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真龍帝国雑記①

アリロスト歴  1798年   6月



 

 無事にフェリクスの婚姻式が終わり今頃は2区の新居アルノワ城ですね。

 忙しかった。(周囲が)

 レティからもお祝いの手紙とフェリクスへの婚姻祝い品。

 はっはっ、ゴドール作の馬で駈ける俺絵。

 何処の息子が婚姻祝いで親父の絵を喜ぶんだよ!

 俺は回収させようとしたがフェリクスに止められた。「僕の城で飾ります。」

 何という羞恥プレイだ。


 何でもオーリア帝国の宮殿に飾られていたらしく「弟に贈りたいわ」と零したのを義母ビストールが耳にし、婚姻祝いに送って来たそうだ。

 それって不要に為った絵をモデルに返したかっただけでは?

 しかも何でまたオーリア帝国に俺の絵が?

 溢れる不安を俺は押し殺した。


 でもってフェリクスは純潔ではなかった。

 何気にショックを俺は受けた。

 何とじじいがフェリクスに実践閨教育をしていたのだった。

 「てめぇー、俺の息子の息子に何してくれてんだ。」

 と、じじいに文句を言ったら、

「アルフに閨教育をしなかったからアンジェに逃げられた」等と謎の供述し、違うわ。


 逃げられたのではありません。

 俺はアンジェを自然にリリースしたのです。間違えないように。


 もうね、婚姻式より婚姻前の方が疲労感が半端なかった。








   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ロングロングアゴー(真龍帝国雑記①)緑藍編





  「白幡(はっき)と言う集団が延州(えんしゅう)で約7千人も人々を集めていると報告が来ています。」

  「八旗と紛らわしい呼び名だ、聞かない名だが。」

  「白龍が現れ真龍帝国を救えと集団を纏めているエンパクなる人物に告げたそうです。」

  「笑ってしまうな。孔鵬、何時ものように。」

  「はい。」


 7千人の反乱位では少ないと感じてしまうように為った自分に俺は笑った。





 この世界で俺が前世の意識を取り戻したのは、さっき話していた孔鵬に鼻と口を塞がれて殺され掛けた3歳の頃。

 俺は真龍国皇帝8世の孫としての生を受けていた。

 俺の育った後宮は女官や下働き、貴人、妻(父の側室)たち、俺の義兄弟たちが無意味に死んでいった。

 祖父の妃、皇太后や父の妃、4貴妃たちが起す感情の気まぐれで誰かが死ぬ。

 日本で育った28年の感性は1年も後宮で呼吸しているとアッサリと死んだ。


 俺を殺しに来た孔鵬は、死に対して諦観した瞳を気に入り、俺と母親を殺すように命じた貴人を殺し宦官の振りをして傍に付いた。

 百合会なる黒社会の一員で、有力な名家である黄家に孔家は雇われていた。


 孔鵬に話を聞いてる内に、ここは日本で習ったアジアっぽい場所だと思った。

 だが記憶にある教科書写真を繰ったが辮髪でも無いし、俺にはどんな時代かが判らなかった。

 疲弊しきった春明王朝を倒し、真龍の祖が変わって真龍帝国を開いたのが始まりだと孔鵬に聞かされても俺の記憶にヒットするものは無かった。

 しかしどの道、何番目の子供かも知れない俺が皇帝など成れる筈もなく、運が良くて一生飼い殺されるか子供たちの中で皇帝に為った誰かに殺される未来しか無い。

 早めに此処(後宮)から逃げ出し他国にでも逃げ出そう。

 俺は孔鵬に学びながら、幼児なりに身体を鍛えた。


 そして俺が6歳に成る前に皇帝5世が死に後宮が無法地帯化。

 皇太后が息子、光慶皇帝(俺の父親)の後見に付き邪魔だと思った貴妃や貴人を粛正していった。

 4貴妃たちも後ろ盾が名家ばかりなので大人しくしている訳も無く各名家の閣僚たちが組み、皇太后派を宮廷武官たちで捕えて行った。

 母も殺され、俺の命の危機を察した孔鵬が後宮から俺を連れ出し黄家で匿った。

 そこには異母兄「光明」がいた。

 10歳年上の兄は、孔鵬以外で初めて俺を人として扱い優しく接してくれた人物だった。


