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リプレイ

アリロスト歴1808年    3月




  様々な嘆きを残して、2月を過ぎると緑藍は陽ノ本へ向かう船に乗って行ってしまった。

 一応、クロエの事を伝えたらやっぱり会いに行っちまった。

 俺よりも健全な精神の持ち主なので、くれぐれも緑藍ジョークでクロエを揶揄うような真似は、「ダメ!絶対!」と固く禁じて置いた。


 熱心な緑藍崇拝者は共に真龍帝国に付いて行きたがったが、緑藍はサッと冷たい表情に変えて告げた。


  「もし付いて着たり後を追って来たら僕が殺さないと行けなくなるからね。」


 その凍るような緑藍の声に誰も否は言えなかった。

 だが、そんな中で緑藍と共に旅立てる幸運?な少年もいた。

 シャルル君、12歳。

 ゴドールの祖父方にあたる縁戚らしい。

 5歳で既に絵筆を持ち8歳の時にゴドールが見出し内弟子として育てていた様だ。

 なんだろうね、この12歳と思えぬ色気とヤバくエロイ空気感。

 11歳で緑藍とフリーウェイなカンジで出会ったそうな。

 おい緑藍、お前は児ポ法違反じゃねーか。

 つうかゴドールも緑藍が巣食う離宮モンシュシュに11歳の子供を住まわせるなよ。

 でもってシャルルが絵を持ってトゥリー城へ挨拶に来た時、俺に跪いて口説いて来たので頭をシバいてやりました。


  「(俺を)口説くなんぞ100万年早いんだよっ!」


 ゴドールに年とか聞いてたんで、「調子に乗るなよ」と、俺はシャルルを躾けた心算だったんだが、緑藍と画家チームたちが調子に乗せちまった。

 絶対、ゴドールが幼いシャルルに碌な教育をしていなかったに違いない。

 「幼い頃の自分にそっくりで」とか嬉しそうに語ってるゴドール。

 「へー。」


 まあ、そんなシャルルの才能は本物で、墨絵で描かれた素晴らしい絵にジョルジュは感動して爵位を授けた程だ。

 緑藍にシロツメクサの冠を被せる俺。

 膝をついて頭を伏した形なので緑藍の顔は見えないが、威風堂々とした俺が凛々しい顔で冠を授けている様子が「神授王説の神話絵のようだ」とジョルジュに言われた。

 「俺は神だ」って言えってか?

 ゴドールの頃から思ったが画家って言うのは王族を美化しちまう生き物なのかね。


  不意を衝いて緑藍が俺にディープなキスをして嵐のように去って行った。


   「何で女じゃないんだ、緑藍。」



 


   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 緑の嵐が去った次は別の嵐が準備されていた。


 第2回モスニア英雄伝説会議———!

あっ、違った反乱鎮圧会議でした。

集まるのはポガール、ランダを除いた何時ものヨーアン諸国です。

俺は鎮圧とか無理だと思うとジョルジュと今年引退のシャトレ外務卿に話して置いた。

いずれ食料不足に気付いたらモスニアとは戦いになるだろうから国境防衛の準備でもしとくべ。

つう感じだ。

 

 モスニア貴族も割れていて現政権(権力)側に居たフロラルス、オーリアていう王党派皆様と権力から外されていた南グロリアに領地を持つ自由派の皆様。

 でもって折角売買官制度で司法官つうものを購入したのに、美味しい役職が無くて今一つな法服貴族等はブルジョワジー側、ドリード・コミュニティに肩入れしている。

 そして王国軍の度重なる敗戦で力があった宮廷貴族もボロボロと亡命していた。

 そして農民暴動で殺された領主もいるとか。

 もう薄くなっているアルフレッドの夢見の記憶が少し蘇って来た。

 こうなるとどんな形の意見も市民側に賛成以外は誰も受け付けなくなるんだよね。


 ルフルティー宮で会議をしているだろう時間にじじい達とモスニアの今後の動きを話し合ってた。

そこに急いで秘書官が入って来た。

「モスニア市民軍がポガール王国へ侵攻したと報せが在りました。」

その知らせを聞いて、俺たちは顔を見合わせた。



 俺はルネに読後の報告書を持って来て貰いパラパラとページを繰る度に目で追っていく。

 えーと、国王ルナンド9世が年明け直ぐに国民会議を開くと約束して、 憲法制定委員会の設置した。

 で、翌日に国民会議は、憲法制定国民議会(立憲議会)に改称。

 毎日、山のように新たな法が決議されて、日々暴動が起きる。

 はぁー、アルフレッド。

 俺は嫌な過去が思い出されるよ。

 


 でもって2月に自由派が農民を鎮める為に、封建制度の廃止を立憲議会で決めて農民の解放(領主へ朝貢、処女権など) を宣言したんだよね。

 この自由派貴族の代表に罷免された元宰相スエカがいるのも香ばしいな。

市民の権利宣言が採択されて、何でポガールに侵攻なんだろう?

