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必殺美少年=ルネ登場=

 

 アリロスト歴1770年     12月     軍務兼外務卿シャスール公罷免。   




 祝※懐妊


 実は9月にアンジェリークの懐妊を知らされたよ。一発で男だったらいいな。

 勿論アンジェリークにも誰にも言わないよ。

 どうしても罪悪感が半端ない。

 ロリ的な意味では無く、俺って間男的?それか父親的な何か。


 そんな事で悩んでいて、何と無くアルセーヌに聞いた。


「お前って女居る?」

「うん。何人かは。」


 地獄に落ちろ!なんて言わないさ。思うだけで。はいはい、色男色男。





 そしてとうとう、じじい陛下がパルス高等法院にベッタリなシャスール公を罷免した。


 俺は此の人(シャスール外務卿兼陸軍卿)が苦手なんだよね。

 穀物取引の自由化するしさ。

 その後ヤバくなって自由化を止めたけど隙あらば小麦自由化しようと画策する。

 そして打倒グレタリアン帝国を目指して軍備拡張、港整備とかする割に「利が無いからと戦争を止めようとした」有能な将校たちを、パドゥール夫人と共に罷免させてるしな。

 俺とアンジェリーク(オーリア帝国)との婚姻を取り纏めたのもグレタリアン帝国との戦争を見据えてのことだ。

 まあオーリア帝国も戦争している場合では無かったが。


 そりゃなシャスールが公爵に為れたのもパドゥール夫人のお陰だけろうけど、ランバリー夫人への敵意は異常だとも思える程だ。

 最初は政治に興味が無かった為に相手にしてなかったランバリー夫人も、シャスール公の執拗な宮廷工作の為に、防戦を止め反撃し始めた。

 敵も多かったシャスール公に敵愾心を持つ廷臣たちを集め共同戦線を張り、争った。

 だが俺から見ればランバリー夫人は、遣りたい放題のシャスール公VS彼に冷や飯を喰らわされてる廷臣たちの政争に巻き込まれてしまったと考えてる。


 じじい陛下から寵愛を受けているにも拘らず、政治に関心を持たいないと言う女性は貴重なのだ。

 だいたいが爵位だったり政策立案への関わりだったりな。

 アザイーダ伯母上たち(三十路過ぎた反抗期)やシャスール公一家(妻や娘も参戦)如きでは、ランバリー夫人は潰れないと思うが、俺的には頑張って欲しい。




 そんな宮廷闘争がエトワル宮殿に渦巻いてる中、俺の財布商人ボルドがニヤリと質の悪い笑みを浮かべて俺に「使って欲しい」と見目麗しい美少年を連れて来た。

 このボルド、何時もは上品で人の良さそうな老人だが、商談の時は偶に「なんつう悪徳商人顔。」と厭らしい笑みを湛える。

 麗しい美少年だが俺はソッチの趣味は無い。


「少し訳アリで逃げてるのを偶々拾いましてな。殿下なら教会からは縁遠いから好都合。」

「えー、それって火薬じゃないのか。確かに神は信じてもアレらは一片も信じて無いが、教会と争う気はない。ボルド、前に約束したよな。商人ボルドには忠誠を求めぬ代わりにエル王家を危機に晒すな。それさえ守ればボルドに利益を与えると。」


「はい、勿論です。名前が無いと不便なので都合上、彼を≪ルネ≫と呼んでます。ルネはアソコでの掃除屋でして、殿下が必要とされる者です。」

「私は暗殺は本意では無いのだが—————実は情報を集めてくれる者は欲していたのだ。流石ボルドと言うべきだな。ルネを雇うよ。」

「フフ、有難う御座います。東イラド会社清算の情報料で御座います。王立事業からの会計報告は後日改めて参りましょう。」


「ああ、頼む。ルネは私に仕えて構わないのか?まだ幼そうだ。養子にでも入り、学生か士官か選べるが。」

「いえ僕は変人王太子殿下にお仕えしたいです。それにこう見えて32年間は最低生きています。氏名年齢全て不詳で済みません。」

「別に構わない。年齢は驚愕したが、エル王家に尽くすならば。

これからどうか私に手を貸して欲しい。」(コイツ、俺を変人王太子と言いやがったゾ。)



 やがて礼を述べつつ商人ボルドはアッサリ帰って行った。

 一見12~15歳にしか見えぬルネは淡い栗色の髪を後ろで1つに結び、細く整えられた同色の眉、薄い水色の瞳と整った鼻陵、(クソっ綺麗な顔しやがって。)

 逃げてた理由を話したがらなかったので聞かない事にした。


 俺に取って聖職者集団たちは、触れては為らぬ亡者にしか見えないし、王侯貴族やその血縁者が宗教で密閉された場所に居ると想像してしまえるのが恐怖の最たる所以。

 我欲が特に強い王侯貴族たちが「神のみぞ全て」と、祈りを捧げる事で満足出来ていると、思える人々を俺は羨ましく思う。信仰深い純粋な貴婦人たちを特に。

 訳アリが過ぎる、とも思うが諜報など後ろ暗い事を頼める人間が欲しかったのでボルドGJと思って於こう。精神衛生的に。





 そのルネの暴発は突如始まった。


「此処の使用人レベルが低過ぎ。」


 と、ストレスで暴発して次々に小姓5人従者10人、侍女8人小間使い4人を引っ張って来て、2階にある俺の私的空間に置いた。


 いやー流石だわ、気配しないし(怖いけど)、足音しないし(怖いけど)、動きはしなやかだわ。気配り出来てるわ、社交マナーも良いし、気品ある。最高です。

 エトワルの宮廷官僚ってダメダメじゃないか。ええぇぇ、アレ等に何万リーブルも払ってるの?

