バカヤロー
アリロスト歴1788年 1月
俺は明日、倒れる。
てか、その前に各国動き過ぎだぞー。
何やってんだよ。君ら軍人使って耕作でもしろ。
小麦が足りない!よし、略奪だーっ!てやってること2千年近く変わってねーじゃん。
母さん(日本の)、啓蒙思想が行方不明です。
グレタリアンは「違反だ。休戦協定破棄する。」とカメリアに再度宣戦布告。
そしてグレタリアン商館とジーナ州の解放要求をモスニア王国へ。
布告も無い攻撃を非難。(報復すんぞと言外で示す)
モスニアはベラ諸島で海賊を追って居たらジーナ州へ逃げたと強弁。
捕獲するまでは撤退不可だと宣言。
はははっ、嘘も此処まで強弁されると反論できないな。
それにグレタリアンは今、モスニアと開戦出来ない事情も判っているので強気だよな。
そしてカメリアも頭が痛かったんだと思う。
終結宣言したとはいえ北部の上ナユカ国にはグレタリアン軍が駐留してるし移民も大量にいる。
おまけに裕福で羨む程に外貨稼いでる農園主はカメリアよりグレタリアン贔屓。
武器弾薬、軍船も早く造船したい。
そこで必要に為るのは外貨。国内通貨は紙幣でも良いが他国は無理。
そして此れはヨーアン大陸独特な共通認識、一国を強大化させないぞっ!てのがある。
そんな認識の元、新大陸カメリアを見れば温暖で広大な平地があり、ある程度ヨーアン人種たちを満足させれる農産品を大量生産が出来る。何せ黒人奴隷を40万以上も使っている。
ねっ、放って於けないでしょ?ヨーアン大陸の人々が。
で、懲罰か?と勘違いする程の戦費や貸付金返済要求を出されている。
フロラルス王国は返還要求は出していない。
理由は穀物(小麦、トウモロコシ、砂糖etc)を安価で1800年まで輸出すればロハにするとジョルジュがカメリアに行った際に返還条約を締結して来た。
予知夢での結果を回避する為ですね。
ヨーアン式で馬鹿高い戦費の返還要求をしたら海賊に襲われたでござる。
そしてイラドへの海域は海賊の草刈り場になってるし、仕舞にはマリド王国の湾付近にも常駐して大変だった。
てな訳で海賊船と戦争なんてしません。
時間と金の無駄遣い。
おかげで見逃して貰えたけどさ、グレタリアンがカメリアに侵攻開始したら援軍すんの?
この援軍は無理だよな。「海賊の為に戦う!」世間的に見て駄目だろ。
そう主役さえ参上しなければ。
そしてルドア帝国は、マジで国を統治する気があるの?
そんで真龍帝国にちょっかい出すのヤメテ、今お友達から始めてる大切な期間なの。
お茶に絹に民族衣装、大豆や乾燥果物、陶器、そして見事な銀細工品、翡翠医や瑪瑙も人気。
解散して新たに作った東イラド会社の良い稼ぎ場所。
なんか俺が作った商品が人気でそれと交換に為るのだけどさ、絶対に価値が釣り合ってない。
真龍帝国で交渉していた外商が言うには貿易で利益を出さずとも豊かだと語ったらしい。
そう言う大切な国なんだから、女帝カテリーナの愛人整理案件で関わらないでくれ。
港近くの一区画だけでしか外国人は行動出来ないので国の詳細は不明。
初めて金龍城へ赴いたリシュー大佐たちが何もかも巨大で天の国か巨人の国に迷い込んだと錯覚しそうになったと語ってくれた。
ええー、1つの市くらい或るエトワル宮殿を見慣れてるリシュー大佐も驚くのかと思った。
俺は巨大な建築物より、大豆や唐辛子、辛子味噌がむっちゃ嬉しかった。
ランダ王国は自業自得だと思う。欲張り過ぎ。
土地+金って、大き過ぎて呑み込めなかったのではなかろうか。
じじい陛下が態々、出張ってグレタリアンを抑えたのに燥ぎ過ぎると後ろから撃たれるよ。
グレタリアンを舐めては駄目。
弟嫁の国だからって毎回手助けするとは限らないゾ。
