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事件は現場が起してる♪

アリロスト歴1775年      12月



  俺が意識を取り戻してから約6年経った。気が付けば21歳だよ。

 俺ってさ基本的には何もしてないよな。

 あるじゃんこうさ、王子が動き回って快刀乱麻の働きで事件解決。

 うん、ないな。

 俺が動ける範囲はラシエット宮地区にエトワル宮殿だぜ。

 まあ、両方広くて大きいから肥満には為る心配無用。

  (玄関開けてDKで6畳二間の生活が懐かしいよ。戻りたいとふと思う。)




  じじい陛下念願の娼館が来年初めに開店?客ってじじい陛下オンリー、それって大奥じゃね?

 ルネにラウラがじじい陛下へ妃に為りたいと強請った?て尋ねてみた。

 そんな話2人で一度もしたことが無かったから国務卿に聞かれてラウラも吃驚したそうだ。

 くそっ、やっぱり思い付きだけで言ったのか。まったくプンスカだよ。



  さて景気よくプンスカしている所に連絡が来た。アレこの人軍務卿を補佐してた人だ。

 何でもカメリア民兵がセッツ州コードで保管していた我が軍の弾薬を押収していったそうだ。

 そうカメリア側から報告が来た。

 どういうことかと言うと現在紛争中なので我が軍(フロラルス王国兵)は植民地だったナユカへ撤退しているのだ。だからフロラルスが残していた弾薬は貰いましたぜ。ありがとう!だってさ。

 サンキュー!フロラルス、byカメリア



  グレタリアン帝国に何か言われたら「盗られたんだ」と伝えてくれ。不機嫌に俺はそう言った。

 だって絶対に代金何て支払われないよ、コレ。

 はあー、援軍代わりのつもりで置いて行ったんだろうな。現場は。

 「事件を起こすのは、いつも現場だ!」


  暖炉や火鉢に火を点けても底冷えのする12月の執務室。

 酸欠に為らなくてイイが床下や壁から冷たい空気が侵入するのだ。

 炊き出しでもしたい所だが現在のパルスでは人手が足りない。

 実は現在2ヶ所同時に公共事業をしている。失業者対策や貧民救済策の一環。


 1つはパルス北西に或るフルーヌ川に橋を架けて北側から俺の領地へ向かう主幹道を建設している。

 着工は1773年だったかな。確か。

土木学会や学校で学者や職人たちと検討して貰い何とか着工と為ったよ。

まあこれも在るから約3000万リーブルを支払ったとも言える。済まない指定歳入で。


 主幹道路をパルスに引くなら西から東じゃね?

はい、そう言う意見はごもっとも。

でもね、西区って貴族街+ブルジョワたちの巣窟なんだ。

道路拡げたり区画整理したり出来ると思う?

やれたとしても弁護士一緒に国庫へ幾らの出費を請求されるか。俺に奴らは勘弁で御座る。


 そこで地図を見つつ無い知恵を絞ったら、東区から北西に川を目指せば着くよな。

そう気付いてから俺はじじい陛下とロヴァンス国務卿に説明をし、そして2人から各閣僚へ。


で、東区の再開発と道路工事を昨年中頃から始めたお陰で圧倒的人手不足なのだ。

 ポリスの方々には週に1度賄い飯と言う事でジャガイモの塩掛けを配布させている。

 ジャガイモだけは売るほどるからね。

 何もかも足りて無い事ばかりで溜息が出るけど、これが何時かは俺の望む未来の種だと考える。






  パルスでの小麦不足は輸入(カメリア+ナユカ)とジャガイモ、ライ麦で何とか乗り越えれそうだ。

  何で予知夢のアルフレットは小麦自由化をこの時期にしたのかね。

  そうだった、財政健全化と戦費捻出か。

って結局は小麦輸入で赤字増やすはパルス民には届かないわで、暴動が起きたんだった。




   そんな俺の心配を他所に素敵な演出のオペラが演じられている。

    「善き女」(恋人学校)

 日本では怖ろしく描けないテーマを遣っているのだが、御婦人方も笑って観ていらっしゃる。

 恋人の本性を試して見てはと、2人の男友達を唆し恋人交換させ、移り気をした女性を見て(女なんてこんなものだよ)と歌う訳知り顔の男。

 俺は思う。

 唆した訳知り顔の男って実は悪魔じゃね?