 「市民軍がポガールに侵攻する理由をレコとボルドは何か聞いてる?」

 「いや俺の方は、強いて言えばドリード・コミュニティと別のシエラ・クラブ(憲友)という新たな組織が出来るかも知れないと新聞社に手紙が届いていたくらいか。」

 「変な話になりますが、食料と弾薬ではないかと。植民地へ行った海軍は多くの弾薬を持ち去るか使えなくしたと港に居たモノが伝えて来ました。しかし弾薬欲しさに軍を掌握出来ていない市民軍が一国へ侵攻するのかと言う陳腐さもあるので確証は持てません。」

 「はー、情報が欲しいが危険過ぎだな。ボルド、その港の情報をくれた人に危険はない?」

 「ええ、その情報を持って逃げて来たので今は儂の店に居ます。」

 「そうか。良かった。じじい、ロヴァンス伯、後でジョルジュに伝えて置くことはある。」

 「ん-、そうじゃの------。」


 「失礼します。エル公爵、ルナンド9世からの親書が届きました。」

 「ジョルジュは?」

 「今はランツ3世と会談中でして・・。」

 「そうか、ありがとう。」



  俺はじじいの目を見て頷き、ルナンド9世の親書に目を通した。


 「はあー、ドリードから脱出するので北のノルエ街の入り口まで迎えに来て欲しいそうです。」

 「ルネ行けそうかのお?」

 「はい、ただ少数で行くので、もし襲われたら意識を奪う許可を頂きたいのですが。」

 「ああ、勿論許可する。ルナンド9世が逃げる時にゴタゴタ言っても気絶させて構わん。頼むぞ。」

 「はい、では伝えて来ます。エル公爵少し席を外します。」

 「うん。無茶をしないと無理だろうけど、自分の命を一番に考える様に伝えてくれ。」

 「畏まりました。」

 「全く、じじいは。ルネは俺の友達なのに勝手に頼んで。」

 「アルフはどうせ頼めんだろう?危険な事をさせるのが苦手だからな。でも今回は王族の命が掛かっておる。8世には酷い目に遇ったが、一応9世は親族だしの。モスニアはどうなるか判らんが王国を如何にかしようとすれば王が必要となる。」

 「はい。じじい陛下、ありがとうございました。」

 「変な呼び方じゃの、アルフや。」

 「いえ、何となく陛下と呼びたかったけれど今はエル5世、ジョルジュ陛下がいますからね。」

 「珈琲を入れて来たヨ。ルネ程は上手に入れれないけど。良かったら、どうぞ。」

 「ありがとう、レコ。」

 「うん、ありがとう、ロヴァンスも飲め。」

 「ええ、頂きます。」


 俺たちはレコの入れた香りが薄い珈琲に口を付け、静かに時が動くのを待った。

 




  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



  アリロスト歴1808年    5月




  正に電光石火だったレオンハルト部隊。

ポガール国境地域へ侵攻後、ポガール国境兵の宿舎を急襲し、武器庫から武器弾薬を徴収。

つうか強奪?

生存兵約200名を捕縛し、モスニア国境沿いの営倉へ収監した。

コレって身代金目的なんすよ。

まあ、近代化していない国の兵は基本的に貴族だから人数が少ない。

グレタリアン?

あそこは元々は海賊だからなー、多くても仕方ない。

 それに今はモスニア王国の植民地を奪う為にプリメラ大陸へポガール王国は遠征中。

 

 レオン部隊がドリードに居なかったのが幸いして無事にルナンド9世がフロラルス王国へ到着。

かなりの強行軍だったのかゲッソリと窶れた顔をしてたとか。

20歳に成るかならないかで急遽、王に成って此の事件は何かと心労が祟ったのか現在は発熱して寝込んでいるそうだ。

 離宮の一室で休んでもらっているらしい。

 勿論のこと厳重に近衛兵でルナンド9世を守っている。

 今回共に来たのは3名の側近と2名の小姓のみ。

 母ちゃんとかは会話も無いので放置してきたそうだ。

 まあ元自分の愛人スエカが王家の敵に回ったので母ちゃんも混乱してそうだね。

 ルナンド9世はまだ未婚だってさ。

 パルスに到着したのは5日前だから体調が戻ったらヨーアン諸国に報告するのかな。

 取り敢えずモスニアとの国境以外では、いつ暴動が起きるか予測出来ないので、モスニア国内にいるフロラルス民には退避勧告を流しているんだけど、全てに伝えるのは難しそうだ。




  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 一応モスニアとフロラルスは同盟国だったらしいので、じじいが許可した領主とモスニアにある領主家との婚姻なんかも日常的にある。

 でもって、そんな親族関係になった貴族の亡命は良いんだけどオーリア、プロセン、スロン、ランダ各国の通り道にフロラルス王国が選ばれて居るんだけど検問がクソ面倒だと報告があった。

 つう訳で「本人に名前を書かせて通して良いよ」と通達を出した。

 そんなの一々調べてチェック出来るか。

 パスポートに写真も無いつうのに。

 フロラルスに滞在・居住しないのであれば通り抜け自由にしたい位だ。

 当然だかフロラルス亡命希望者は一度パルヅに訪れて書類に記入して貰わなければ成らない。

 こんな時の為に作ったのではないが、中央官僚制度を雑にだけど作って置いて良かったと、俺はしみじみと思った。




  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 さて、亡命貴族がパルスに流入してから3ー9区の不動産屋が好景気である。

