「ハイ、すまんねー。基本的に軍事は私の案件じゃないのだ。昔はラゼ大佐たちが居たから聞いてたけど。あのクソ爺が帰れと命じても死にました、つって帰ってこない。」

 「アルが扱き使うから。」

 「えー、レコやルネ程は仕事を頼んでないよ、一応近衛だし。」


  ブツブツと文句を言いつつ、補佐官から俺は「今日のモスニア情報」報告を聞いた。

ランダ国は軟禁国王夫妻が敗戦を認めたので占拠状態の侭。

ギール国、プロセン王国、オーリア=神聖ロマン帝国とは休戦協定。

北グロリア、ポーラン王国、エーデン王国、スロン王国は隣接していないので休戦せずに態度保留。

ルドア帝国はプリメラ大陸東南地域に或るモスニア商館を占領中。

グレタリアン帝国は本気で開戦途中。

グレタリアン海軍は元モスニア領有王国ミチチ、セットーを占領、マター島へ海軍を集結させてモスニア東シザリア半島に睨みを効かせ中。


  その合間にモスニア総裁政府はサラリと憲法改正を行い、国民選挙を実施。

 ボレン男爵が総裁となり、ブリエーコ男爵・ラスア子爵両名が副総裁としてモスリアを運営する。

 先ず、各地方都市に設置していた革命裁判所を閉鎖。

 次いで穀物他輸入の自由化をし、統制していた価格が次々に撤廃された。

 元から革命政府は外国商会、外資金融業は保護していたので革命政府内で自由に活動で来た。


解散したシエラ・クラブ党首マリッツ・ミケロネが3権を集中させていた公安委員会は、軍事と外交だけに縮小し、警察は保安委員会が引き続き担当、そして立法委員会へと権限を大きく委譲した。

 でもってラスア子爵が公安委員会を、ブリエーコ男爵は保安委員会を、ボレン男爵が立法委員会委員長の座に付き、見た目は3権分立がなされた。


  問題があるとすればラスア子爵、ブリエーコ男爵、ボレン男爵はシエラクラブ出身で「急進的な改革」を推し進める派閥で、マリッツら綱紀粛正派を共に粛清した2名は王党派と言うよりは過激な改革を緩めようとする「革命穏健派(元ドリードコミュニティ)」なので、既に「革新VS保守」と言う対立が在る事か。

 考えて見ればレオンハルトも、ドリード・コミュニティ→シエラ・クラブ→現在は総裁政府で公安委員会所属と成っている訳で、軍人だからと軍事だけを考えて安穏とは出来ないのだな。