 アンジェ達も楽しそうだ。

 子供たち?留守番だよ。

 4歳と2歳では参加出来ないのだよ。今日は一応王家が招いている催物だから準公式かな。

 公式の場は成人した13歳からなのだ。家での晩餐も10歳からなのだ。着替え面倒だよな。


 でもウチのハウスマナーはフロラルス国内貴族の中では緩いと思う。

 タヴァドール夫人がレティとフレク(フェリクス)を養育に骨を折ってるようで申し訳ない。

 フレクと呼ぶのはレティがそう呼んでいたので俺も呼ぶようになった。

 実はフェリクスの養育係になりたい人間は多いのだ。

 俺が人気が無いのに何故?もしや早めの王位継承を狙ってたりして。(ハハハァ)

 


 フェリクスは王に成りたいのだろうか。

 透き通った碧の瞳を輝かせている顔を思い出すと何とも言えない気持ちになる。

 まあどの時代でも成りたいものに為れると言うのは奇跡なのだがね。



  奇跡の様な出来事がと言うか、とうとうジョルジュにも婚姻話が来た。

 俺のグレタリアン帝国の皇女案はきっぱり拒絶されランダ国第3王女になった。16歳デス。

 俺も勿論文句なしですよ。

 やっと陽ノ本国から嫁の親戚枠でコメを輸入出来るかも知れないんだぜ。

 そう言うチッコイ野望を隠してジョルジュから話を聞くと今はグレタリアン帝国とランダ国しか開かれていないアーリア大陸への足掛かり(羅針盤)にするらしい。

 俺が抑えている東イラド会社も使いたいそうだ。

  (ゲッまた植民地かよ。)


 清算中の東イラド会社で居座ってるヒャッハーな帯剣貴族(貴族冒険野郎)は、逆らう者は皆殺しだー!を地で行く人たちなので正直言うとダストシュートに纏めてポイ捨てしたいのだ。

 再利用何て時限爆弾スイッチを入れるようなもんだ。

 貴族なんですがね、軍人な所為もあって海賊みたいになってる。

 報告書を読んだ時はロヴァンス国務卿って類まれなる人格者だと尊敬の念を新たにした。


 「東イラド会社はもう少し待ってくれ、ジョルジュ。」

 「そうですね、まだ清算途中でしたか。返済も利子だけで毎年数千万リーブルですよね。」

 「ああ、居座ってる連中を一掃出来ればもっと元金が減ってたのだが。」

 「役員としての褒賞ですか。清算に来ている銀行家は役員を解雇しなかったのですか。」

 「貴族軍人を首には出来ないだろう。まあだから清算をしたら一旦は解散させる。」

 「解散ですか。」

 「そう流石に彼らの莫大な報酬を今後も払い続けれないよ。なので暫くは無理だ。」

 「ええ、そう言う事なら承知しました。」

 「婚姻式が終わったら一度ランダ国の駐在大使とも会いたい。ジョルジュ宜しく頼む。」

 「はい。」



  外務卿に為りすっかり素直になった弟ジョルジュ。

  うんうん、順調に経験を積んでいるようだ。頑張ってくれよ。俺の為に。






 アリロスト歴1776年   10月




 カメリアが7月4日に独立宣言を発表したと言う記事を読んだ日に、蒸気機関の完成の報を受けた。

俺が狂喜乱舞したのは言うまでもない。

なんと鉱山の排水機を作って今は稼働実験中だと言う。


ユニヨ大佐からは蒸気馬車が中々に人が乗れるように作れないと詫び状も届けられた。

俺は悩んだ末、トロッコの様な物を描き蒸気機関へ荷台を連ねて動かせば人も物も運べる?

と書き、トロッコのイラストには車輪と線路をそれと無く描き足し、ユニヨ大佐へと届ける。


 蒸気機関車が出来れば儲けものだしユニヨ大佐なら面白いモノを考えてくれそうだ。



  当然俺が見学に行けるものと考えていたのだがじじい陛下に留守番を言い渡された。

 ジョルジュも見学できるのに「理不尽だー」と叫んだのは言うまでもない。

 以前話した時から見学したがっていたじじい陛下に俺が逆らえるわけもなかった。






       秋のパルス中央広場より


    ここはパルスの中ほどに或る広場。

  水売りや3年前から売られ始めたミント茶売り、そして茹で上がったジャガイモを売りたちが工場通りや職人街通り5つの通りが交わるこの広場には多くの物売りやカフェが集まる。

 そしてカフェでは新聞が売られ学生も集っていた。


  集った人々は戦が無いお陰で景気が良くなったと言い、又ある人は道路を整備しているお陰だと言い、違う人はポリスが徴税人に従わなくなったからだと思い思いに気付いた事を述べ合った。


 「やっぱり王様のお陰だよ。」

 「そうだな。徴税人に困ったらポリスか王国税所へ行けば何とかしてくれるようになった。」

 「徴税人たちが怖かったのはポリスや軍を連れて来ていたからで無くなった今は怖くないな。」

 「儲けの4割で良いなど知らなかったからな。」

 「知らないから好き放題されていたんだ。」

 

  それからは毎日のようにエトワル宮殿へと押し掛け行く徴税請負組合の人々が近衛兵に押し戻されていく様を近頃新しく売り出されたバーシモン茶(柿の葉)を飲み乍ら語り笑いあった。



