我儘なエル公爵
アリロスト歴 1797年 3月
フロラルス王国での特許は科学アカデミーで審査を経て通ると15年間の技術保護が国内、同盟国、植民地に課せられる。
最初は10年でも良いかなと考えたのだがアルフレッドの予知夢通りに為ったら80年代は国内が荒れまくってるし、何か法的に不都合が出来ても食料不足問題で動けない可能性がある。
つう訳で元々在った特許法を72年に改正して現在に至る。
じじい陛下がパルス高等法院の力を無くしてくれてマジ良かった。
概容は自然法で特許は発明した人、発見した人が権利を持つ。ってとこかな。
問題は後の人間が修正する成り、廃止する成りするだろう。
蒸気機関は74年に出願して75年に認められ、90年以降はフロラルス王国と戦争をしなかった他国の至る所で稼働している筈だ。
噴火による寒冷期が無く凶作も無かったら、多くの留学生で沸く国際都市として発展したパルスで、じじい陛下は毎年のようにパルス博覧会を開いていただろう。何せ派手好きだから。
ジョルジュは学生や科学者たちと歓談はするけど毎年祭りを開く様な派手好きでなくって良かった。
本当は俺も市民の恰好をしてヴリーやパルス駅を見たかったのだがゴドールの所為で…。
何故かゴドールの絵は今も展示されている。
回収しろよ、ゴドール。
そしてパルス一区ルフルティー宮殿で「オーリア帝国何とかしよう」会議が開かれている。
ミントキャンディー山盛りで。
オーリアに何かはしたいのだろうが、実質はフロラルスから何かを引き出したい会議。
俺はプロセンには相互不可侵条約を結べれば、ある程度の技術協力をしても良い事。
本当は嫌だけどグレタリアンには蒸気機関の技術協力するので同盟を10年は続けて、イエル運河の共同開発できれば提案。
だが自由貿易圧力には屈しない。
モスニア王国には取引材料はない。
ガッチガチの旧信徒揃いのカリント教オタク。
本音ではフロラルスを遣っ付けてベラ諸島とハリキ分捕りたい。
恐らくモスニアとは戦争已む無しに為るだろう。
まあ、その前に南カメリアへの援軍要請などとフザケタ事を頼むだろうが無視するよ。
等々を幾度かの遣り取りをジョルジュとして結論を出した。
じじい陛下は相変わらずグレタリアンは、ぶっ潰すてな具合だしね。
基本ヨーアン諸国は王族を攻め滅ぼすとかはしない。
ギリギリまで領土を削り併呑する手法をとる。
ホント、面倒な。
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アリロスト歴 1797年 6月
ロマン地域のみを教皇領とし、グロリア王国(南北)、オーリア帝国、神聖カリント帝国、エーデン王国の荘園は廃止し土地は元々の王家に渡し、世俗に関わらない事で終結。
司法とか施策に口出しして来る所為で改革が進まないと義兄ランツ3世が怒ってた。
これでオーリア帝国と神聖カリント帝国間に敷く線路が比較的なだらかな場所を最短で結べる。
丁度、教会の荘園が2国共に邪魔だったのだ。
ハハっ、あのランツ義兄が善意だけで妹の夫(北グロリア王)を助けませんて。
そしてフロラルスも熱心な信徒が多いアリョーナ地方以外からの荘園撤退を勝ち取った。
まあエル王家に為る前を含めると2人も教皇を殺してるからな。
教会側もあんまり無駄な抵抗はしない予定だったのだろう。
教皇選挙もあるようだし。
そろそろクロエに会っても良いかなと想い、会談の結果と今後について話しに来たロヴァンス卿に伝えると、困ったような顔をして今はリーシャンへ向かってると言う。
マジか。
クソ良いなー。
俺も行きたいよ。
そう話してロヴァンス卿は、クロエの商会が作っているチョコレートを土産に置いて、執務室を出て行った。
恐らくカメリアの外交官にでも会って行くのだろう。
「青い鳥か。」
俺はクロエの商会名を呟く。
結局、幸せが在ったのは自分の家だった。
ガラスペンを他国にまで流行らせ、次に作ったのは小さめのガラス瓶に砂糖煮の甘い各地の果物を入れコルクで蓋をした「フルーツポット」という商品。
エトワル宮殿では直ぐに人気となった。
此れは真似されるなと思ったら、あっと言う間に類似品が出た。
「娘が言うには、小麦不足で我慢ばかりも良くないので真似されても良そうです。」
自分で簡単に組紐を作れる小さな枠や、持ち運びが出来る化粧ポーチ、ソーイングセットと俺には思い付かない便利な小道具も俺の商品と合わせて青い鳥で売っていると言う。