どの道、土地が買えないので賃貸であるけどね。

それにパルスからはノンディ港行き以外の東北南へ行く領地には蒸気機関車が走っているから駅が出来た所には色々な別邸(貸別荘)も建設されている。

ええ、相変わらず王家直轄領地は人見知り万歳ですよ。

 「国土の5分の1も遊ばせてるとは。」つう嫌味も来るけど、色々作って実験してんだつうの。

植林や竹林作り、それとろ過と浄化と換気の実験工場も作ってる。

実験工場は何かを綺麗にするつもりがヤバ気な物質が出来て、俺は蒼白、科学者は歓喜てな状況。

そして、高炉の煙突作りとかね。

本来は金に成らない非採算部門だった筈だが、発見した危険な物質使って、また新たな工場が出来る。

誰か化学物質を無毒化する能力をプリーズ。

コールタールを燃やして新たな灯りだーとか言ってる発明家を殴った俺は悪くない筈。

兎に角、ガス灯は危険なのだ。

俺は回避し続けるぞ!

もうホントに広い場所が必要なの。

で、床下暖房とかも現在実験中なんだぜ。

人が多いと実験出来ない事が増えるからね。

そろそろ俺もフィールドワークがしたい。

地図と報告書だけじゃなんか寂しい。



  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



アリロスト歴1808年    10月





 えーと、国王(モスニア)が家を出たので(国外)、王権停止されました。

そして主だったモノの法改正が30ほど発令された。

先ずはモスニアのパルス高等法院に似た裁判所を廃止し新たな裁判所を作った。

司法の市民化(民主化)?

そんで徴税請負人制度の廃止。

聖職者民事基本法制定。

亡命者処罰法が成立(亡命貴族は翌年1月1日までに帰国しなければ死罪、国王も含む)。

後は、商売の自由化とギルドの禁止。(同業者組合禁止)

もう色々と考えて今回の事変を起こした気がするヨ。

法改正の内容とか用意周到過ぎ?


立憲君主制に移行するからルナンド9世は早くモスニアに帰って来い!つってますが帰れないっしょ。

どーだろうね、聖職者民事基本法。

カリント信心深い旧教徒たちが多いから受け入れられない気がするわ。

何となく憲法や法改正をした人間てパルス民か、パルスに長期滞在していたのかな?


 「レコはどう思う?1人か一部か判らないけどパルスに長期居た人間説。」

 「確かに聖職者民事基本法と商売の自由化以外はパルスで改革した事だね。ギルドの廃止も。」

 「聖職者にアルが手を付けなかったのは面倒だったからだろ?」

 「そうそう、他にも考えなきゃいけない事が数多く在ったから。そう思ってたらランツ3世がバッサリ教皇領迄武力で説得しに行ったからフロラルス的には凄く楽だった。」

 「じゃあその頃まで居たのかもな。世俗化出来た事を知って、何だ変えれるのか、と思った。」

 「かも知れない。徴税権も70年にじじいが布告した内容だしね。」

 「まっ、でも変えなければ成らない時期だったと、今なら分るよ。中にはフロラルスがグレタリアンに比べると商業の自由度が低いと言う阿呆もいるが、ソレは一部だし、マリド、リーシャン、珠湾、真龍国内の租界、そしてハリキとフロラルス国内と同じような商売が出来る恩恵を受けてる人間が多い。俺はアルの商取引に対する考え方は好きだよ。」


 「有難う。レコにそう言われると頑張って来た甲斐が在った。」

 「アルの傍にいると余り感じないが、偶に身の回りに在る物や街に出ると丸で蒸気機関車に乗ってるよなスピードで技術が進歩して行ってるだろ?おーって俺とか感動するのに淡々とアルはしてるな。」

 「いや、俺も吃驚しているよ。此処までのスピードで色々な物が作られるようになって。」

 「でも、その大本はアルだよな。」

 「ふっ、そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。技術者や科学者たちは此処を何とかすれば新たな道が見えるという所まで頑張っていたから俺の些細な言葉でもブレイクが起きた。ゼロでは何一つ発見も完成も出来ないものさ。」

 「そうかい?まあいいさ。ではアルが次にしたい事は?」

 「ううーん、そうだね。レコとルネとで美味しい珈琲が飲みたいよ。ルネ頼めるかい?」

 「ええ、直ぐに用意します。」


 俺たちは休憩用のテーブルに移って、葉巻を切り口に加えた。

レコは器用に赤燐のマッチで俺の葉巻に火を点した。

 ゆっくりと立ち昇る紫煙は、やがて空気に混じり消えていく。

 俺はレコとルネとでのんびりと煙草を燻らせ珈琲を味わって居たい。


 そしてクロエや緑藍にもこんな一時を味わって居て貰いたい。

 俺は彼方に居る2人を想いながら、何時かルネやレコにも俺の御伽話を語れる日を夢想した。

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