主役には敵わない
アリロスト歴1782年 4月
ハイ、そろそろ落ち着こうか、じじい陛下。
もうさ72歳だよ。
まあ世の中90歳過ぎても子作りした方もいたから不思議ではないのか?うん。
娼館で次々に孕ませるつうのを聞かされる孫の立場はどうすりゃ正しいの?
「おめでとう。」
1部の将校を除いて殆どがカメリア国から帰国して無い。
うん、カメリア軍総司令官ジャンが魅力的なんだろ。
ファエット少佐は其の侭にカメリア在住でいいや。やっぱり面倒な人だった。
一個師団率いたいとか(カメリア将校じゃないから無理)、南部で戦うとか(南部の戦闘は苦労している。英雄の俺参上)、命令無視して違う州へ行ったりとかな。(南部は違う、ヨーク行くべ)
ジャンからは、じじい陛下に褒めてやってくれって手紙が届いた。
俺の親衛隊とか絶対に嫌だ。
まあ、居ない存在は消して、祝戦勝パーティでじじい陛下は元より各閣僚の皆様もニコニコご満悦。
華々しい活躍をしたラゼ中佐たちも今日は主役なので楽しんでくれ。
そしてファエット少佐に寄付をしたブルジョワたちもこの度は水晶の間に招かれている。
一応ね、何箇所かは貴族オンリーの区域がエトワル宮殿には存在している。
現在は4000人に減っている使用人たち。
季節ごとバイトを止め何とか1年契約に出来、長期雇用もと考えたが婚姻があるので無理だった。
でもエトワル宮はエトワル宮なので多くのマナーがこれでもかって言う位にある。
頑張って気にしないフリをしていたが限界が来たので退席した。
許せ、じじい陛下。
レコがポフ(ジャガイモ菓子)を買って来てくれた。
ジャガイモを掏り降ろし小麦や塩を混ぜて焼くだけの素朴な菓子だ。
蒸して団子にした物もある。
気紛れに思い付いた料理をルネやレコに教えてパルス民へと広げて貰う。
今や形や味が色々と変化しているらしい。
乾燥ジャガイモも作ってみたら時短料理が出来たとシェフが喜んでいた。
じゃが芋を洗い、皮を剥き、フライドポテト用くらいの長細さに切り、塩水で茹でる。 それを乾燥させて出来上がり。
案外簡単にできる。
フロラルスは地中海気候ぽくて、野菜や果物を乾燥させるのに向いている。
そして俺の領地と王家直轄領ではせっせと保存食を作り貯め込んでる。
肉も干してるよ。塩漬けは苦手なのでスモークメイン。
本当に食べる物のことばかり考えている。
予知夢でアルフレッドを吊るし上げていた人々は其処まで飢えた人間には見えなかったな。
アルフレッドは最期まで王だった。
「民よ、王の元へ帰れ。」
それを真剣に願って居た。
そこへ行くと俺なんかは何処まで行っても小市民で精々が食い物を用意くらいか。
食い物を買う為に歳入増やしてみたり食い物を耕作する為に真龍帝国と交渉して貰ったり、
うん、やっぱり全部食いもんじゃねえか。
グレタリアン帝国で下院がカメリア国との休戦法案を通した。
首相も辞任し、皇帝も戦闘継続が言えない状況になったようだ。
かと言ってイラドの防衛は緩めないけどな。カレーの為に香辛料は大事。
それに商館を置いてるマリド王国には言語学者や植物学者、医学者も滞在している。
紅茶もいいが小麦や砂糖もなくてはならない輸入品だ。
輸送技術が上がらないとバナナやマンゴーが腐らずに運べない。
どうしても食べたくて完熟前に無理を言い、そして木箱の中が生ごみになってた悲しさよ。
上手くいくと思ったんだけどな。
輸入ばかりではなく最近は穀物以外の輸出も増えている。
木綿生地が量産できるように為り他国からも引き合いが或る。
俺は国内で循環するのが理想なのだが紡績工場は国が運営しているので口出し出来ない。
でも今までよりも安価なので王国民が少しは衣装を楽しめてると聞くと悪い気はしない。
じじい陛下もホクホクだ。
そして大量生産に負けるかと熟練職人たちが作り出す手織りのコットンも人気だ。
レースや磁器、シルク工房とじじい陛下も愛人と一緒に色々作っていた。
問題は売り上げが国庫ではなく愛人に渡っていたことかな。
最悪じゃねーか。
今は王国立工房として確りと経営して貰っている。
前回クロエがくれた茶筒が面白かったので陶器でポット(ジャム瓶)を造り、コルクで蓋を作った。
今は密閉は難しいが魚のオリーブ油漬けを試作している。
そしてとうとう蒸気機関車みたいなモノが出来て5kmほど走らせた。
小麦などを乗せて荷台列車はまったり走った。
パルス北西から動かしたが多くの見学者が集まり蒸気の力で動く乗り物に大はしゃぎだ。
パルス新聞も当然来ている。レコだが、今日は他の記者もいた。
荷を上げ下ろしする人や蒸気機関を運転する人も乗っているのだから俺も乗りたかった。
だが此処までくれば直ぐに旅客車ができるだろう。
俺はレールを敷く場所を脳内地図で確認しながら、帰ると直ぐにロヴァンス卿に会いに行った。
アリロスト歴1782年 11月
パルスで予備休戦協定が結ばれた。
うん、そうなんだ、予備なのだ。
まだ3万近くもグレタリアン帝国はカメリアに兵を残している。
グレタリアン帝国の艦隊が多く襲われた為に海上戦が暫く出来ないのではと推測されている。
主に海賊行為をしているカメリアに襲撃された。
しかし実際問題としてグレタリアン帝国はカメリアには新たに兵を出せないだろう。
水夫として強制徴募されたものが約4万人が脱走している始末。
俺的には全く参戦する心算がなかったのに気が付けば、あれよあれよと戦争してるし。
糞ぉー、主役め。
俺なんて端役は絶対、主役には敵わないのさ。
だって大抵の場合、主役が正義だからね。




