クッキングポテト—?
アリロスト歴 1771年
じじい陛下が滞在しているのでアンジェたちが余り気を使わない様に、使用頻度の低い西館へと「じじい陛下を封印」している。
ランバリー夫人は帰ったが、新たな妻ラウラ・レコ=ヴィラン夫人が西館にいるのだ。
じじい陛下は愛妾たちを妻と呼び、今は亡き祖母を妃と呼ぶ。
「滞在は何時までの予定ですか。」(内心、早よ帰れ)
「ふむ、実はエトワル宮殿の改装を始めてな。それが終わるまでかの。」
「良く財務卿が許しましたね。」
「ああ、あいつは話が分かるでの。そう言えば、アルフの言う通り小麦の自由化は止めたが、 ギルドは自由化を許可したぞ。」
「それは良かったです。穀物は生命線なので握っていないと駄目ですが、ギルドの自由化は良く遣りました。今のギルドは利権を守る為に自縛し合っているので、新たな技術が育たない。デュイス卿は自由主義でしたね。世界全てが彼のように理性的なら自由化も良いですがね。」
「シャスール公に遣らせて酷い目に遇ったわ、小麦自由化。不作の時だったから暴動が起こって何とか鎮圧させたが。」
「飢えた民衆は怖いですよ。一挙に30万がエトワル宮殿へ————そうならない為にもオーリア帝国から送って貰ったジャガイモやライ麦、大麦を奨励し、ジャガイモは耕作収穫無税、売買も無税にします。人間、飢えない事が一番。」
「無税にか。」
「はい、今は私の自領で限られた場所のみですがジャガイモと大麦、ライ麦を作っています。ジャガイモを無税にするのは飢えない為でもありますが1番は徴税請負人対策なのですよ。儲かりそうなら農家や販売する者に寄生しますから彼等は。」
「うぅむ。」
「それに過去から調べて見れば我がフロラルス王国がそもそも民へ課した税は2割それから上がり3割強程度だった、けれど取り分を決めなかったので徴税人制度を成してからは現在9割以上の税を取っている始末。国王が課したのは3割の侭にね—————。」
「だが戦費捻出の為、余は2度ほど増税したぞ。」
「それで3割強なのですよ。ですが余り国庫へは入っていませんでした。放漫経営といえばそれまですが現状では負債が減らせません。取り敢えずパルスの徴税権を国王、お祖父さまへ取り戻しましょう。」
「しかしそれは大騒ぎするぞ。貴族も教会も。」
「何を言っているのですか。パルスの領主はエル家では無いですか。ハッキリと法に明記しておくのです。これをしていなかったからエル2世以降揉めて、不動産何て滅茶苦茶な権利状態になって居るのですよ。パルス高等法院が変わった今、王国法へ記せます。」
「しかしアルフは良く知っておるのぉ。」
「何とかならないかとルフルティー宮殿(政務宮)に或る埃だらけの書物庫を発掘してましたからね。」
「式典がある時しか行かぬな。ルフルティー宮は。曾祖父(エル3世)も殆ど行かなかったようじゃし。」
「祖父さまは、エトワル宮殿の主です。エトワル宮殿改革も改築している今やって行きましょう。」
「余が行う事が多くないか。ラウラと過ごす時間が減るぞ。」
「今以上に一緒にいる必要は無いでしょう。(くそ、エロじじいがっ。)」
「———————————— ふむ。」
「それにロヴァンス伯と大法官モレーと話しをして前回処罰した者と同罪を犯した者を一人一人、罰して行きます。同じ犯罪を犯せば罰されると思わせる事が肝心です。犯罪の前には特権は意味を成さないと認識して貰わないと困ります。そしてポリスには徴税請負人を。特に国庫に決まった税を納めていない徴税請負人は容赦なく逮捕させます。殆どでしょうが。一度サロマ侯爵とは会って下さいね。」
「ふむ。モレーに新法を記させ、サロマと会うか。」
「徴税人請負人逮捕の際は、近隣住民に罪状を告知していると良いでしょうね。ところで祖父さま、エトワル宮殿に如何様な改築を?」
「おお、聞いてくれ。ここに滞在してあの悪臭が如何に余を蒙昧にしていたか気付いての。其処で便所の数を大量に増やし、アレフが言う公衆便所と汚物集積所を建設している所だ。庭園の糞尿が消えるならと庭師たちも協力して呉れている。」
「それは良いですね。出来れば過ごし易く為ります。だけど汚物の収集などは宮廷官僚に遣らせない方が良いですね。決まった場所に捨てる事さえ出来ません。」
「それでは捨てに行く者がおらん。」
「そうですね———孤児や貧民に遣らせましょう。ルネたちに探して貰い、3年契約で。その頃にパルスでも同じような事をやって貰うのです。1人当り年800リーブルくらいで。」
「安過ぎるのでは無いか。」
「一般的な職人は年約400リーブル位ですから多いでしょう。そしてエトワル宮殿内にある閉鎖された離宮を改築して宿舎にすれば賃金を大人たちに、悪用される事を防げます。やがて何時の日にか徴税請負人制度など無くして行きたいですね。」
「おいアルフ、随分と活き活きしとるな。まあ、好きにするが良い。それは任せよう。」
「少しは未来ある話だったので、ええお任せください。」
じじい陛下との雑談を終え、俺はレコ(アルセーヌ)やルネと共にライ麦を植えた区画へ行った。
そしてジマたちと実り具合を見る。
農家で無かった為に農作物には無知なのでベロー地方在住農家(豪農)の次男や元農奴たちに耕作は任せている。
農奴解放を了承いてくれた7件の農家の内の1つで次男ジマ・ベロウだ。
「殿下売れませんよ絶対に。大麦やライ麦、ジャガイモは・・・。」
「食べる為だから良いんだよ。ジマ。」
ジマが幾度も同じことを言うので、俺も同じように答えるしかない。
だが、ジャガイモは売れると思う。
今パルスに西区へ造っている料理店が出来上がればな。
王子の命令は絶対と為らないのが悲しいよ。
ベロー地方の小麦を今年は俺が税分全てを買い上げる事にした。
集積・出荷具合の確認だ。
ジャガイモをパルスに出荷するにしても緊急経路や運送人数、費用を知っておきたい。
異論が出たが、本来なら俺に納めるべき分の小麦を俺が集めて何が悪い。
しかも代金を払うのだ。知事や徴税組合が文句を言ったが彼らには俺に文句を述べる権限はないで衛兵に命じて領主館から放り出した。
イカンイカン、イラっと来たよ。
こちとら支出しかねえんだよ。
9月に1市(領都)9町162村あるそれぞれの長には、収穫量の4割だけだと告げていた。
これが王国税と領税に為るので徴税請負人に支払う必要が無い事も記しておいた。
そしてじじい陛下から借りた近衛騎馬隊200を配置させてます。
此れじゃあ近衛じゃなくねぇ。まあ、王命だから我慢して貰おう。
領主館は君たちに開放しているからな。
反乱?
誰が起すの。
農家や農奴たちは大喜びだよ。
パルスやエトワル宮殿では最悪な俺の評判も自領では良くなったみたいだよ。
それにしても頑張って農具作っておかないと駄目だな。
耕作地拡充もジャガイモやライ麦を作る人手も足りない状況だ。
パルスの浮浪者は主幹道路造る工夫にする予定だからベロー地方へ移せない。
まあ、1つずつだな。
俺に出来る事をひとつひとつ——————か。




