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酔い覚め

 アリロスト歴1807年     10月≪俺編≫




  先日、デゥーゴス公が亡くなった。

 風邪だったそうだ。

 俺より15歳年上だったから68歳。

 何となく年齢が若く思えるのはじじいに毒され過ぎてるのかもしれん。

 愛人も多くいたのに子供が居ない所為で血縁がある人たちが財産を如何するかで賑々しい。


 何故か俺に敵愾心を持ってるオッサンだった。

 俺がキチンとした王侯貴族として生きて居たら中々に厄介な人だったかな?

 否定しようのない悪評つうか悪意ある噂を次々に広めていた。

 済まん。

 俺は普通の王侯貴族じゃなくて。

 気にし無いから否定もしないし焦りも無い。

 ヒヤヒヤしたのはモスニア王国と組んでベラ諸島やハリキに仕掛けて来た時くらいだった。


 デゥーゴス公の父親もいつかじじいを出し抜いて国王に為ろうと頑張っていた。

 グレタリアンと通じたりな。

 でもさ、国王何て親子2代で目指す程、素敵なモンじゃないと思うがね。



  まあ、そんなデゥーゴス公の置き土産。

 俺が腐っている、まあ男色家らしい。

 ルネだったりレコだったり、何とゴドールも俺の恋人らしいですぜ、奥さん。

 どうせなら其処にプロセン前国王フリード2世も入れたら満貫?

 で、俺とよく一緒に居る緑藍。

 もう本当にコイツは、やばい。

 さり気なく俺の腕に手を掛けたりして寄り添ってくる。

 おい、止めろ、男同士でくっ付くな。


「ダメ?」


 そんな潤んだ瞳で可愛く言っても駄目。

 アレ?

 何で駄目って俺は思ったんだっけ?

 そうそう、男同士だからヤバイと俺は思ったんだ。

 ん?

 男同士なら別にくっ付いても良くないか?

 男女じゃ噂に為ったらヤバイしな。


 気が付いたらチッコイ緑藍が俺と腕を組んで歩いていた。

 そしてデゥーゴス公の噂が真実として歩き出す。


  「エル公爵は男色家。」



  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 こうやって俺に絡んで来る緑藍はフロラルスに子作りに来たそうだ。


 「後宮作ればいいじゃん。作れる身分なんだし。」

 「俺が真龍国で子作りしたら面倒な事が起きるの確定。フロラルスじゃ俺は緑藍だし自由だろう?」

 「見る人が見れば分かると思う。」

 「そんな奴は俺が死んでも出て来んよ。まっ、其処ら辺は抜かりない。」


 不敵な笑いを残して毎夜、娼館通いをしていたのだが談話室の暇じじい共に緑藍の存在がバレた。

 其処でじじい共に緑藍を真龍国特使として紹介した。

  「違うの、お主には王特有の覇気が或る。」

  「ええ、貴方様は皇帝では?」

 じじいとゴドールに速攻バレた。

 んー、緑藍に覇気なんかあるか?綺麗な子猫だぞ?

 ルネとレコにそう話したら「あの覇気に気付かないなんて」と2人に呆れられた。

 ルネに言わせると気を抜くと息が詰まる程らしい。

 全く武芸の達人級はコレだから。


 そしてじじいとゴドールに気に入られた。

 じじいの山ほどいる娘と緑藍は契りを交わして行った。

 じじいが紹介した子供の母親は皆オーシェ一族なので後継者争いなど起こさない。

 そんなことをしたら周囲に殺されます。

 じじいは俺の為に一杯子供を作って置いたと言うけど、どう考えても趣味ですよね。

 モンシュシュで子作りに励む緑藍を見て対抗心を燃やし、またじじいが娼館に通い始めた。


 ()()で自由な緑藍はゴドールの弟子たちに真っ裸な姿を描かれるのもOK。

 そして画家たちとフリーな?スクランブル交差点も嗜まれているようだ。

 緑藍さー、アンタの死因は三角関係の縺れによる刺殺だって言ってたよな!