  






     ボルド高級宝飾店



  「親父、トーマさんが来たヨ。」

  「こらユリスよ、店では師匠と呼べ。」

  「すみません。師匠。」



 棚飾りやテーブル、長椅子を設えた豪奢な店内へボルドが歩み出て、目的の人物トーマを見付け挨拶をし、奥に或る応接間へと40歳は過ぎている男を案内した。


  「2年ぶりか、カメリアはどうだった。」


  「ああ散々な目に遇ったよ。北はグレタリアン帝国よりも先鋭化した新教徒の司祭がいてブランデーを売ってる俺を胡乱な目で見る始末。新大陸だと期待して行ったが何処も此処もカリント教教徒ばかりだった。今は下手に集団では動けない。それが分って帰国した。ボルドは相変わらず王太子と一緒にいるのかい。」


  「勿論だとも飽きないからな。あの方と付き合うのは。」

  「よく不審がられないと感心するよ。しかし2年ぶりにパルスを見たが偉く活気づいているな。少し前の淀んだパルスと大違いだ。」

  「特にここ西区は王の肝いりで排泄物処理員を雇って綺麗にしたからな。衛生員とか言ったな。」

  「それは凄いな。昔は勅命ばかりを10数回出して仕舞だったのに。」

  「はは、元々は殿下の発案だ。王太子宮の空気は此処より清浄だぞ。」

  「冷酷非道の王太子様は変わられたのか。」


  「変わりないよ。だがトーマよ、前も言ったが殿下は冷酷非情なんて事は有り得ないからな。偶にしかフロラルスに居ない癖にパルスでの噂を信じ過ぎだ。まあ昔の繋がりで縁は切れないが、儂は殿下のお陰でヤバイ物に手を出さずとも多くの利潤を得れている。トーマはこれからどうする?」


  「ため息しか出んわ。何処へ行っても我らガロアの者は移動も住居も職業も宗教もロックされている。俺のようにガロアを隠して生きるしか自由に動く術がない。」


  「そうよな。儂はクルト人だからガロアの者程は不自由はないの。何せ忘れられた民だ。それに我らの祖は一つだけしか誓約を子孫に課していない。我らの血を忘れるな。それだけだ。」


  「俺は想像はつかぬ。神無くして何に生きるのだ。」

  「其れは知らんよ。神学論争は分らん。関係ない儂から見れば大本の宗教はガロア教で其処からカリント教が出来た位だの。オイオイ儂に怒っても仕方ないぞ。決めるのは権力を握った者だろう。」

  「全く、ボルドに言っても無駄だと分っているさ。悪かった感情的に為って。」


  「いや良いが、今の様子を見ると矢張り殿下に紹介は無理だの。さっきの話で感情的に為るなら何かの拍子で殿下に食って掛からんとは限らないからな。信仰の話をもう少し冷静に聞ければ殿下へ紹介しようと思っておったのに。ガロアの者の話を聞ける王族はヨーアン大陸では殿下しかいぬぞ。」


  「待て待て、何でだボルド。何故、殿下に?」


  「まあ簡単な話だ。ガロアの者たちは金儲けが上手い。銀行や証券取引、保険と儂らには難しい法則や計算で儲けておるじゃろ。そう言う人間が殿下には必要なのだ。殿下は数え切れぬ程に品物を造るものだから儂もそろそろ手が一杯でな、金の計算と運用が出来るトーマが欲しいのだ。」


  「何で王太子様がそんなことを。」

  「何時かはフロラルス王国の負債を返したいそうだ。別にゼロにしたい訳では無いと言っていたな。出来れば歳入の10倍くらいが目標だと笑っていたわ。」

  「なかなかに聡き王太子だな。もしかして王太子もボルドと同じ無神論者なのか。」

  「それは思っても言っては、いけないぜ。特に宮殿ではな。王族らしくカリント教徒だ。まあもう暫くはゆっくりとパルス見学でもしておけ。便利な物が一杯増えてて驚くぞ。」



  陽が落ちかけた窓の外を見てボルトは大きめのオイルランプに火を点け、火鉢に火を入れると店の者に水を入れたケトルを持たせた。


   「これを殿下は庶民にも使って欲しかったらしいのだが断念された。火事に為る危険性を憂いてな。それと火傷だ。もう少し庶民たちが何故禁止されるのかを考える術を持たないと、販売前に禁止事項を説明しても聞かないだろうからと言って苦笑いを浮かべておった。」


  シュンシュンと白い蒸気を部屋に溶かすケトルを見ながらボルトの言う面白い殿下にトーマは早く会いたくなった。

   ボルトはトーマのそんな様子を伺いニマリと笑った。




  アルフレッドが新たな不審人物をボルドに紹介されて、内心で舌打ちするまで後もう少し。

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