それに今は真龍帝国経由で沖標に商館を置いて鹿篭(カゴ藩)や神門(カナト藩)でも取引しているらしい。皇帝から幕府にフロラルス王国と貿易しろって命じてくれた。
皇帝って強いなー。
絶対なりたくないケドね。
だけどこの凶作は最低でも5年以上は続く。
冷え込む寒さが厳しい所為かこの時期は人が良く亡く為る。
鬱陶しかったパルス請負組合の年寄連中が現在は彼岸へ渡っていった。
売買官禁止なので当主が無くなると貴族籍が消える。
お陰で有能な第三身分の人間が税務官僚へと転化してくれる数が増えた。
まあ肉食獣的に野心や欲望が強いので試験前講習は半年にしたよ。
大凡10年前に転身してくれた若人たちはパルス税務署で頑張り今は後輩指導だ。
ガロア人は税を納めパルス市民に為った者が多い。
金融取引場を作ったり金融関連企業や証券会社、保険会社とグレタリアンにあったシステムを鮮麗させて俺が日本で生きてた頃に見た良く似たシステムを構築していた。
転ばぬ先の杖過ぎるかなと思いながらルール作りをトーマと始めた。
何故か知らぬがトーマは俺に感謝仕切りで、丁寧に株取引の仕組みを教えてくれる。
俺、金融なんて基本は判らないんだよ。元金、利息、以上ぐらい。
なのでガロア人には顧客に丁寧で分かり易い説明と嘘などで顧客の財産を棄損させないでな。
って、頼み込んだ。儲け過ぎたり損させ過ぎはガロア人排斥に為る危険性も教えて於いた。
「ガロアの者には殿下の教え悉く守るように申し付けます。有難う御座います。」
インテリヤクザみたいなオッサンに傅かれてるみたいで薄気味悪いのだが、うん、放置しよ。
本当は新教徒の人たちにもパルスに住んで欲しかったのだが、移民して来てくれた新教徒の人たちって財産家ばかりなんだよね。
そこでパルスに住めばオールド・ブルジョワジー(旧教徒)とネオ・ブルジョワジー(新教徒)との対決みたいになることを懸念し、まだ民間には許可していないドンヌ地方に或る領都ヴリーに住んでもらう事にした。
蒸気機関車も停まる駅舎も在るから便利。パルスより作った街並みが綺麗だしね。
代表者たちみたいな人たちにその旨を説明すると理解してくれた。
何せだまし討ちにして旧教徒が新教徒を大虐殺したことあるから理解されたのかな。
カリント教はホント血の歴史だ。
カリント教での新教徒は合理主義なんだ。
離婚も出来るし金儲けをしても良いって教えで赦しを与えた為、旧教徒が危機感を持つ程に新教徒は急激に拡大して行ったのだ。俺がカリント教徒なら考え方は新教徒になるのかな。
きっと彼らならヴリーを発展させてくれるだろう。
俺が倒れると決まった日から2週間前にやっと人体解剖図が出来た。実に80冊。
まず王宮図書館んへ、そしてジョルジュ、関わってくれた人たち、オーリア帝国の義母ビストール(3冊)、神聖カリント帝国ランツ3世(3冊)、エーデン王国サディ陛下(3冊)、ランダ王国(1冊)などなどを送るように申し付けた。
市民大学にも寄贈したよ。
パルス大学は悩んで保留。教会系だからね。ワクチン論文で酷い目に遇った。
パルスアカデミーにも当然寄贈。
これが怪我や病治療研究の一助に為る事を願った。
さて、初春の催し物が滞りなく終わり俺ら王族が何時もの順番で何時のもの場所に並び陛下を待つ。
じじい陛下が覇気を駄々洩れさせ挨拶を行いシャンパンを掲げる。
戦へ行くなら此処で叩き割るのだが、祝いの席なので皆も掲げては口に含む。
俺に手渡したのはルネだ。
透き通った美しい黄金色の液体を口へ流し込む。
酢っぱー!、苦ゲー!おい、なんで毒消しよりも不味いドラッグカクテル作ってるんだ。
此処はコテっと寝れば良いだけだろう。
柿渋みたいなのが舌や口内に張り付いて酸味、苦味、渋味のコラボに意識が遠くなる。
「兄上大丈夫ですかー。」
「------------」
