ダンディズム
アリロスト歴 1792年 1月
昨年布告積みの1万リーブル紙幣をフロラルス王立銀行から市場へ流通させた。
後々の事考え1万リーブルから出す事を決めた。(国王、財務、造幣、国務)
1万リーブル札。
徐々に下げて行くのだ。
5千、千くらいに。当分は輪転機が出来る迄は印刷の関係で1万リーブルオンリー。
エル金貨もあるしね。
リーブル銀貨も銀使用割合を減らしてリニューアル。
ドゥニエ、ソル硬貨もデザインを変えて造幣したよ。
これでリーブルの銀使用も減らせる。移行期間は10年。
いやー王立職員(公務員)を大量に抱えてると給金で流せるので楽だ。
工事で雇ってる人達の給金も新通貨だしな。
うーん、どう考えても資本主義に移行する未来しか見えないな。
今は福祉って言っても救護所の茹でジャガと孤児院くらいしかない社会システム。
でも俺が居た日本も同じようなもんだったわ。よく考えたら。
俺はまだ知らないけどアンチテーゼとしてプロレタリアかコミュニストの思想がパルスに在っても不思議じゃないな。
何時の時代も皆が満足出来る訳じゃ無いからさ。
そしてモスニアが領有していた南カメリアで黒人奴隷が反乱を起こした。
フロラルスではハリキ報告書を読み、扱いの酷さに震撼したじじい陛下と閣僚たちでハリキ奴隷の待遇改善を図り現在は小作人レベル位には改善を出来たが、農園主はヒャッハー系なので不機嫌。
イイじゃ無いっすか。是位の待遇改善、彼らは人間何だよ。教会は認めなくともな。
君らも知ってるだろ。
南カメリアを治めていたモスニア農園主たちの末路を。
ジーア州パサナで黒人奴隷が反乱、モスニア人を含む白人が次々に虐殺された。
幾ら武器を持っていても万を超える人間に囲まれたら太刀打ち出来ないよ。
ヒャッハーしても良いけどその時はハリキは諦めるしかないからな。
君たちは黒人を舐め過ぎだぞ、ヒャッハー野郎ども。
そういう通達を行政文書で書いて送りました。
ハリキの砂糖は痛いがリーシャンでも栽培は出来ている。
砂糖大根も栽培出来てて国内でも砂糖を作ってる。
本当なら予知夢では奴隷解放運動がフロラルスに起きている筈なのだが俺は何かを変えたのか。
いや、まあ変えているけれども。
何故、僅かな利益配分も嫌がるのか分らん。
しかしモスニア海軍はジーア州パサナに行っているのだろうか。
カメリアも落ち着かないな。
アリロスト歴 1792年 3月
おっ、蒸気機関車が近付いて来ている音だ。
今は1日で往復1回走らせている。
もう直ぐ終点のノンディ港までレールが開通するからね。
各市町村で封書を駅まで集配するテストも兼ねている。
切手の代りに今はスタンプなのだ。郵便代は高くなるから利用者は少ないと思う。
駅からは馬か馬車だし各家配達じゃない。
これも少しずつだね。
それでも蒸気機関車は人気が高くて今は空席待ちらしい
ラゼ大佐が乗った席は王族関係者の席で補佐官分空けているのだ。
さすがに特別車両には乗せるの無理だけどね。俺と一緒の時以外は。
個室は1ー4号車、普通席5、6号車、平民席は7、8号車長ベンチみたいなのに横一列で座る。
危険なので立ち乗りは現在禁止。
一応は一回一回、死んでも文句を言わないと言う契約書にサインしないと駄目なのだ。
機関車は危険だと言う認識を持って貰わないとね。
スピードと安全は両立しない。
ノンディ港までまで行くように為ると10車両に為る予定だ。
蒸気機関車の噂の所為で他国からの旅行者が多い。
絶対に政府関係者の視察旅行ですね。はい。
同盟国は大使館を置いてるので、蒸気機関車についてパルス新聞や科学新聞を読み本国へ送ってるだろうし、俺も技術発展して欲しいから走行試験を行ってから秘匿解除した。
本音は、デカいから隠せないだけ。
それにじじい陛下がドーンと昔、広い敷地で蒸気機関研究所を作っていたお陰で各国から有能な科学者たちや若い人達も集まっていたから俺的には早く機関車が運用出来たしね。
来年は友好各国を集めてパルスからノンディ港まで開通した記念式典が執り行われる。
なのでパルスやノンディ港までの駅では祭りの準備に大わらわ。
頑張ってるとこ悪いが王族は乗せて来ないからな。
そんな危険な真似が出来るか。何か遭ったら世界情勢が変わるだろうが。
アリロスト歴 1792年 9月
そして気温が暖かい今年は豊作だ。
これが来年も続けば良いのだがアルフレッドの予知夢は1793年1月21日で途切れる為、判らない。
