表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

四話 明かされた真相

私達は馬車に積まれた野営用の薪に火を点けると、その周りに座りました。


「体の調子はどう?」


私は少年に訪ねました。


「傷は少し痛みますが、体の調子はかなり戻りました」


少年はガッツポーズをしました。


「君を疑って申し訳なかった」


ランスロットが少年に謝罪すると、少年が答えました。


「いえ、あの状況では疑われても仕方ないと思います」


その時、私は久しぶりに穏やかな気分を味わっていました、でも…


「ねえ、皆でお話ししましょう」


「姫様が望むなら。何を話しましょうか?」


「なぜ犯人は私ではなくメイドや使用人を襲ったのか…」


「今更それを考えても仕方ないのでは?」


ランスロットは嫌そうな顔をした。


「なんで?私は知りたいわ、どうしても」


「仕方ありませんね…」


「まずは…お継母様の狙いが私だけでなくお婆様も亡き者にする事だとしたら、渡された薬は偽物という事になるわよね」


「なぜ先代王妃様を?」


「何かの秘密…例えば…兄君の死も実はお継母様の仕業で、その証拠を握っているとか」


「証拠があるならなぜ秘密にする必要があるんですか?」


「だから例え話ですって。で、次ね…薬が偽物だった場合、私達の誰か一人でも城に戻ってそれをお父様に伝えれば、薬を用意したお継母様の立場が無くなるわよね」


「それだけの為に我々を皆殺しに?」


「あの人は、そういう人よ。あとは数の原理に従ったのでしょう…」


私の推理はこうです。最初の夜、私は自分だけが狙われていると思っていたので二人を見張りにして、メリイを一人にしてしまいました。だから彼女が襲われたのです。


二日目の夜、私とランスロットはバーに居た。ガストンは少年と一緒だったけど、少年は怪我を負って意識が朦朧としていました。だからガストンが襲われたのです。


三日目の夜、私は犯人の目的が皆殺しなら、怪我をしている少年が一番危ないと思っていました。しかし、犯人の目的は口封じだった、事情を知らない少年は犯人の狙いの対象とはならなかったのです。


「…では誰を狙うつもりだったのでしょうか?」


「それは姫様なのでは?」


「あなたもいると分かっているのに?それではこれまでの慎重な犯行と矛盾していませんか?

私ならまずランスロット様から狙います。あなたなら朝まで寝ずの番をするでしょうから、疲労で隙ができる明け方の一瞬を突くでしょう」


「それはあの猟師が余程焦っていたという事では?」


「あの猟師…本当にあの人が犯人なのでしょうか?実は味方で大切な事を伝えに来たとしたら…」


「大切な事とは?」


「薬が偽物だって事。それから、本物の薬を持ってきたって事」


私は二つの薬瓶を出した。


「一つは持参した物、一つは今朝、馬車の中に置いてあった物です。本物かどうかは分からないけれど、猟師が置いて行ったのだと思います」


「本物だとしたら城から盗んだ事になる。なぜそれを姫様に?」


ランスロットの疑問はもっともです。


「理由は分かりませんが、とにかく彼は私を助けようとしていたのではないでしょうか?」


「助けようとした?何からですか?」


「私は色々な手段を使って追っ手を巻こうとしました。なのになぜか刺客は私達の居場所を見つけて襲ってくる…この不可思議な状況を全て説明できる簡単な答えがあります」


「それは何ですか?」


少し苛立たし気にランスロットは言いました。


「ねえランスロット様、剣を見せていただけませんか?」


「…構いませんよ」


ランスロットは面食らいながら剣を抜きました。


「珍しい剣ですよね…片側は鋭く、片側は獣の歯のよう…」


「獣の歯は酷いなあ…私の故郷、緑の里を象徴する#鋸__のこぎり__#をモチーフにしたのですが」


「ありがとう…これで人を切ったら、まるで獣に食いちぎられたように見えるでしょうね」


「…私が、犯人だと言いたいのですか?」


「違いますよね?…そう言ってくださいランスロット様…」


私は絞り出すような笑顔でランスロットを見ました。


「…もっと早く殺しておくべきでした。失態です、一時の感情に流されてしまうとは…」


ランスロットは冷たい顔で私に剣を向けました。


「なんで…どうしてこんな事を」


「姫様は秘薬が何の薬か知っていますか?」


「…いいえ」


「長く生きた狼は魔力を身に付け、人を喰らう事で人に化けられるようになります。

そして、人に噛みつき病気に感染させるのです」


「病気…」


「人狼病、人間を狼に変える病気です。初期症状の頃なら意識を強く持てば人間に戻る事ができますが、やがて人間の意識は無くなり、身も心も狼になってしまう。こうなったらもう手遅れです。


その人狼病を治せる唯一の薬、それが王家に伝わる秘薬なのです」


その時まで私は知りませんでした、人狼病の事も薬の秘密も…


「ある日、故郷に住む私の妹が狼に噛まれ、人狼病にかかったという連絡が入りました。

庶民にとって人狼病は不治の病です。妹はもう助からないと諦めかけた時、王妃様が私に囁きました、薬を分けてあげましょう…その代わり条件があります、と、私は従うしかなかった…」


「条件とは…」


「赤ずきん姫様、あなたを殺すことです!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