 兄の母は黄家出身で貴妃だったが兄を産み亡くなった。

 暫くは後宮で暮らしていたが身体が弱く黄家で育てる事となり此処で暮らしていると兄は言った。

 俺は兄が時間がある時に、この国の事、自分たちのルーツ、この国の行政などを教えて貰い、黄家の祖父に兄が習った皇宮での事も聞いた。

 前皇帝は毛紅人を相手にしていなかったのだが、現皇帝(父)は財政赤字を補う為に、毛紅人と交易を開始し銀と茶の取引を行っているらしい。

 げーっ、何年後か判らないがアヘンで取引させられるようになるかも知れないじゃねーか。

 俺は兄に気取られないように内心で舌打ちをした。


 でもこの時代が今にして思えば俺には一番幸せだった。


 そして俺が思った事。

 アヘン何か無くても此の国は既に死に掛けている。

 官僚を産み出す科拳は形ばかりの試験で後は、決まった家から合格、中央に居る各将軍も堕落して好き勝手に役得を目指してる。

 政治の方針を決める八旗会合も中央2幡将軍を味方につけている前王朝からいる中府3旗の権勢が大きくて合議制政府が機能不全に陥っている。

 そしてババア皇太后による恣意的な司法濫用と刑罰。


 黒龍帝国終了のお知らせだ。

 本当に有難うございました。


 そう諦めていた俺に転機が訪れた。

 皇宮で毛紅人らが罹患していた天然痘が蔓延したのだ。

 俺は兄や黄家当主の爺さんに皇宮には出来るだけ近付かない事と体液で感染するので罹患した人と話すときは気を付けるようにと注意喚起した。


 突然の死病にパニックを起こした大夫(大臣)が武官へ命じた。

 皇宮内に在る異人館で逗留してる毛紅人たちを死病蔓延させた罪で皆殺しにしろ。

 武官たちは命令通りに虐殺した。

 それって益々広げるだけだよ、天然痘を。


 皇太后や多くの人々、そして皇帝も亡くなり、残ったのは1貴妃と娘が2人、後は位の低い貴人数名そして数多いる嫁たち。父は腎虚で亡くなった?

 何故かその貴妃の娘と光明兄が婚姻し皇帝を継ぐことが決定。


  「なあ、緑藍(俺の名)、共に来てくれないか。祖父に学んではいたが皇帝としての教育など私は受けていない。側で私の話を聞いてくれるだけで良いのだ。」


 俺は考えた。

 19歳の兄に9歳の俺。(内面年齢は兎も角)

 政治の方は黄家の爺さんが何とかするにしても、身体の弱い兄が伏魔殿みたいな場所で精神を疲弊させたらコノ時代だからアッサリと死んでしまうかも知れない。


 (それはイヤだなあ。好きだし俺。)

 俺の足りない知恵でも兄に役立てる事もあるかも知れない。

 愚痴を言える相手がいるだけでも気楽になるしな。

 俺は覚悟を決め頷き、孔鵬と共に兄の小姓として黄家から戦いの場(皇宮)へ付いて行った。



 儀式が終わり兄は真龍帝国、光皇帝10世になった。

 ピチピチの眉目秀麗19歳。

 色々と宮中作法や合議会、各中府閣僚や官僚、中府3旗将軍八旗将軍たちとの顔合わせなど慌ただしく約7ヶ月近くを過ごし、兄が閨暦でない日は俺と共に夜を過ごした。

 (エロ無しだよ。俺9歳だぞ。)

 皇帝なので好きな時に妻の寝所へ行けば良いのだが、放って於くと兄が寝所へ行かないので、占術師が決めた日に閨を行うことに為った。


 そして兄に異変が起った。

 閨から戻って来ると可笑しいのだ。

 俺に対してフリーダムヘブン状態に為って来る。

 俺は貞操の危機を回避しつつ、孔鵬へ兄の妻を調べさせた。甘い異臭の正体と共に。


 いや俺的には兄とそうなっても良いんだよ。

 前世の頃から好きならば、男女関係なしの快楽主義者だったから。

 その所為で刺殺されてしまったのだが、3角関係って怖いな?今世は気を付けよう。


 で、俺は兄が好きだから良いけど、兄が正気戻ったら真剣に後悔すると思うんだよ。

 生真面目だしね。

 だから俺の肉体的にも(幼い)、兄の精神的にも、俺は貞操を守り切った。

 ベロチューくらいはセフセフ。


 裸に剥かれた死闘後、孔鵬が戻って来て報告。

 (兄には気を失って貰った。)