92年終わりから続く国王裁判では良心に従い真摯に望むが徒労感で終わる。
俺はアルフレッドが見た映像を思い出し、溜息を吐く。
彼らが国を動かし纏める事が不可能だと理解したからだ。
結局はパルスに於ける自己の立場と欲、そして保身しか無かったからだ。
現在、王国の負債は180億リーブルまで減らし支払利子もかなり減少した。
トーマが現在、負債の正体を洗い直しているが殆ど支払わなくて良いモノに為るだろとの事だ。
パルス高等法院や売買官貴族たちでエル3世に貸し付けた負債を細かく自分たちで分け、立法権を使い新たな利率で増やして行ったモノが多いらしい。
国王と帯剣貴族は使っているつもりで法服貴族に使われていたのだな。
司法官が金貸し業を営み貴族籍を買い、非課税で国庫に集っていた。
司法改革の時に司法官の金貸し業と不動産業を禁じていてマジ良かったゼ。
ついでに竹酢液でも撒くか。虫を忌避したいからな。
まあ売買官制度で貴族籍を買っていた家も20年もすれば貴族ではなく為って行くだろう。
アリロスト歴 1792年 10月
ルネがレティと共に談話室へ入って来た。
ヴリーに来てからレティはコットン素材のワンピースドレスを着る様になり活動的に為った。
流石に大量生産で織られた物は着ないが熟練職人が織った生地や、イラド産の伝統織で出来た生地を使いお気に入りのデザイナー、ルル・シャルレに作らせた着心地が良さそうなワンピース姿だった。
コットン生地が多く出回るように為り、色々な縫製職人たちが色々な衣装を作るように為ると街の女性たち衣服が変わり、女性たちが変わると当然のように男性の服装も変わって行く。
まあ一番変えたのは喜劇役者パロンが穿いていたズボンでゆったりとしたストレートなデザインは男らしい色気があると人気になった。
それまではブルジョワジーも男性はキュロットで膝下を見せびらかせるピッチリ靴下(絹以外)か、兵たちのピッチし白タイツ姿しか見た事が無かったお嬢様方には、凛々しく映ったようだ。
そして色々なコットン衣裳が生れて来た所に目を付けた人物が、趣味が良いと思った衣装をモデルに着せ、画家に描かせカタログにして「パルスモード」と名付け月1で販売し、人気と信頼を得ていた。
そのパルスモードで新たな魅力男性の色気ダンディズムとしてパロンを紹介した。
男のモテたい欲求とは悲しいモノで今までの男性の色気脹脛を捨て、パロン式が一世を風靡した。
これが89年のこと。
当然、俺は直ぐにコットンで作らせたよ。
この日の為にホックや銀細工師を呼んで態々ファスナー開発とか遣らせていたんだ。
デザイナーと熱い打ち合わせを終えて、その後届いた懐かしいズボンを見て感無量に為ったよ。
これで「小」如きで尻を丸出しにせずに済む。
俺の人生が薔薇色に見えた瞬間だよ。
そんなことをレティの若草色のコットンワンピース姿を見、回想していた。
「来年パルスである式典、パパの代りにフェリクスと私が参加するでしょ?そこで、私だけ蒸気機関車に乗って先にラシエット宮に行きたいのだけど。」
「駄目、危ないだろう。何度も説明したけど、」
「スピードは何たらよね。あのねパパ、そんなこと言ったら馬車だって危険じゃない。フェリクス何て蒸気機関の研究開発してるのよ。なのに乗車は駄目って言うのは変よ。このヴリーには駅もありユニヨ1号はこの国いえ、世界初の蒸気機関車と言う発明品。そんな凄いモノに王国民の1人として実感して於きたいのに危険だから体験させないというのは理解出来ないわ。」
「はあー、判ったよ。特別号車だから来年なら用意出来るだろう。フェリクスと一緒に行きなさい。ラゼ大佐とレコの側を離れないように。」
「えっ、レコもいいの?」
「まあな。一応レティの虫よけだ。フェリクスだけじゃ心配だからな。」
「もしかして私たちが乗車するのに反対な理由ってそれだったりする?パパ。」
「さて、仕事に戻るか。ルネ珈琲を頼む。」
俺はそそくさと立ち上がり執務室に向かった。
娘を心配するのは普通だろ?
フェリクスが乗るって言ったら絶対に一緒に行くとゴネるに決まっている。
侍女と護衛が居てもパルスやエトワル宮殿で良からぬ男が来ないとも限らない。
そんな心配で反対していたのだが、ロヴァンス卿から聞いたクロエがグロリア王国だけじゃなくリーシャンにまで行きたがってる話を思い出したのだ。
子供の好奇心を抑えてはいけないな。
この世界しか知らないロヴァンス卿でさえ娘の意志を大切にしている。
それにアレ以上反対してたらレティに嫌われそうだ。