 「三角じゃないから大丈夫。もーさ、ずーと禁欲生活続けてたから大変でさー。」


 知るか。

 俺の清く正しい生活を知れ。

 モンシュシュをじじいに貸して貰い緑藍がトゥリー城から引っ越して行った。

 緑藍はあと3ヶ月くらいエトワル宮殿で種蒔きとスクランブル交差点を楽しまれるらしい。

 風紀の戻ったトゥリー城でルネの入れてくれた珈琲を俺は口に含んだ。





  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 アリロスト歴1807年     10月≪緑藍編≫





  俺は後3年したら皇帝の座を息子光永に完全に譲る心算だ。

 今も内政は7割方光永に任せてある。

 もう27歳に成る光永には八旗も居るし黄家も側に付いている。

 まっ、俺は御簾越しに声を掛ける位しか接した事はない。

 情が全くない訳ではないけれど、兄からの預かり者だと思うと、黄家で確り教育されるのが最適だと俺は結論を出し全てを任せる事にした。


 俺は引退前にどうしてもアルフレッドに会いたくなったのはニコラとクルレールが語った言葉だ。


 「この身が動かなくなるまで私は皇帝の為に戦います。ですが我が主は殿下なのです。」

 「俺もこの地で皇帝の為に騎馬で駆け抜けます。そして鼓動が止まるその時に我が主の元へと俺は帰ります。殿下は寂しがり屋ですからね。」


 この素晴らしく優秀な2人のオッサンに主と呼ばせている男に会いたくなった。

引退後俺は、もっと非道な形で人を屠るようになっているだろう。

何となくそうなった俺にアルフレッドは会ってくれない気がした。

それに流石に17年の禁欲生活に限界も感じていた。

俺は孔家と乱家に旅支度を任せ、真龍国を黄家に任せてリーシャンへと旅立った。


 リーシャンからフロラルスへ、そしてエル公爵、アルフレッドが待つ居城に向かった。

 俺を出迎える彼を見た瞬間に全身で感じた。


ああ、王だ。

彼こそが真の王。

見上げる背丈に柔らかな焦げ茶色の髪、理知的な暗緑色の瞳に、威風を内に閉じ込めた容姿。

俺の様な紛い物の皇帝では無い。

話始めると懐かしい兄と似た空気を持っていた。

俺は別にアルフレッドを口説いていた心算はなかったのだが、アルフレッドの反応が新鮮だったので思わず悪乗りをしたのだった。

自らの同性愛を否定するのに、俺が兄にしていた仕草をするとアルフレッドは拒絶出来ない。

(チョロイ、アルフレッドがチョロ過ぎる。)


