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ロヴァンスの女

アリロスト歴1771年   クロエの回想





   朝に目を覚ますと周囲を見て状況が変わっていない事に虚脱感を私は憶えた。


  13歳で日本で世界していた記憶が戻りパニックになっていたけれど、この世界で生きて来たクロエの記憶も思い出し、病後でゆっくり眠っていたら次第に私は落ち着きを取り戻した。


  初めは過去へ来たのだろうと絶望的になった。

  だって私は殆ど世界史なんて知らないし興味も無かったからだ。

  過去改編で私の望み通りにするわ、なんてのは無いし無理。

  ただ大きな戦争が2回起こって独裁者がブイブイ言わせてた話は映画で見た事があった。

  その映画で観てた服装と全く違ったので、時代が違うのだとホッと安心した。



  しかし気付いてしまった。

  西暦でもキリスト教でもないこの世界。そして私は知っていたコノ世界を。


  小説【悲劇の王妃アンジェリーク】



  サクサク気楽に読める宮廷恋物語がメインで通勤の息抜きに丁度良かった。

 読んでるときは「チっ、邪魔だよなー。アルフレッド。」などと能天気にフェルナンとアンジェリークを応援していたのだ。

  その気楽な恋物語が83年から凶作に為ってから趣が一変。

  実はフロラルス王国には資産が無く負債が凄い桁数で外国から小麦輸入するにも金なし状態。

  飢えたパルス民や落ちぶれた王家の王位を狙う人々。

 利益の為にアルフレッドやアンジェリークにも罠が仕掛けられる。

 そして2人の恋物語ではなくなり群像劇に転じ、終幕———王族は滅んでしまいました。



  後半は殆ど惰性で私は読んでいた。

 だって気楽さが良かったし大体にして、朝の通勤時間で群像劇を真面目に読む気になれないわ。


 ただ90年以降は貴族も次々と殺されてしまったけど、その殺す理屈は分んない。

 俺たちが大変なのに贅沢をしていた罪って書かれてたけど今も意味が分りません。

 そんな理由で殺されたくないわ。



だがこの世界が【悲劇の王妃アンジェリーク】だと知った時の絶望。

過去だと思った時よりも深い絶望に私は沈み込んだ。

優しい家族たちも当然私も貴族で殺されるなんて真っ平だった。革命まで約20年か。


 何かできる事を考えて色々行動確認したけど、何も出来ない貴族の14歳少女でしか無かった。

 なので私は暫くは耐える事にした。

 トイレや風呂や日常生活、羞恥を気合で抑え込み毎日を遣り過した。

 他人の手や目が在るのによく堪え得るね?ですって?

 クロエの肉体がそうゆう仕様になってるの。気を抜くと侍女たちに世話されちゃうの!


 よく耐えらてるなあ。と自画自賛し、夜ベットに入って削られた精神を回復する。

 もうねー、生きてるだけで毎日が必死です。

 我が家は家族で教会へ週に1度の礼拝に参加しているのだけれど、私はこの時ばかりと内心でこの世界へ転生させた神を罵倒している。


 そりゃあ生前は無宗教で暮らしていたけど、一応は命日に線香焚いたり盆には祖先に感謝してたのよ。そーだ、クリスマスも祝ってたわよ。そうかここはキリストじゃ無かったですね。

 でもこの仕打ちはあんまりだ。

 私が何したって言うの、答えなさいよ馬鹿野郎!

 毎週そんな罵倒を内心で繰り返しているとパパから私の目付きが悪いと注意された。

 気を付けたいけれど、この罵倒は私にとって唯一のストレス解消法なので止めません。


 凹んでも駄目だ。いつかは自由に生きてやると決意して色々な国の語学を学んでいる。

 クロエってば頭がメッサ良いの。

 直ぐに隣国の言語が読めるように為ってるし、この才能が日本での私にあればと思ってしまう。

で、

 そもそも私がこの世界でしなければ成らない事とは何ぞや?



 先ず前提として【悲劇の王妃アンジェリーク】と言う小説の中でロヴァンス家など無かった。

 そして当然のように私も存在していない。

 と言う事は、私がパルスやエトワル宮殿に行かなければ物語は変化しないよね?