「黒竜騎兵、兄上を控室に。医師もいまさす。早く騒ぎに為らない内に。」
王太子と親衛隊が水晶の間を去ってもザワザワと会場のどよめきは収まらない。
そこへエル4世が威厳を込め声を発した。
「皆の者、アルフレッドが体調を崩し騒がしたようじゃ。しかし今日は社交界をデビューする者たちの記念する祝いじゃ。さあ、音楽を奏でるのじゃ。」
すると楽団からは陛下の好きな「愛の調べ」が流れ始め、人々の緊張は解けて華やかさが戻った。
そしてエル4世国王陛下やジョルジュ王弟殿下、レティシア王女、フェリクス第一王子も挨拶に訪れた少年少女や付添人たちへとにこやかに言葉を返して行くのだった。
睡眠薬で眠らされトリプル激マズ酒に溺れる夢を見てのたうつアルフレッドを除き、水晶の間の煌びやかな社交の時間は続いて行った。
俺は丸3日寝込み、目覚めたら良い顔のルネ、レコ、ゴドール、トーマ、ボルド、ラゼ大佐、ニコラ中佐、クルレール中佐がいた。
えっ、やだよ、何か怖いゾ。
「殿下、僕たちに隠してましたね。王太子を辞めるって事を。」
「えー、えーと、うん。でもほら偶にボヤいてただろ。王太子辞めてー、とかさ。そうですね。ごめんなさい。かと言って直ぐに辞めるわけじゃない。でも君たちには言葉にならない程の感謝をしている。だから出来うる限り皆の要望を受け入れ希望する場所へと移動させよう。急で済まない。」
「重大事なのに内緒にされたからルネが起こって壮絶カクテルを作ったんだぜ、アル。」
「それは済まなかった。しかし国の一大事に関わる問題だった為、陛下と2人で決めたのだ。済まなかった。でもだなルネー、あれは許されない味だぞ。眠り薬より不味さで意識失ったわ。それにさ、王太子で無くなった私には価値が無いと思うがルネとレコには、出来れば傍に居て欲しい。友人として。」
「また殿下はご自分で価値がないとか言う。それに側にいるのは当たり前のことです。僕が居ないと不便でしょう。」
「俺は初めて手を差し出された時から決めている。女は多いが友はアルだけだ。」
「それは少し寂しいですな。腕のいい商人も必要でしょう。」
「私はお役に立ちますよ、殿下。気のいい画家も良いモノですよ。」
「これからも私たちが守るのは殿下ですよ。いっぱいの近衛は連れて行けませんがニコラとクルレールと一緒なら100人は倒しますよ。なっ。」
「はい。馬に乗られそうなら馬車に移さなければ。」
「ふふっ、殿下の様な方を知ったら俺も、もう普通の生活には戻れませんよ。」
「ガロアの者の利点は何処ででも利益を産み出せます。私に恩を返させてください。」
皆から発される言葉聞いて俺は思った。
嬉しけど嬉しいけど、イケメンなオッサンたちに取り囲まれていた。
それに待て、よく考えたら此処は俺の寝室だよね。
「君たちの気持ちは凄くうれしいよ。その前に1つ聞いても良いかな。ルネ、何故寝室に人を入れてる。俺は寝室に他人が居るのは大嫌いなんだ。一度出てけー!。」
「アル、やっぱりアルは俺っていう方が似合うと思うぜ。」
「うるせー、レコ。取敢えず出てけ。」
サワサワと笑いながら8人のオッサンが寝室から出て行った。
本当は顔が熱くなるくらいに赤くなっているのを隠したかった。
バカヤローっ!
こんな俺を喜ばせるなよ。
未だに多くの民が寒さの影響で亡くなってるのに何も出来ない俺なんかを。
でも嬉しい。
ルネの言葉1つ
レコの言葉1つ
ボルドの言葉1つ
ゴドールの言葉1つ、
ラゼ大佐の言葉1つ
ニコラの言葉1つ
クルレールの言葉1つ
トーマの言葉1つ
一枚一枚俺の全身に降り積もって行く俺への言の葉。
俺はこんなにも幸せで良いのだろうか。
俺は彼らに出会った日や重ねた日々を思い出していた。
何時も俺を想ってくれてありがとう。