 レオンハルトの現状が偶々なのか意図してた事かは分からない。

 しかし俺は「レオンハルトが現政府と合わないかも?」、そう何となくそう感じた。


 そしてモスニア総裁政府の危機は直ぐに訪れた。

 輸入自由化、価格自由化によりモスニア通貨は高騰し手に負えないインフレに成った。

 打撃を受けたのが国内産業(食料・生活備品工業等々)、反して莫大な利益を稼いでいるのは軍需物資関連企業、金融業、そして外国資本会社だった。


 「なあレコ、政府が安定して無い時に、何で態々自由思想を実現しようとするのかね。」

 「今、モスニアに取って自由=革命正義だからだろう。」

 「------自由、その呼称で多くの血と命が捧げられた。自由とは謀略や蛮行を何所(ドコ)まで欲すのでしょうか。------」

 「マリッツらに処刑されたシモーヌ・ハッセ夫人の言葉か。」

 「ああ、世論へ問うには良い遺言だと届けられたドリード新聞を読んで思ったのだがな―。」

 「その記事を書いた記者も反革命の罪で処刑された。」

 「全くさー、人的資源の浪費でしかないよ。女性思想家も切り取り能力に長けた記者も貴重なのに。私の知らない有能な人間が多く失われているのだろうね。」

 「そうだな。そしてそう言う有能な人達は祖国モスニアを捨てないのさ。」


 俺は、如何にも出来ない時代の歯車を想い、唇を噛み締めて溜息と言えない言葉を封印した。

 ルネが静かにジャスミン茶を俺の前へと置いた。

 戦火で失われるフロラルス民を減らそうと、思案した行動に間違いが在ったのだろうか。

 俺は黙した問いを、ジャスミンの香りと共に喉から胃へと流し込んだ。







  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



  アリロスト歴1813年   5月






  義兄ランツ3世は、痩せて疲れた顔で応接室にあるソファーで腰を下ろしているた。

 はっ、レティに何か。

 はいはい、あるわきゃない。

 ヨーアン連合モスニア対策会議でパルスに集合していただけだよ。


 ハイパーインフレに寄り失業した人や倒産した工場主たちがドリード市内や手工場で賑わって居た地方でモスニア総裁政府に抗議する反乱を起こした。

 レオンハルトを始めとした各将軍の部隊が各地方へ赴き反乱つうか暴動を鎮圧。

 その間に新たな通貨単位(タルー)をモスニア総裁政府が作り、政府保証の元で紙幣が刷られた。

 まあ、当然信用はゼロなので、極細分割した土地権利書みたいなもの。

 しかし国を運営しようにもモスニア国庫に資産は無かった。

 ポガール王国やランダ国から分捕った資産は何処に行ったか俺は聞きたい。

 つうコトで資産が無ければ他所から盗れば良いと、唐突にフロラルス王国へ宣戦布告して来ました。

 いや一、一応理由は「国家犯罪者であるルナンド9世を保護しナンチャラカンチャラ」だよ。


 今回モスニア軍は、平和な時はモスニア、フロラルス間の往路にも成っている南西の平坦な道が続くマカット地域と、ロヴァンス領から南東に或るニーア湾岸都市へ陸軍と海軍を使って侵攻して来た。

 モスニア動乱中の現在はフロラルス常時警戒態勢にしているよ、当たり前。

 で、驚くことにモスニア東沿岸に或る海域から出たモスニア艦隊とミチチ島から進出していたグレタリアン艦隊と戦闘に成った。

 ナスル海域の会戦。

 えー、アソコの海域はフロラルスでは、ロバール海域と呼ぶのに。ブツブツ。

 フロラルスでもロヴァンス領とコルカ島に居た艦船が出張ってたけども下手に攻撃してグレタリアン艦隊に後で因縁付けられたら堪らないと優秀な海軍卿リシューの息子(現海軍元帥)が様子見。

 ギリギリでモスニア海軍が勝ったとも言えるがグレタリアン艦隊とは痛み分け。

 モスニア軍はニーア湾岸都市への侵攻を断念。


 そして低地マカット地域では、約1万8千名のモスニア兵と2万3千名のフロラルス王国防衛軍隊が、戦い圧勝した。

 マカット平原の戦い。


 それで此れで勝ったと思うよね?

 しかし英雄レオンハルトは甘くなかった。

 千数百名の部隊を率いクスア地方のモスニア領から高地を抜けて南グロリアに進軍。

 そして南グロリアにあるロマン市を制圧後、北グロリア王都へ続く公国を落とす快進撃を続けて電光石火で北グロリア王宮を占拠。←今ココ。

 ねっ?

 頭が可笑しい。

 まあ、南グロリアも北グロリアも自由主義推進の革命政府を切望していた層が水先案内人をして有り得ない程の協力体制だったとか。

 軍馬を含む軍需物資の提供や宿泊施設に自らの屋敷を貸し出すとか、女を用意して置くとかさ。

 時代はブルジョワジーと資金を求めてた。のか?


 北グロリアの国王夫妻は逃亡失敗して現在は離宮に軟禁されている。

 はい、北グロリア王妃は義兄ランツ3世の実妹なのだ。

 別に妹夫婦を助けたいから義兄ランツ3世が悩んでいるのでは無い。

 帝国の皇帝だった義兄ランツ3世の憔悴理由。

 レティを何所へ逃がすか会議中も思案していたそうだ。

 ご心配は有難いが、それって如何なんすか?つうて突っ込みたい俺を如何してくれる!


