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その男、激ヤバにつき

 アリロスト歴1780年  2月




 ファエット少佐はやっぱりヤバイ!

 エトワル宮殿で独立戦争に参戦する為の資金集めのロビー活動を始めやがった。

 おいこらっ!

 パルスにはグレタリアン帝国の大使邸が或るんだぞ。直ぐに耳に入るだろうが。


 しかもファエット少佐は男性女性共に凄く人気が有り、支持者たち(ファンクラブ)が出来る始末。

 何、あの濃いー熱さが皆は良いの?マジで?

 俺にはさっぱり分からない中で、貴族やブルジョワがサロンを開いてはファエット少佐をゲストとして呼び、何か怪しい電波でも浴びたのでは?と訝るほど熱狂してる。

 とても23歳が行う手腕とは思えない才能で寄付金を集めているのだ。



 実はアンジェもルイーズ公妃が催すサロンでファエット少佐に1万リーブルを寄付して来ていた。

 いえまあ王太子妃の予算範囲内なので無問題(ノープログレム)さ。

 ふと俺は思った彼に王太子を遣って貰えば良いんじゃないかな。


 主役(ヒーロー)は、存在しているだけで主役(ヒーロー)なんだぜ。ちくせう。



≪現実逃避≫


 そう俺は何時ものように現実逃避をしていた。

 俺を不機嫌に見るグレタリアン大使が発する圧力の凄まじさよ。



「殿下、フロラルス王国はカメリアの内乱戦には干渉しない立場でしたな。」

「ええ私共は国王共々に不干渉の立場です、はい。」

「しかしファエット少佐でしたかな?彼はカメリアに赴き、我々の軍と戦い大勝し今回は我が国グレタリアン帝国と戦う為に戦費を集める活動をしているそうでは無いですか。」


「いえ彼の場合は密航してカメリアへ行き1人で参加して来ただけで、私も彼が帰国した時にそれを聞いて驚くばかりでした。責任を取って私付きの親衛隊の話も辞退されました。それに寄付金を集めたとしても王立軍は出兵を予定しておりません。サロン開催は各家々の判断、幾ら王家でもサロン1つにそこまで介入は出来ません。それでも不快な話を耳に入れ済みません。」


 ですが、と大使の話は続き嫌味を言われた。

 挙句に「帰国させて頂く」と言って応接室から出て行った。さよなら大使。

 将来的に蒸気機関車を開発する際にグレタリアン帝国の技術者や科学者と協力で来たらフロラルス王国せの弾みに為ると思い俺は両国の大使を駐在させ友好の一助を狙っていた。


 散々だよ、ファエット少佐め。

 まあどの道、グレタリアン帝国との友好化を考えていたのは政府内では俺だけだったけどさ。

 外交官を両国に駐在させる話を纏めてくれたシャトレ副外相も乗り気ではなかった。


だが、それでも言いたい。ファエット少佐は激ヤバだ。主役(ヒーロー)属性には勝てぬ。




アリロスト歴1780年  6月 



 6月だけど梅雨がない。

そんな物足りなさを感じる頃に、エーデン陛下御一行が来たヨ。サディ陛下だよ。

エトワル宮殿が一気に華やぐ美形集団参上!当然にフェルナンもいる。

アンジェが輝く笑顔でご挨拶してます。


さてサディ陛下と美形集団は、何とヒャッハーな野郎たちだったんだぜ。

父を殺した義弟や協力者を血祭りにあげ、占領していたルドア帝国兵も銃や槍の錆にしてアムル列島から叩き出し解放した住民たちと火酒を掛け合うイカレ具合。

火酒ってアルコール度数が高いから肌もヒリヒリ、目に入ったら激痛で失神するらしい。

前回、土産にもらった時に思った。


「コレは飲み物じゃない。消毒薬だ!飲めるか!」


 見目麗しいこの上品な一団が手の付けられない暴れ馬、世の中は間違っている。

難なく社交を熟す胸にヒャッハー!を秘めた男たち。

エーデン王国の駐在大使がにこやかに報告して来たモノは出来れば知りたくなかった俺だった。

北海恐るべし。


 そしてお願いだから俺を取り囲むのは止めてくれませんかね。怖いから。


 引き攣った笑顔で俺はサディ陛下と話しているとじじい陛下が声を掛けて来た。

サディも殿下じゃなく陛下になったので、じじい陛下もレセプションに参加。


 「お初にお目に掛ります。私はファエットと申します。サディ陛下。」

「おう、君があのファエット少佐か。素晴らしい戦歴だと聞いた。」

「いえ私など。サディ陛下こそ見事に敵討ちを成され敵兵を平らげ追い出したとか。素晴らしいサディ陛下の戦いぶりを聞き私も胸を厚くしました。」



 何々コイツら、方や激ヤバ騎士、方やヒャッハーな王様ってバーサーカーの巣窟じゃん。

俺はこんな面倒なモノ(ファエット少佐)を連れて来たじじい陛下を睨んだ。

じじい陛下は俺から視線を外し「楽しめ」と告げて会場を出て行った。

よし、俺も出て行こうと思った時にヘンな話が聞こえた。


「将兵を辞められた方だけでは人数が足りないのです。そこで優秀なエーデン兵を傭兵として雇いたいのです。どうでしょうか、サディ陛下の力をお貸し頂けませんか。」

「勿論。では詳しい話は私の部屋で。」


「おい、ちょっと------ 」

止めようとした俺を美形集団(イケメンズ)が取り囲み、あっと言う間にサディ陛下とファエット少佐は会場からスタスタと軽快に去って行った。

ヤラレタ。

俺はもう泣いてもいいよね。

コレは絶対に、じじい陛下、ファエット少佐、サディ陛下と美形集団がカメリア戦に反対な俺を何とかしようとして嵌めたよね。くそ、じじい!

 


 アンジェとフェルナンは仄々(ほのぼの」)してて良いよね。

 ルイーズ公妃たちとも一緒に和気あいあいと過ごしていた。俺は溜息を飲み込む。




夜会も終わり、深夜、寝室でクロエにコメ配送2回目から帰って来たメッセージを見る。


「煎茶、緑茶、お茶漬け海苔!」


フッと俺は小さく笑いをこぼす。

疲れ切った時に見るクロエの丸文字はユーモラスで暖かい。


俺はそのぬくもりの中で日本に居た頃へと記憶を旅に出した。

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