 そして何故に美形揃い。知りたいが怖い。触れてはいけない何かだ。ウン。


 暫くしてルネが、言った。

「盗み聞きしようとしつこいのと王太子妃様に態と嫌味を言う者たちがいる。」

「はあー、鬱陶しい。如何やって消そうかなあー。」

 と、何気に俺が答えた。


 その10日後、

「5人程、辞めると書置きして居なく為りました。」

 と、いう報告がラシエット宮侍従長から在った。


「なー、ルネまさかってないよね。」

「ふっ」軽くルネが笑った。


「あのな、っても良いけど、俺らに迷惑が掛かるやり方は駄目だぞ。」

「当り前のことを言わないで下さい。」

「うん、有難う。ルネたちも危ない時は逃げる。此れからもずっと元気でいて欲しいからな。」

「はい。」


 俺もきっと日本でならアッサリ殺人を認める事はしないが、2階はフロラルス王国改革の作戦本部なのだ。まだアルセーヌとボルド、ルネしかいないが。

 それでも大事な場所だ。

 一応執務室と談話室と俺の寝室には壁を厚くし扉を二重にして形ばかりの防諜もどきを施しているが完全とは言えない。

 声を潜めないと防音がまだまだこれからなのだ。

 今はまだ貴族や教会、他の特権階級へ漏らされるのは困るのだ。

 好奇心は猫をも殺すと彼等には諦めて貰おう。


 それにアンジェリークは王太子妃であり、オーリア帝国からの国賓なのだ。

 アイツらのような立場の人間が粗略に扱える存在では無いのだ。

 身分を無視した罪を償い給え。


 俺は知っている。

 エトワル宮殿や王太子宮で、奴らがまだ若いアンジェリークを甚振っていたのを。

 予知夢の中で独り耐えてたアンジェリークを。      


 裁判の時、有りもしない罪を我らがしたことと証言し、悦に入った歪んだ顔を知っている。


 俺は宮廷官僚たちを心から憎悪しているのだ。




    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 シャスール公を解任した事で元パドゥール夫人勢力(パルス高等法院は巣窟)たちが一斉にじじい陛下とランバリー夫人へ批難を集中させた。

 鬱陶しい状況だ。

 じじい陛下に付けられている宮廷官僚たちが、エル3世が定めた伝統あるエトワル宮廷マナーを棄損する暴挙として訴えようとしている。


 衣服を着替えさせるのも1人では無く、鬘を取る者、髪を梳く者、帯を外す者、クラヴァット、コート、ウエストコート、キュロット、靴下etcetac・・・。

 じじい陛下の一挙手一投足全てに宮廷官僚が付いて日々の儀式として行うのだ。

 そして宮廷官僚たちは宮廷貴族により押し込まれた者たちなので、

 あの手この手で要望を伝える者をじじい陛下の間近へと導く。

 寝台交渉と言う。マジで。

 当然エトワル宮殿でランバリー夫人が過ごす時も宮廷女官が付きます。


 ランバリー夫人が脱兎の如く嫌われていたのは、煩わしい宮廷儀式から逃れる為に、改築したエトワル宮殿3階では宮廷式儀礼を排し、じじい陛下とブルジョワ式生活を楽しんでいたからと推測した。

 そして離宮モンシュシュに移ってからは、もっと自由にじじい陛下とリフレッシュしている。

 良い事だ。

 俺も2度と御免だ。信用していない人間に触れられるなど鳥肌が立つ。


 しかしそうか、ははは、俺がじじい陛下と密談出来ているのはランバリー夫人のお陰だったか。

 そして信用出来ない人間が作る料理も食べたくは無い。

 極悪非道王太子に為ったのは、排泄物解雇事件以前に手を洗わずに調理しているシェフたちを解雇したからだった。

 数度お願いと忠告したのだが改善の余地なし、だから、さようならした。        


 トイレ問題が未整備な頃だったので、其の手で作った物を食う事は俺には無理だった。


 他の人たちにはエトワル宮殿で食べて貰い、俺は自炊したよ。

 基本、エトワル宮殿では、狩り=食事(鍛冶場で自炊)米が有れば楽なのにと自答してた。

 (現在はアルセーヌが連れて来てくれた人たちを俺専属の料理人集団にしている。)


 宮廷官僚たちが形振り構わずランバリー夫人や俺の足を引っ張ろうとする理由。

 伝統が———誇りがと言う人もいるかも知れないが、じじい陛下の小姓が棒給1万リーブルですってよ(労働機関3ヶ月)。日本円に直すと約5千万円。(余り円に通算しても意味ないが)


 俺が罵倒されるのは当然だよね。

 だがランバリー夫人は解雇などしていない。(現状)

 そこで彼等は考える。此の侭だと不要だと思われ陛下に解雇されてしまうかも知れない。(推論)


 そして結論に至る。地方慣習に反すると判断したならば、その勅令の登記を拒否することもできる勅法登記権があり、国王に助言を述べる建言権有すパルス高等法院で国王を諫めて貰おう。


 結果、パルス高等法院からエル4世へ、伝統に則り現状を改めなさい。

 (何と俺にも言って来た。) 

 要は、じじい陛下は、ランバリー夫人と別れなさい勧告。


 俺は真面目に生きているゾ。

 それでも変人で冷酷非道な王太子として脱兎の如く嫌われている。

 ふふん♪王族何てこんなものですよ。遜っているのは言葉だけ。


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