 「やはりヨーアン諸国では安心出来る場所はないな。ナユカか北カメリカにでも」

 「ストップストップ義兄上、絶対にレティの事だからオーリア帝国からは逃げません。自分が守りたいモノを守る為にレティなら戦いますよ。それだけは私が自信を持って語れるレティの全てです。帰国したら義兄上もレティと話し合って見てください。」

 「王族としての矜持か。」

 「違いますよ、レティの性格です。私はそう言う王族のプライドとかは教えていませんし、教えられませんよ。真っ先に逃げ出したのは私なのだから。」

 「そうか、私もじっくりレティと話して説得しよう。」

 「いえそんな暇は無いでしょう。北グロリアは隣国なのですから。」

 「ふん、我が軍がモスニアの小僧などに後れを取るものか。帝国軍は近代戦闘を学んでいる。まあ昔ながらの選帝侯や公主たちは分からないが。」

 「まあ、でも万が一も考えて義兄上の孫や親族は北カメリアへ旅行させるのが良いですよ。ナユカの北カメリア領では例の保養地が在るので気兼ねなく長期滞在出来るでしょう。ジョルジュ陛下の孫も一応ナユカへ行かせます。」

 「うん、そうか。ではオーリアからフロラルスへ行かそう。」

 「ええ、ジョルジュ陛下に私から伝えて置きます。」



  ルネが入れてくれた珈琲を美味しそうに飲みつつ、義兄ランツ3世はルネを口説く。

 ああ、そうだよ!

 義兄ランツ3世とフリード2世とは同好の士だったのさ。

 フリード2世が亡くなり絶不調でトゥリー城に現れて義兄ランツ3世は俺に暴露しやがった。

 道理で雰囲気が似てるはずだよ。

 勿論、同好の士ってだけでフリード2世と義兄上がそんな関係には成っていない。

 好みが在るらしーよ。俺に説明は不要だったつうのに。

 俺にぶっちゃけトークしてから気紛れに義兄上がトゥリー城に現れては、ルネを口説きやがる。

 ルネは若く見えるけど爺さんだからな。

 俺は思うんだけどカリント教って、人間の欲求を圧殺し過ぎたのじゃ無いかと思う。

 そしてヨーアン諸国では王族の血は無闇に撒いては行けないと幼少期から厳格に教育される。

 もう勇猛果敢なヒャッハー!王族がタブーに挑戦して行く様が目に見えるようだ。

 案外フリーになった方がノーマルに成るんじゃないかと俺は思っている。

 そう、じじいの様に。



   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




  さてカメリア独立戦争時に比べて両軍ともに一気に兵数が増えた。

 此れはモスニアが革命兵士増強と言う事で30万人強制徴募政策の賜物。

 そしてフロラルス王国では、ベルイル元軍務卿たちと相談して、フロラルス王国防衛兵つう感じで80年代から、市民や王家直轄領に居た元農奴たちを近代兵として育てていたからだね。

 能力の高い人には当然士官学校へも行って貰っている。

 まあこうやって貴族からも徐々に武力を取り上げて行くつもり。

 人員は抑制気味に募集していたけど現在は陸海合わせて約20万人だ。

 ベルイル元軍務卿たちはフロラルスの国土や植民地を考えると兵数が少ないと言うが、俺は全人口の100分の1より少ない数で運用出来ればと考えた。

 賞与や保証も考えると欲しいだけ増やすって訳にも行かない。

 なるべくは軍人教育以外の事も教える様に依頼はしておいた。

 イザと言う時は軍人以外でも生活出来るようにして欲しかったからだ。

 まあ、本当は軍隊など気にしたく無かったけど、カメリア戦の報告受けて仕方なしと割り切った。

 貴族子弟の近衛兵他、儀礼的な騎士と言うか軍属は約3万人。

 謁見式とか他国の賓客を招いた時用の名誉職だと俺も開き直っているのだ。


  そして今回の戦いは、一気にヨーアン諸国に広がり、本当の意味での近代戦へとシフトして行くだろう。







  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



  アリロスト歴1814年      1月





 昨年9月にモスニアの王都ドリードで又もやクーデターが起きた。

シエラ・クラブ党首マリッツ・ミケロネたちを殺してクーデターの旨味を知ったのかね。

ボレン男爵、ブリエーコ男爵、ラスア子爵と言う例の3人組再び。


 強権を持って改革すると言う断罪マニアな元シエラクラブの遣り方は相変わらずだった。

 しかしドリード市民も漸く血の狂乱状態から覚め、穏やかな施策を望む様に成っていた。

 今更かよ!