 それにしても此の理性が少ない時代に生きるには、アルフレッドの精神が清廉過ぎて俺は心配になった。

 前世の侭のアルフレッドの感性は、俺には堪らなくなる程に居心地が良いが、此の居城に集う者以外には異質過ぎて嫌悪の対象にも成り兼ねない。

 それを感じて無意識にアルフレッドは報告にあったような引き籠りになったのかも知れない。

 だが彼が「じじい」と呼ぶエル4世に会って理解した。

 エル4世が全力でアルフレッドを守っていたのだ。

 そしてゴドール、ボルド、ロヴァンス伯爵たちもアルフレッドを心から敬愛していた。

 エル4世を筆頭にして彼等に揶揄われて不貞腐れるアルフレッドを愛し気に皆で見守っている。

 前世に似たこの優しくも暖かな此処の空気は俺にとって毒に成り兼ねないなと自問自答。

 アルフレッドとはもっと話していたいのに、そう俺が悩んでいると何かを察したエル4世が、モンシュシュと言う離宮を与えてくれた。

 ついでに俺好みの愛人も。

 そして彼の弟子だと言う画家を4人引き連れて来て俺を描かせてくれと言うので了承した。

 ゴドールの弟子たちのモデルをしていて俺は思った。

 フロラルスの男たちはアルフレッドが筆頭で皆、俺に対してチョロ過ぎる。

 真龍国で俺はこんなにモテるなんて有り得なかった。

 俺が少し見詰めるだけで彼等は俺に愛を語り出す。


 「ないわー。」


 そう内心で呟いてみた。

 でも俺は美味しそうな彼等を堪能させて頂きましたけどね。

 ゴチでした。

 彼等の描く瑞々しく美麗な俺の絵姿を見て「黒髪黒目」って特別に感じるのだなと俺は得心した。

 真龍帝国では「黒髪黒目」がデフォルトだぞ。


 そして偶にアルフレッドと会話する為にトゥリー城へと行く。

 懐かしい麦茶を飲んでいるとアルフレッドが文句を言ってきた。

 「あのさーお願いだから才ある若者を同性愛者に改変しないでくれ、頼むよ緑藍。」

 「ん?そんな心算はないけど。大体に於いて俺は同性愛者ではないよ。男も愛するし女も愛する。お判り頂けただろうか?アルフレッド。」

 「詭弁だー。つうか困るのだ。才ある若人が子供を作ってくれないと。全く緑藍崇拝者がじわじわ広がっててマジで俺は怖いわ。早よ、真龍国へ帰ってよ。」

 「ははっ、まあ帰る時に帰るさ。でも俺は思ったよ?フロラルス人って女も男も貪欲な快楽主義者ばかりで前世を知る俺が吃驚させられた。確かカリント教って人の欲を否定してた筈だよね?」

 「今は神様がヨーアン諸国では臨時休業してる。それに緑藍が話すフロラルス人って言うのは間違ってるよ。緑藍と肉体言語で会話してるのはパルス住民!他領のフロラルスの人々は貞淑で信仰と共に生きてるからな。絶対に其処は誤解しないでくれ。」

 「ふふっ。」

 「えっ?俺なんか変な事を言った?」

 「いや、アルフレッドがもう少し早い時代に生れてたら魔女狩りに遭いそうだなーと思って。」

 「怖い事言うのは止めよーか。案外と俺はヤバかったんだぜ。大聖堂に呼び出されて俺は聖職者たちに審問されたしな。俺が王太子で無かったら天然痘ワクチンを創り出した医師たちが潰され研究も無いモノとして扱われてた。其れを想うとゾッとするよ。」

 「まあ、あの研究論文は助かったよ。ありがとう。」

 「いえ、どういたしまして。感謝はリムソン医師たちに頼むよ。」

 「勿論。」


  それから俺にドギマギしているアルフレッドを揶揄ってから、離宮モンシュシュへと戻った。

 俺を描くために集まった彼等に婚姻して子供を作らないと描かせないよと一応は宣言した。

 まっ、夜はフロラルスの愛人たちと子作りしてるのを皆が視ているので理解されるかな?

 ここモンシュシュは談話室の一室を除き誰でもウェルカム状態なので見学体験自由参加型だ。

 アルフレッドに「節操が無さすぎだ」と叱られるが、こんな屋敷を造り出したパルス文化こそ何とかするべきだと俺はそうアルフレッドに反撃したよ。

 俺の完勝だった。

 確りと位階により通る道すら分けられている厳格な真龍国の説明を俺はアルフレッドにした。

 まあ、あそこまで厳格にしたのは俺の都合で、俺が法制化したんだけどね。

 でも彼女、彼等はこの屋敷で無くても本能の侭フリーダムだと思う。

 そしてアルフレッドが言ってた俺の崇拝者?