 兄と関係を結べない妻や姑が異性をその気にさせる香を寝所で焚いていた模様。

 立たないのは妻の魅力不足だろっ!

 アヘンでなくて良かったが、俺はブチ切れた。

 翌朝、意識を取り戻した兄に事情を説明すると兄もブチ切れた。


  「緑藍にそんな酷い事を私がするように仕向けるとは許せん。」

  「俺は兄さんを好きだから嫌では無いよ。でも兄さんの意志を捻じ曲げるのは、許せん。」


 其処で兄は黄家の爺さんと八旗将軍たちに後宮の殲滅を命じた。

 前皇帝の後宮が其の侭で残っている形は同様の事を生み兼ねないと無くすことにした。

 ばばあ皇后の頃から中府権勢の中心だったので躊躇いはない。

 中府は元々がそっくり前王朝産なので俺たちと民族が違うって意識もある。

 八旗将軍の1人、陽将軍は俺たちと同じ一族、後の7旗将軍は治めていた地域が違うが光家をトップとして後押ししてくれた一族たち。草原に生きた騎馬民だ。

 中府は石壁で生きる民。

 そして八旗将軍たちは後宮やらを駆逐しました。

 3千人とも5千人とも言われてるが正確な数字は判らない。

 孔鵬一族も暗躍していたらしい。


 そうそう兄のフリーダムヘブンな話は俺と兄の秘密だ。あっ、孔鵬も。

 「変な薬を盛られた。」って事で排除決定したからな。

 まあ、それから俺の貞操を守りつつも、兄との夜が濃厚になったのは仕方ないよね。



  兄が20歳に成るかならぬかの年若い皇帝だと舐めていた中府も後宮征伐をして以降は、大人しくなり八旗との合議も兄は遣り安くなりました。

 大人しくなっただけ、だけどね。

 なんせ真龍帝国が興る前からある中府名家の皆様だから水面下で動いてる。


 「朕に毒を盛るような前皇帝の妻たちは不要。故に処分した。」


 

 皇帝に毒を盛るなんて族滅されても文句はいえない重罪なので、文句は有るが自分たちに類が及んでは叶わないと皇宮内では「後宮殲滅」話はタブー扱い。

 話しても良いんだけどね。

 安全とは言えない此処で身を少しでも守る為に、安全院なる内務調査部署を作り、俺や孔一族で運営することにした。

 一応ね、あるんだよ。

 官僚を監察する部署、都察院てとこが、でも今一つ信用ならないので。



 兄が皇帝になる前に、沿岸部で待ってたグレタリアン人が朝貢に行った仲間を迎えに来た。


 「貴方たちが死病を広げた所為で皇帝も皇太后も妃たちも死んだ。当然毛紅人もだ。」

 「疫病神よ、もう来るな。」

 と、追い返したそうだ。


  まあ下働きや官位の無い人間の死体は宮殿の外に遺棄されていたので状態を察しただろう。

 つか、此処に来るまででも多くの天然痘患者を見ただろうに何で内陸まで来ちゃうかね。

 黒河を船で移動する分には判らなかったのだろうか。

  俺たちには対応策も無いので自己防衛して病が鎮まるのを待つしかなかった。



 そして今、昼間は報告を受けたり月一の合議をしたりと兄が動いている中、俺は邪魔な奴を始末したり、始末したり、始末し、と多忙な日々を過ごしていた。

 罪の意識?