 自由革命派による経済政策の失敗もあり、モスニア国民たちは昨年に行われたの選挙で、古い制度でも良いモノは戻すべきと言う(穏健派)王党派を選んだ。

 選挙の結果王党派のブリンノが総裁となり議席の多くを王党派が握り、亡命貴族の恩赦や教会改革の見直しが図られた。

 公安委員会にいるラスア子爵は、レオンハルト将軍や有名なコージュ将軍をドリードに呼び戻したが、レオンハルトは戦時を理由にして、部下だったオーエン部隊をラスア子爵に送った。

 ドリードで会議をすると総裁ブリンノや王党派議員を招集し、ラスア子爵はコージュ将軍部隊やオーエン少将部隊に全て拘束し逮捕させた。


 選挙で当選した164人は無効とされ、総裁ブリンノや著名な役員たちは南カメリアに追放となった。

 そして憲法に宣誓しなかった忌避聖職者が何百人も南カメリア・ダイエやセ・ラ島、ロオン島の廃墟へ閉じ込められた。

 また教会での日曜礼拝は禁じられ、報道の自由は規制された。

 新聞は発行禁止処分、多くのジャーナリストは追放処分となった。


 議会は自由革命派が最大となり運営された。



 うわあぁぁー、つう記事が多過ぎ。

 追放されたジャーナリストや住民たちが逃亡を助けた枢機卿、司祭、司教がフロラルスに逃れて来たのを、パルスジャーナルでは保護し、詳細なモスニア情報を入手し、記事として出していた。

 虐殺の様子なんて誰が知りたいんだ?

 俺はグロがマジで駄目なのでこの頃は、ルネやレコが記事概要を話してくれるのを聞いているだけ。

 役立たずでスマン。


 外国人商人は保護される事を聞いたボルドやトーマは知人をモスニアへと情報収集と小遣い稼ぎに行かせていた。

 其処での情報によると総裁政府への信頼は市民から無くなり連勝を続ける英雄レオンハルトの人気は著しく高いそうだ。

 そして財政赤字に苦しんでいたモスニア総裁政府は、レオンハルトの人気を苦々しく思っているが、諸侯に戦勝した戦後賠償金は国庫の補填に役立っている為に、今までの政敵のように邪魔だからと言って簡単に処分出来ない状態らしい。



 まーね、行き当たりばったりだもんなー。

 本当にさ、俺じゃないんだから。

 モスニア新・新法典を出して憲法作る所までは思考していた気がするけど、ドリードコミュニティを消滅させてからは邪魔な層をただデリートさせていただけだよね。

 やっぱり緑藍と話してた通りレオンハルトが皇帝になるんだろうか。

 そんな軍事の天才とフロラルスが戦うのは嫌だなー。

 回避する手段------無いな。

 地政学的に陸路を使おうとすればモスニアに取ってフロラルスは邪魔だもんな。

 まっ、覚悟を決めるさ、アルフレッド。

 もしもレオンハルトに負けたら、ジョルジュの代りに俺が責任を取るよ。

 一番の問題はそれをジョルジュが受け入れない事だろうな。

 むーん、今から説得手段を考えて於かないと。


 俺は瞳を閉じて自分の思考へと没頭した。





     ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


  アリロスト歴1815年   9月


  そして、1年半後レオンハルト・アルゴーはモスニア総裁となった。


 南グロリア共和国(21国)は2ヶ国(チリア公国、コロア公国)を除き全て制圧。

 北グロリア共和国は王都エステアを支配下に置き7か国を制圧して姉妹都市として自治領とした。

 プリメラ大陸にある北西沿岸ぶ、西南沿岸部の元モスニア植民地解放。

 ランダ共和国誕生。北東部公主は抵抗。

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