 画家たちが色々と連れて来るから仕方ないっつことで。

 1人程は真龍国に連れ帰りたいと俺が想う程に魅惑的な少年も居た。

 ただ今は37年間で疲弊し凍った自分を解放して生命の洗濯を楽しんでいる。

 いずれ訪れる俺が決断した愚かしい戦いの為に。

  



  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 アリロスト歴1807年     12月≪俺編≫





「アル、顔が真っ赤だぞ。いい加減に揶揄われていると気付け。」

「エル公爵が邪魔でしたら緑藍さまを近衛に通さないように伝えて於きます。」

「いやルネ。別に邪魔じゃないんだホント。レコは緑藍の潤んだ黒い瞳が真っ直ぐに向かって来ないから平然と言えるんだ。全く自覚有る無しに関わらず凶悪な緑藍め。」


 俺は執務室に或る休憩用のテーブルセットへと向かいクッション性の高い椅子に腰掛けた。

ルネにほうじ茶を頼み、ニヤニヤと笑って居るレコを隣の席へと誘った。

 現在、執務室に或る壁にはゴドールが描いたパルスの風景画とフロラルス、世界地図、そしてあられもない緑藍を描いた墨絵が飾られている。(ゴドール推薦)

 緑藍が画家たちに墨絵の技法を教えたのだ。

 油彩よりも短時間で描け、時々の勢いが表現出来ると墨絵が広がった。

 ゴドールも長時間掛からず軽い筆圧で描ける墨絵に夢中で18禁エロ画を量産し始めた。

 絶対に前世だったら此れ等の絵は発禁処分だろうなと思う。

 墨絵なのにリアル過ぎる。

 つか、俺の知ってる墨絵じゃなーわ、コレ。

 エロイけど絵が美しいんだよ、クソっ!

 他の絵にチェンジ出来ない完成度で描いた作品を持って来やがるゴドールなのだ。



 「まあアルも緑藍崇拝者と言う事で。」

 「いやいや崇拝はしてないからな。大切な同盟国様様のトップだよ?それに友人になったし。」

 「じゃあ大切な友人で良いだろ?彼は俺にもアルと似た感じで接して欲しいと真剣に頼んで来た。それにルネにも。何か頑なにアルは抵抗してるけどね。」

 「頑張って線引いて於かないと危ないんだよ。急性緑藍中毒になったら私の人生が終わりそうじゃん?」

 「いやアルが何を言ってるのかが分からん。」

 「はあー、皆が緑藍の味方になっていく。まあ、いいや緑藍の事は。」


 俺はほうじ茶と一緒にルネが持って来た報告書と手紙を受け取り読み始めた。



 モスニア王国は王都ドリードに市民議会為るモノが出来て、解散させようとする王国軍と戦い市民軍が戦績を上げて勝ち進んでいるようだ。

 王都ドリードに居た多くの貴族たちがそれを見て領地へ帰ったり他国へ逃げ出し始めた。

 元々が貴族以外のブルジョワジーたちに課税し貴族収入の不足を補おうとした増税が発端だった為にブルジョワジーが裕福で無い軍人や若く地位の低い下士官達を説得し創り上げた反乱軍だった。

