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告白  じじい陛下、困惑す

アリロスト歴1783年 1月




ヒャッハーな美形軍団もサディ陛下と共に昨年帰国してるがフェルナンは外交官として居残り。

脳筋じゃないよな?

何かプロセン兵相手にヒャッハーしてたらしい。

戦術とか戦略とかそんなチャチなもんじゃない、

ただただ集団で「突撃ー!」「蹂躙だー!」を繰り返していた。

報告書の文章が白痴化していた。

銃弾受けても平気って書いてるけど、頭は大丈夫か。


そんな一団に混じって戦っていたのがフェルナン。やっぱ脳筋じゃねーか。


そういや俺は無視していたけどルドア帝国カテリーナが武装中立同盟為るモノ呼び掛けをした。

えー、これ絶対にグレタリアン帝国が誤解すっぞ。

素直に禁制品以外は自由貿易協定で良くありませんかね。

敢えてこんなものに加入する気はサラサラなくあのカテリーナ提案つうだけで俺は逃げる。


もう国外問題は今年は勘弁して欲しい。



さて、俺はじじい陛下やルネ、レコに10年は続くだろう凶作について話すことを決断した。

そしてアンジェについても。

これを言って於かないと国外問題にじじい陛下が出張りそうだからな。

今回の対グレタリアン戦みたいに。

俺も反省した。

食糧危機についてじじい陛下に話して置くべきだったと。

知らないと能天気になるのは仕方が無いのだ。


カテリーナがあんな発言するから危機感を持ったグレタリアンがランダ商船をボッコにする。

それを知った武装中立同盟国が制裁措置としてグレタリアン本土を攻撃する。

それを回避する為にスルーするように言って於いたが、知らなければ本土攻撃というチャンスをじじい陛下が見逃すはずはない。

それにランダは婚姻同盟国だしな。

もしも参戦するなら覚悟をしてやってもらおう。

ダラダラと戦うのが戦費も食料も掛かり最悪な結末が待つことに為る。


如何話すかって?

夢で見ただよ。

だってずっと予知夢だからな。

今年の夏は寒いぞ。じじい。






「------ と言う訳です。祖父さま。食料問題とアンジェについて宜しくお願いします。」



 話し終えるとアルフは礼をしてラシエットへ帰った。

余は茫然としていた。

天然痘が癒えてから時々、夢で見ていたそうだ。

今年の夏から冷夏になり後は10年くらい寒さが続き、延々と凶作が続くことを。

そうか、だからか。

寒い所から穀物を輸入してはベロー地方で耕作しておったのは。

余は初めてアルフの行動に得心がいった。


「戦争するなら最小で最大の結果を齎して下さいね。」


戦争には反対だろうに婚姻同盟であることを考え余の判断に委ねる。

優しい奴じゃ。

商人のように金を稼いだり、それを元手に新たな技術を得、債務を減らし歳入を増やした。

それもこれも穀物を仕入れて民を飢えさせない為か。

昔言っておったな。

「パルス民、30万が飢えて暴動に為ったら怖いですよ。」


そんな夢を1人で14年間も見ていたとは苦しかっただろうに。



それに驚いたのはアンジェを娘としか思えないということだ。

全く飛んでもないことを考えおって。

本当にアルフは異端じゃったわ。






アリロスト歴1783年      8月


6月が過ぎ、その日が唐突に来た。

靄が濃くなり粒子の霧が太陽を隠し、薄暗いラシエット宮内は不吉な空気に満ちていた。

この鼻を付く異様な匂いは硫黄、つまり火山の噴火じゃ無いか。

アルフレッドなんでこの匂いを覚えて無いんだ。

憶えていれば対策も考えたのに。


俺は病気予防用に作ったマスクを棚から取り出し身に付けた後、開けていた扉を閉めた。

飛び込んできたルネがこの霧は毒が含まれてると言うので慌ててマスクを渡してレコやゴドールたちにも身に付けさせ宮の窓や扉を全て締め切るように伝えて子供たちの元へ急いだ。


レティやフェリクス、タヴァドール夫人や側付たちにもマスクを付けさせ、奥の部屋で待つように告げた。そしてアンジェの元へも行き子供たちと同じように接した。

そしてじじい陛下や閣僚たちにもマスクを渡した。

(はぁ、ガーゼのマスクが欲しい。)


これは火山の噴火が原因で霧には毒素が含まれているので霧が薄まるまでは外出しないように言う。


俺はつくづく風邪予防にマスクを大量に作って拡散して置いて良かったと思った。

この時代は風邪で普通に人が死ぬのだ。

それの予防が出来ればと大量に木綿が出来てから自己改良をしてマスクを作った。

まあ配り歩いたが結局は誰も付けなかったけどね。

うん、貰ってはくれるんだよ、だって俺は一応王太子だから。


幾ら何でもこの濃い霧の中をパルスへ行って、鼻口を布で覆うように伝令は頼めないな。

くそっ、これが分っていたら前もって国中に告知できたのに。

予知夢でなぜ気付かなかったのかとアルフレッドに内心で悪態をついた。

この臭さなら、うん?臭い匂い?匂い------


そして結論が出た。

エトワル宮殿に住む人々はあの激臭すら何事もないように暮らせていた。

俺なんて吐き気と戦う日々だったのに。

アルフレッドも平気だったんだな。くそっ、何という罠だよ。


ラシエットに住む近しい怯えた人々には、これは自然現象で呪いも悪魔も関係ないよと励ました。

啓蒙主義が定着しつつあると思って居たが、未だに呪が顕実していて呆れた。



そうやって怒涛の日々を送っていた。

3日目に為るとロヴァンス卿は伝令を呼び出しパルス民へ俺が話した事を公布させた。

多くの人が死んでいると聞こえてくる。

俺は凄まじい罪悪感で圧し潰されそうになる。

どうにも成らない焦燥感に精神が焼き切れそうだ。

そう言えばクロエは大丈夫だったのだろうか。

同じ日本人なら温泉や火山で理解してそうだが、心配だ。


4年の月日を経て交わしたメッセージは6回、全て食べ物の品名だけだ。

だがそれだけでいい。

この世界にたった1人と実は絶望していた俺を励ます魔法の文字だ。

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