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お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です  作者: 時岡継美


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(2)

 武器の大剣は背負っているから装備も問題ない。

 手伝わないとは言ったが、自分の身は守らなければならないため戦闘に参加する準備や心構えは必要だ。

 幸いなことにわたしとハットリにはペットがいるため、必要になったらペットから装備やアイテムを取り出せばいい。


 それに引き換え、ペットを保有していないジークパーティーは初心者と思われる冒険者に大量の荷物を持たせている。

 あの重たそうな荷物の中身は体力回復用のポーションと魔力回復用のエーテルだろうか。

 その向こうにいる人が抱えている長い筒には交換用の長剣や槍が入っているのだろう。


 ジークパーティーのビジターとして転移水晶で地下49階に到着したところで、ジークさんがメンバーたちに大きな声で指示を出す。

「武器がベタベタになったら後衛と交代(スイッチ)。武器もチェンジして、必要に応じてポーション、戦闘補助(バッファー)から身体強化を受けてアタッカーの後方で待機。その繰り返しで前線を押し上げながらボスまで行くぞ。

 武器係は受け取った武器のベタベタをきれいに拭き取ってくれ。

 ヒーラーはバッファーと共に行動。

 攻撃魔法関連は、好きなように使ってくれ」


 ふーん、作戦も何もないと思ったら事前の下調べをして一応考えてはいるのね。

 少し感心していたらジークさんと目が合ってドヤ顔をされた。


 でもね?物理攻撃が通りやすい魔物ならそれでいいとして、攻撃魔法は好きなようにって雑すぎない?

 この階層は、魔法を上手く使うことが楽に攻略する鍵になっているっていうのに。


「いくぞ!」「おうっ!」と気合を入れてフロアに足を踏み入れた一行を見守りながら、くまーに「レインボーローブ」を二着出してもらう。


「はい、これ羽織ってフードもしっかりかぶってね」

 受け取ったハットリはその手触りに顔をしかめた。

「なんじゃこりゃ、ぬるぬるじゃねーか」


「そうよ、ベタベタはぬるぬるで防ぐのよ」

 にんまりしながら羽織ったローブは、地下43階のレインボーフロッグの皮を主な素材としてあつらえたものだ。

 虹色の巨大なカエルのぬるぬるした皮は非常に優れもので、防水・防電・防炎・防毒効果のほかにこの階層のゼリースライムのようなベタベタくっついてしまう物質も弾いてしまう。

 逆に弱いのは乾燥と粉塵だ。

 だから砂漠のような環境の階層ではこのローブは使えない。

 そして、肌触りが気持ち悪いというのが少々難点だ。


 一回目の会合の時にユリウスさんの言葉でパーティーリーダーとしての責務を改めて気づかされた。

 メンバーの安全を最優先に抜かりのない準備をすることを実践するために、あの後こういった便利装備もくまーに持たせておいたのだが、早速それが役に立つとは。



 ジークさんたちの攻略は概ね順調だった。

 作戦通り、前衛のアタッカーをスイッチしながら押し進んでいく。

 問題は時間がかかっていることだろうか。


「順調っちゃ順調だが、みんなどんどんベッタベタになっていってるな」

 傍観しているハットリが呟く。

 戦闘風景を客観的に眺めることで戦況を冷静に判断するのは今後の参考にもなるいい機会であるため、ハットリを連れてきて正解だった。


 このダンジョンの魔物たちは倒されると戦利品のみを残して霧散して消えていくのが通常だが、返り血や残滓が冒険者に付着することはある。

 この階層ではゼリースライムを倒してもベタベタが残ることや、ドロップした戦利品までベタベタしたゼリーが付着しているのがいやらしいところなのだ。


 ベタベタするのは武器だけではない。手も髪も顔もベタベタが張り付いて時間が経つにつれいちいち拭き取るのがストレスになってゆく。

 くまーが前方で戦うジークパーティーのメンバーたちを指さして、ドロップ品を拾おうか?という仕草をしたけれど、それは必要ないと首を横に振った。

 手伝う気はない。


 ペットも持たず、強力な魔術師もいない状態でこの階層を進む怖さを思い知るがいいわっ!

 



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