 貴族対策用私兵団と言った所だな。

 第一回目のモスニア新法典は不発だった。

 其処に時間を経て教皇領ロマン地域の反乱が起きロマン法典が出来、市民の反乱が成功した。

 それを学んで今回のモスニア新・新法典を流布させ、市民衛兵軍を作った。

 簡素化したロング・コートにパロン式のスラックスという軍服迄も用意されていた。

 モスニア・ブルジョワジーたちの気合が詰め込まれてる。

 コッソリ他国勢力の援助も或るのだろうなーと俺は溜息を吐いた。

 名ばかり貴族や軍人も多いし、政争に負けて中央から干されてる貴族も居ただろうから軍も造り易かったのだろう。

 それに穀物危機を完全に脱した訳でも無いから不満を持つ都民も多いだろう。

 庶民の皆さん、味方の振りしているけど穀物の値を釣り上げてるのはブルジョワジーたちだからな。



 そして徴税人が市民軍に次々と捕縛され、市民たちの怨嗟の声と共に大虐殺が起きた。

 捕縛された者の屋敷で当然略奪は起きている。


 ドリード市民側がモスニア王立議会へ税についてモスニア国民会議開催を申し入れた。

 しかし教皇不在で聖職者が安定していないと言う事で国民会議開催を拒否した。

 国民会議=第一身分(聖職者)、第二身分(貴族)、第三身分(平民)全ての身分が集まり話し合う。

 当たり前だが是に怒った市民側は市民軍と一緒にモスニア大会議場を取り囲んだ。

 軍務大臣が陸軍に包囲を破るように指示。

 戦闘開始。


 そして逃げ出した徴税人たちを追ってモスニア市民軍はヨーアン諸国の各国境へと向かった。

 勿論のことフロラルスとモスニア国境では我が陸軍が厳重警備。

 逃げて来た人は一市民として保護、武器を持ったモスニア兵は通しません。

 市民兵であろうと王国兵であろうとモスニア兵に変わらん。


 しかしモスニアは海軍を如何するのだろうか。

 海軍の提督や元帥は国王か閣僚の指示を受け市民軍に艦隊を奪われないように各軍港から少し離れて街へ大砲を向けているらしい。

 密かにモスニア王家からエル王家に救援を求める報せが来ていた。

 当然、閣僚たちと対策会議を開いたのだが、結論は「ノー」。

 いや、王族や貴族たちが個別に逃げて来るのをフロラルス国内で救助と言うか保護はオッケーだよ。

 だけど他国の市民(本来なら戦わない階級)と戦闘など出来ない、つう返書を渡した。


 でもって此れを聞いた緑藍が気楽に話した。

 「序でに全員始末してモスニア王国をフロラルスに併呑すればいいじゃん。」


 アホか。

 そんなことして見ろ。

 内部に爆薬抱えたまま、他のヨーアン諸国に取り囲まれて袋叩きされるわ。

 それに人道的観点から徴税人を保護をしているけどモスニア政府が安定したら全員返しますよ。

 なので保護した者たちは軟禁状態だったりする。

 徴税人御一行はポガールやランダに行って欲しいのでモスニア王国側にはこの件は発表している。

  「コッチ来るな法案?」

 常識的に考えて、自国の徴税人たちを取り締まり暴動・流血沙汰を起こしてまで牢にぶち込んでるのに、他国の徴税人に優しく出来るワケないだろ。



 また「平民とは何か」つう本がベストセラーで、モスニア革命?のバイブルに為っている。

 ヨーアン諸国ではフロラルス以外、印刷禁止になった。

 地下でコソコソ複製されるより、キチンと認可許可届け出してくれる方が対策を練り易いのだ。

 でもコレって著作者ジョエル・シースに著作権料支払って無いだろうと緑藍と毒を吐いた。


 で、緑藍が愉しみにしている報告があった。


  「モスニアのナポ君の報告書届いた?」

  「ちげーよ。レオンハルトだって言ってるだろうが。」

  「えーえー、どう考えてもナポレ(略)じゃん。」

  「五月蠅いよ!レオンでいいだろうっ。強いしカッコいいじゃん、獅子だよレオンって。」

  「ちっ、アルフレッドは前世ジョークが通じないな。」

  「良いんだつうの。緑藍が危険な発言ばかりするから滔々俺は、お前を寝室に招く羽目になったじゃないか。マジで勘弁しろよ。」

  「わりーわりー、つい話せるのが嬉しくってさ。でも人前では話さないだろ?で、ナポ君のガストール街攻防戦の続きはよっ!」