 全くない。

 あの後宮で味わった地獄の日々を想ったら全くだね。


 俺の母は北湖族の娘で府中に入る前、最後に落とした地域の一家。

 民族的には八旗と同じだが大きな地域では無かった。

 そんな母が後宮に入ったのは前皇帝(父)が成人する際に、真龍帝国全土から領土を持つ家の娘を皇太后が妻を選ぶ為と府中に集めたからだ。

 運悪く前皇帝のお手付きになった母は貴人へ位が上がったけれど、府中の女たちからは賤民と見下され乱暴狼藉は当たり前、俺なんかは意識が戻る前は、井戸に落とされそうに為ったり、庭に作られた池に落とされたり、幾度も死に掛けた。

 父親?知らんな、会った事がない。


 意識が戻ってからは、孔鵬が居るからヤバイ時には助けてくれて多少は生き安くなった。

 俺にとっては仲間である孔鵬、まあ孔家も孔家で色々あるのだが、それはまた別の機会に。



 時間の余裕が或る夜に為ると、兄に可愛がられたり俺が兄を可愛がったりする、慌しくも暖かい日々を過ごしていた。いい子いい子の事だからな。


 或る日、兄が新しい国から朝貢が在った品物を俺に見せた。

 「爪切り」

 「付けペン」

 「コルクボードに武骨な押しピン」

 「オイルランプ」

 「簡易冷蔵ポットの作り方」

 などなど俺の鼓動が高まる物が一杯だった。


 「変な物ばかりだろ、緑藍。此れが訳した説明書だ。何でも真龍帝国と交易したいと言う王太子が作った物らしい。フロラルス王国だったかな、確か。」

 「いいね、どれも俺が欲しいモノばかりだよ兄さん。是非とも交流を持ちたいな。」

 「珍しいね、緑藍は物に興味示さないのに。」

 「うん、この品物たちを今度は大目に持って来てもらって我が国の職人に作らせよう。長い間進歩の無かった職人たちが新たな物を創り出せるようになる。兄さん手を貸して。」


 俺は懐かしい爪切りで綺麗な兄の手を握り、爪を切ってあげた。

 兄は簡単に爪が切られる事に驚き、そして感動と一緒に俺を抱き締めた。


 「断ろうと思ったけれど勝手に他国が住み着くより住む前に断りを入れ、何より緑藍が喜ぶ物を朝貢したフロラルス王国にリーシャン島を貸そう。そして交易もするよ。」

 「ありがとう、兄さん。」


 俺は11歳らしい笑顔で兄にお礼を言い抱き締め返した。勿論ベロチュー付きで。

 その後フロラルス王国特使にアルフレッド王太子の日常など報告出来る範囲でレポートして欲しいと伝えた。

 そして特使から陽ノ本の事やコメの事を聞いて来るので俺は確信した。

 アルフレッド王太子も俺と同じ転生者であると。

 俺は兄に頼んで鎖国している陽ノ本にフロラルス王国と取引するように命じて貰った。

 俺はそうでも無いがアルフレッド王太子は米の飯が食べたいのだろう。

 ついでに傍に居る孔鵬へ俺の分も頼んでおいた。



 兄は今、この広い真龍帝国を再生する為に改革を断行しようとしている。

 俺は早急な政変は兄の生命が危険に晒されると予測し、日本での政治体制を思い出しながら兄と話合い、味方に為ってくれる八旗たちには合議して相談するように勧めた。

 そして兄は今尚各地に広がる天然痘の猛威に心を痛めている。

 だが、此れは俺にとって或る意味天の助けだと思うのだ。


 もしこの世界が前世の歴史とクロスしているのなら数年後には陽ノ本で火山が大噴火し、その影響が恐らく真龍帝国を覆うかも知れないのだ。

 飢えた民が何処を目指して武器を掲げるのかは歴史が証明していた。

 兄の為に俺は数多の民が天然痘で死するのを内心、静かに願って居た。


 俺はフロラルス王国の特使がリーシャン島で穀物を耕作したいと聞きそれに気付いたのだ。

 アルフレッド王太子はこの世界と歴史の近似に何処かで気付き、その対策をしていると。


 俺はこの国が破滅しようと亡くなろうと別に構わない。

 でも兄を苦しめたり危険な目には俺が合わせたくはない。

 この世界で唯一の家族で唯一の俺の温もり。


 俺は兄を守る為の道を今日も探りながら生きて行くのだ。

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