チョコレートはパルスで店を出したが他の商品は母親か義姉経由で売っている。
他国では気にった店に卸しているらしい。
流石にチョコレートはロヴァンス卿が製法の特許を申請した。
「クロエは良い」と言ったらしいのだが何年も苦労して作り上げたらしく「つい、私が勝手に動いて仕舞って」と照れ笑いをしながらロヴァンス卿は語った。
そして今人気なのが銅製の紅茶箱。
銅で作ったピッチリ閉まる箱に和紙を敷き、お気に入りの茶葉を入れ、テーブルで取り出す。
クロエの母や2男、3男義姉たちが茶会で紹介して人気となった。
当然類似品が出て来たが「青い鳥」の絵が描かれたクロエの紅茶箱人気は衰えない。
クロエの青い鳥が世界へ羽搏いているようだ。
クロエが技術に特許を取ろうとしないのは自分が考えたのでは無いと言う意識の所為だろう。
俺は遣りたい事の為に罪悪感は捨てたけどな。
干し杏に掛かったチョコレートは少し苦味が強かった。
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アリロスト歴 1797年 10月
本当に久し振りに俺は今ラ・シエット宮の懐かしい談話室に居る。
じじいとジョルジュと一緒に。
くそっ、相変わらず若々しい容貌しやがって。もう87歳だぞ、じじい。
ジョルジュにも覇気が宿り王の風格が出ていた。
年齢はオヤジだが、イケオジとかいう奴である。格好良いぞ、コラっ!
「いやだいやだ」と思い逃げ続けていたのだがジョルジュ陛下から王命が来た。
「チョット、ラ・シエット宮までツラ出せや。」
「プロセン王家の末娘とフェリクスとの婚姻が決まりました。フェリクスには随分前に伝えています。兄上は自分の子供たちに婚姻させない心算ですか?」
「そうじゃないけどさ、何も王女と結婚させなくても。」
「第一王女はお断りしたのです。兄上が長子は王族へと嫁がせるべきだと仰るから。次に僕の嫡子ジョゼフがオーリア帝国の王女と婚姻しなければ成らないのですよ。諦めて下さい。」
「年の順番とかいいのに。」
「違います、フェリクスはもう24歳なんですよ。話をしたらフェリクスは賜りましたと素直に応じました。フェリクスは来年、ジョセフはお祖父様のご要望で1800年に婚姻します。」
「あー、じじい19世紀の幕開けを派手に祝いたいからセレモニーをぶつけたな。」
「ええじゃろう。アルフも何か考えろ。」
「はぁー、派手な花火をフルーヌ川へ好きなだけ上げ続ければいいでしょ!」
あの会談の後、プロセン王国と同盟を結び仮初めにしない為にと初めは俺に、丁重にお断りしたら次はフェリクスに婚姻同盟のお話。
ジョセフは王太子なので慎重に相手を選び義兄ランツ3世の娘との婚約が決まっていたのでフェリクスに白羽の矢が突き刺さった。
一応、ジョルジュにも7人も子供がいるのだが年頃の男子はジョゼフ1人。
確かフェリクスより7歳年下だったはずかな?たぶん。
末の息子は4歳です。
5人全部王女なのだ。
本当は一度嫡子が生れたけど早逝してしまった。
ジョルジュの第一王女はエーデン王国へ嫁ぎ、第二王女はランダ王国へと決まっている。
もう親族がまた面倒な血の中へと入って行くよ。
いい加減にヨーアン大陸以外での婚姻も考えた方が良いかもな。無理そうだが。
くそっ、もっと俺が若い頃にパルス大学共学の道を模索して於けば、フェリクスに学生結婚とかの道も用意できていたかも知れないのに。
目の前のことに忙しくて抜かってしまった。
すまん、フェリクス。
じじいは相変わらず子供を作っていて実際に何人産ませたか忘れたという始末。
宮内卿が管理しているから大丈夫と笑うじじい。
そんなことまで管理させられるのか。
今の宮内卿はロヴァンス卿の友人だそうだ。
念の為に聞くとジョルジュも愛人はいるそうだ。
うん、頑張れ。
しかしフェリクスが婚姻するとパルス2区に新たな宮殿と城が貰えると言う。
既にフェリクスはフェリクス仕様に改装注文途中らしい。
あいつサッパリとヴリーに帰って来ないと思ったらパルスでそんな事してたんかい。
俺の新たな公爵領にも駅が出来たがアッサリとした大正モダン風な木造建築。
他領主の駅ほどは金が掛っていない。
その内行く事があるかも知れないがヴリーが居心地よくて動けない。
うん、此れはとっととフェリクスに爵位を譲ってしまう。
我満だよな、俺。