  「レオンな!」



 まあこのレオンハルト、通称レオンは父親が売買官制度で司法官になり最下級貴族の子息になった。

英雄、戦記物が好きで騎士に為ろうと士官学校へ入学。

 僅か2年で全過程を終了後、南カメリアに16歳で出兵。

 で、大敗を期して帰国したが士官と言う事で責任を取らされ謹慎処分。

 以前から有能なレオンに目を付けていたドリード・コミュニティのムデンドが市民軍へ勧誘した。

 王立軍に希望を失って居たレオンはムデンドに同意し市民衛兵軍に入隊。


 まずは先の牢獄解放であるが、助けたい市民が再度捕縛させなくする為に、牢獄全体をレオンは解放させた。

 そして徴税人を効率よく捕縛する為にレオンは初めに徴税人組合を襲撃させ組合員名簿を奪い、悪評が高いモノから捕縛して行った。

 次いで各国境に小隊人数を分け追撃させた。

 圧巻はドリード王都広場で捕縛した集団を銃兵が一列に並び銃殺して行ったことだ。

 この時代の死罪って拷問込みなので時間が掛かる。

 斬首もなー、もう毒でいいじゃんとか俺は密かに思って居た。

 でもまあ、サクサク10人づつ死んで行くので時短にもなるし、聴衆たちの視覚聴覚効果も凄かった。

 一気にドリード・コミュニティはメジャーになり会員も増えたらしい。

 当然のこと此の若き指揮官レオンもメジャーになり人気を得た。


 この報告聞いてた時に緑藍がいて、「そいつマジでウチに欲しい」とレオンの大ファンになった。


 そして王国政府が思うように動けない故に地方で農民たちの暴動も興る。

 ブラック企業真っ青なドリード・コミュニティ上層部はレオンを含めた市営兵たちを暴動が起きたモスニア全土へ転戦させ鎮圧をさせて行った。

 その中で頭一つ二つくらい飛び抜けているのはレオン部隊で、負けていた地域に援軍を出すと最終的に勝利を治めて来た。

 ドリード市民たちはレオン部隊に大喝采。

 大砲バスバス群衆に打ち込むんそうだぜ、レオン。


 モスニア?

 いやドリード市民たちよ。

 大喝采とかしてて良いの?

 農民だよ?

 誰がパンの元を作ってると思ってるんだ?

 飢えるのは王都に住む住民だと思うけどな。


 絶対に飢えたらフロラルス王国へ攻め入って来る事に10万リーブル賭けてやる。

 革命は自国内だけでお願いしたいよ。

 俺は談話室で屯しているロヴァンス伯爵とじじいにボヤいた。


  俺は手渡されたルネからの報告書を読み終えた。

  来年3月に開かれる第二回モスニア王国対策会議に向けて俺はレコ、ルネ、ボルドへと情報収集を頼み、冷え込む12月の鉛色した空を見詰めて白い溜息を吐いた。








  12月を半ば過ぎた頃から緑藍は1週間に1度じゃないな、5日に1度俺の顔を見に(揶揄いに)トゥリー城へと訪ねて来るように成り、寝室で話し込んだ後は其の侭泊まり込む様になった。

 当たり前みたいに同じ寝台で寝ているのだが、俺は一言云いたい。


    「ガッカリだよっ!」


  緑藍は華奢で色白で言わずと知れた絶世の美人さん。

 普通思うじゃん?

 柔肌の熱き血潮に~つう感じで身体に触れた時に柔肌ーとか期待するじゃん。

 うん、

 ごめん。

 実の所、俺は柔肌を期待したよっ!


 なのにさー、もっさー、ガチガチ筋肉なんだよ。

 華奢なのに。

 一言緑藍に断りを入れてケツに触らして貰ったら------酷く固い臀部。

 俺の身体の方がヤワヤワで自分では鍛えていた心算だから可成りのショックだった。


  「緑藍は男だったんだなー。」

  「何を今更言ってるんだろうね、アルフレッドは。」


 それからは緑藍が可愛く甘えて来てもピクリとも俺は反応しなくなった。

 はははっ。

 絶世の美女じゃないと俺は自覚が出来たからな。

 緑藍酔いが醒めた俺は、幾ら緑藍にしがみ付かれても、平常で安眠出来るようになった。

 まあ、冷え込む夜は筋肉質だが綺麗な弟に寒さ対策で甘えられていると思うとしよう。



   「兄さん…。」


 そう寝言で呟く緑藍の声が、余りにも寂しそうだったから。

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