 私は密かにお金を貯めて於き海外に伝手を作りフロラルス王国がヤバくなったら一家で亡命一択。

【悲劇の王妃アンジェリーク】に登場していたキャラには何もしない近付かない。

 そう覚悟が決まって暮らしていた。そこへ、何処かで神の高笑いが聞こえた気がした。



  悲報———  王命でパパがパルスへ。


 それだけなら未だしもママンが急に張り切り出して一家揃ってパルスへ行く準備を始めた。

 いえ分りますよママン。

 名門伯爵家だけどパパが20代で王の不興を買いエトワル宮殿から放逐されてしまった。

  (パパは自分から自領に戻ったと力説)

私としてはパパが辞めたにせよ、辞めさせられたにせよ、パルスから脱出しててくれて有難うなの。


 そう言いたいのは山々なのだけれど婚姻がね。

 嫡男の嫁が決まらない。

 宮廷で政争闘争に負けエトワルから消えた家って言うのは貴族での評判が最悪らしく、また社交の本場もエトワル宮殿なので貴婦人たちとも交流が持てずに結婚しない男たちが出来てしまった。

 内心で私は誰でもイーじゃんなどとボヤいてる。

 家系図を愛して止まないママンには一生秘密ですね、コレは。


 そして他の兄姉、何と私にもエトワルで婚姻相手を見つける!

 などとママンがホザいて使用人たちに私の荷物も準備するように命じていた。

 何を言ってやがるんでしょうか、冗談はカツラだけにしてくださいませ。


 「絶対行かない!」


 そう叫び脱兎の如く自室へ走り去り、こんな後の為に付けて於いた鍵を掛けた。

 我が家で武具を整備したり作成している職人さんたちに頼んで作って貰ったのだ。

 婚姻話が出たら辞めさせる手段の1つに作って置いたの、抜かりはない。


 もし針金のようなあの鍵を壊されたら?

 幼稚園児が駄々を捏ねるみたいに叫んで大暴れをしてやる予定です。

 だって私は自覚している。

 絶対にこの世界の人たちとは共に過ごせないことを。

 クロエの感情が身体に残っているので家族とは一定時間なら過ごせる。

 だけど他人は無理。

 会話はしているけど私の中では成立していない。価値観が違い過ぎる。


 そう私は家族を無事に逃がせたら1人で暮らして行くの。独りが慣れてる日本に居た頃からね。

 寝る前にストレッチや屋内散歩を続けていたから体力は付けたし、後は料理を作りたいなー。







   アリロスト歴1777年     7月



 ええーと、予想外の事がいっぱい在って兄がバカンスで戻って来るとエトワルでの話を聞いた。


 1771年に先ずアルフレッドを苦しめ続けたパルス高等法院を陛下が潰した、何か凄くない?

 そして同年にアンジェリークが懐妊しちゃった。

 小説なら来年なのよね。

 ピュアな2人は閨での過ごし方を知らなくて、互いに何をしていたかを話し熟睡。

 思わず読みながら声に出して笑ったのを覚えている。

 で、確かアンジェリークの兄が2人に子作りハウ・ツゥして妊娠が出来たのだ。


 そして1774年に天然痘で没したハズなのに元気いっぱいだって兄が笑った。

 なんだか天然痘ワクチン考えたのはアルフレッドっぽい。

 教会との問題があるらしく大っぴらに話せないらしい。


 そして小麦価格の自由化はせずに代替え作物を王家直轄領やそれに倣った貴族も作り、また2年は王家分の税を取らない為に農家たちも余裕が出来てパルスへ小麦を売れた。

 お陰でパルスの人は飢えずに小麦暴動が起きなかった。



 これって絶対にアルフレッドも記憶があるヒトだよね。私と同じで。

 と言う事は革命は限りなく起きにくくなった。

 ならばならば私は商売して万が一小説キャラに会っても大丈夫ってことよね。

 あと10数年は慎重に生きなくてはとも思って居たけどこれで少しは肩の力を抜いて息が出来る。


  なんかね怪しいなとは思って居たのよね。

  何故これが悪く言われるのか私には分からなかったし、アルフレッドの行動が普通に思えた。

  兄がパルスから持って帰る新聞てアルフレッドの悪口も凄かったし、特にルブランがね。

  アレって敵役のデゥーゴス公が作らせている新聞だったわ。

  兄は顔を合わせた事はあるけど挨拶程度だって言ってた。




  そうと決まれば兄や家宰と話をして早速商会を作って貰いましょう。

  港も商船も或るのだから使わないと勿体ない。

  ハリキにカカオがあるって言ってたから早速に買い付けて貰わないと。

  薬で使うだけでは勿体ない。


  折角にこの7年いろいろ学んでやって来たのだもの。

  昔のように働いても少しぐらいは良いわよね。

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